あれあれ〜?昼間っからベンチに座って誰かうなだれてるよ〜?誰だろうね〜?はーい、カオルだよー!ってやかましいわ!!くっそ!なんだってこんな現実逃避をしなくてはいけないのだ!!…いや、落ち着こうよ、私。イライラしてもしょうがないんだし。な、ユニラン…。は?なんでお前ここにいるんだ!?ライモンシティに入る前に置いてきたのに…って、グフゥ!!チラーミィ…お前まで!!
ふわふわと浮き、心配そうに私を見るユニランと、元気出せやぁぁ!!と殴ってくるチラーミィ。痛い、お前の愛が痛い。
「しょうがないヤツらだなぁ〜…お前達は」
力無く笑い、頭を撫でてやれば嬉しそうに飛び跳ねる二匹。…こいつ等を守ってやらんと。しかし仕事が見つからんってこれ如何に?神様よ…あなた私が生きていける様にしてくれたよね?だよね?なんで仕事が見つからんのじゃ!!いや、まぁ、野生のポケモンに出会っても余裕でボコれるから大丈……。あるぇー?もしかして神様…え、嘘ー!そっち?そっちの意味で取っちゃった感じ?
「あー…だから体力はあるし、力が強くなったわけだ…」
マイガッ!!気付いてしまった事実に私はまたうなだれるのであった。ちゃうねん、神様…ちゃうねん。私普通に生きていきたいだけやねん。ねんねんうるさいね。もう止める。だはー!!!!まじで、これからどうすっかなぁ!あっはっはー……泣きそう。膝の上にひじをつき、手を組んで顎を乗せてハァ、と溜め息を吐く。
「…参ったね、こりゃどうも」
「…何に参ったのでございますか?」
「そりゃあ、あんた…今後の私の人生…って!」
背後から声を掛けられ無意識に答えてしまったが、この声は…!バッと振り向けば予想通り、黒の制帽、黒のコート、への字の口の三拍子が揃ったノボリさんががが…。もう出会う事はないと思ったのに…。何故か焦る私をノボリさんはジッと見つめてくる。視線が痛いでごわす。と、その時血気盛んなチラーミィさんがノボリさんに攻撃を仕掛けようとした。っておいー!その勢いはすてみタックルやないかい!
「止めんか、チラーミィ!」
そう叫べばぴたっと止まり、ノボリさんに物凄いメンチを切って私の元に帰ってきた。お、おま…ちょっと落ち着け!ハァ、と溜め息を吐いて、すみません…と謝った。あーあ、また土下座しようかな?綺麗な土下座しようかな?と思案する私にノボリさんは的外れな事を言った。
「カオル様のチラーミィとユニランでございますか…?」
「は?…あー…野生ですけど、一緒にいてくれてるんすよ」
なぁ?と二匹を撫でる。本当なぁ…私トレーナーじゃないし、お金も無いからボールに入れられないわけさ。そんな私を見てノボリさんがハッと息を飲んだ。なんだ?別にこいつ等を食べようとかそんな事思ってないからな!?しかしノボリさんが考えた事は違うらしく、何故か頬に手を添えられた。な、なにー!?チラーミィに殺されるぞ!?
「やはり少しやつれてしまわれましたね。…帰る家が、無いのでしょう?」
「何故それを…」
いや、別に知られても良いけどさ。そうです、私がホームレスです!なんつって。…私タカオさん達以外に言ってないけど何で知ってんだ?とりあえず…いい加減離してもらえますか!?やんわりノボリさんの手を離せばめちゃくちゃ視線を感じる。ゆ、ユニラン…!お前までそんな鬼の様な顔をするとは思わなんだよ!!ノボリさんめ…こいつ等をなだめるのは私なんだぞ!?と睨めばノボリさんはスルリと私の手を取った。だーかーらーさー!死にたいの!?
「ついて来て下さいまし。カオル様にお見せしたい物がございます」
「…わかりました。行くんで手を離しましょう…ね!」
少し乱暴に振り解き、ノボリさんの少し後ろにスタンバイ。何処へでも連れて行くが良いさ。と、腕を組むがノボリさんが一向に動かない。何してんの?と見ればボーッと手を見ていた。私が振り解いたノボリさんの手を。えぇと、盛大に突っ込ませて頂こうかな。せーの、なんでやねん!!!!!!
「…行かないんですか?」
「あ、はい。では、参りましょう」
私の言葉に歩み始めるノボリさんの後を、荒ぶる二匹をなだめながら(たまに殴られながら)ついて行くのであった。
「(…何故、わたくしは彼女に触れたいと思うのでしょう?)」
「(…なんで無言なんだ?私何かした?ち、チラーミィ!止めろ!!)」
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