がたん、ごとん。がたん、ごとん。なんだ?なんでこんなに騒がしいし、揺れてるんだよ…。揺れてる?ハッと目を覚ませば、何故か私は電車に乗っていた。えっと…私が死んだのはもしかして夢だったりして。そんな事を思いながら車内を見渡すが、私以外にお客さんは乗っていないみたいだ。窓を見れば真っ暗。……夜?いや違うな。

「こいつは…地下鉄か…」

「そうでございます」

「…んんん!?」

だはぁぁぁぁ!!びっくりした!!めちゃくちゃびっくりした!!あっぶないなぁ…叫ぶところだった。私だけかと思っていたらどうやら車掌さんが乗っていたみたい…だ?なんか…この人…見たことある気がするんだけど。じっと見ていると車掌さんが首を傾げた。

「お客様どうかなさいましたか?」

「いえ…」

黒い制帽にコートの様に裾が広い制服、そして特徴的なもみあげにへの字の口…。この格好…コスプレ!?まじか!!めっちゃ作り込んでるね、お兄さん!!凄いなぁ凄いなぁ、と見つめていると車掌さんがコホン、と咳払いをして、礼儀正しく胸に手を当てた。


「本日はバトルサブウェイにご乗車頂き、誠にありがとうございます。わたくし、サブウェイマスターのノボリと申します」

「は、はぁ……」

「失礼ですが、お客様のお名前をお伺いしても宜しいでしょうか?」

「カオル…です」

「カオル様ですね」

ノボリさんは腰に手を当て赤と白のボールを取り出して、投げた。そして私は目を見開いた。ふわふわと浮かぶ炎を纏う生き物。私のいた世界には絶対存在しない、架空の生き物。

「シャンデラ…!?」

しゃらん、と体を揺らすシャンデラ。…おいおいおいおい。神様…あんた…。

「…ポケモンの世界に飛ばされるとは…」

「さぁ、あなた様のポケモンもお出しくださいまし!」

相変わらずへの字の口なのに凄くテンションが高いこの人は…ブラボー!なノボリさんだったのか…。攻略本でしか見たことないからなかなか分からなかったのね。…だがそんなノボリさんに残念なお知らせがあります。

「私、ポケモン持ってないです…よ?」

「…なんと仰いましたか?」

「ポケモン、いないです」

「なら何故この車両に……っ!!」




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