あぁ…疲れた。何故に私が向こうの双子の面倒まで見なけりゃならんのだ。この一カ月ストレスでハゲるかと思ったわ。……え?いやハゲてないから。ハゲてないってば!船から降りた私はすぐにでも家に帰りたかったのだが、クラウドに呼び出されブチ切れる寸前であります。おい。なんでくたびれた私が今からバトルをせにゃならんのだ。ノーマル、スーパーをクリアしたトレーナーが現れた?まじで?なんてタイミングなんだよ。

ふむ…しょうがない…。お客様だからな。めんどくせ。ぼやきながらギアステーションに向かう私は割と真面目だろ?
で、挑戦者が待つ私の担当するバトルフィールドに向かう途中、クラウドが「ちょ、待ちや!」とか言い出すもんだから私の苛々のゲージは確実に高まっていく。なんやの?こちとら眠いし腰痛いしハゲ…てないわ!!

「特警のときはそのまんまでええけど…バトルのときくらいは、ちゃんと着とき」

「あぁ…はいよ」

そういやそうだったな。差し出されたものを受け取り、さんきゅ、と欠伸混じりに言えば見事にクラウドが苦笑を浮かべる。お前はわかっていない…。私がどれだけ疲れているかを。大好きなあの二人に抱きつかれても投げ飛ばすレベルだからな。てかさっき投げ飛ばしたわ。なははは!

…うし、行くか。ひらひらとクラウドに手を振って、歩き出す。っと、これを着とかないとな。バサッと広げたコートの袖に腕を通し、制帽を被る。…え?これ?これは…ノボリさんとクダリさんと同じデザインのコートと制帽。色は二人の色である黒と白を合わせた灰色。二人がいるから、私がいる…ってな感じで、良いだろ?かなり恥ずかしいからあんまり着たくないんだけどな!…久し振りだな。ここも。私がここに来る度に思うのは一つ。

「友情!努力!勝利!」

このパスワード変えたい…まじで。こんなふざけたパスワードにした私をぶん殴りたい…。いや待てよ…原因はクラウドだったよな…。あいつ…今度こそぶん殴るからな…!!げんなりしながら、中に入れば物凄い音を立てて匠もびっくりな程にビフォーアフターするバトルフィールド。
その中で、固まる少年と、少年のパートナーと思われるエンブオー。少年の姿は…ボサボサ頭にサンバイザー、ランニングウェアにハーフパンツと…なんともスポーティーな子やな。…てか、あれだな。きみ、主人公っぽいね。多分私のこの勘は当たっているはずだ。…ま、ボコしますけどね。なははは。すっと胸に手を当て、深く頭を下げる。

「本日は、ギアステーション…バトルサブウェイにお越し下さり、誠にありがとうございます。まずは、全てのトレインのクリアおめでとうございます。…そして今回、私とのバトルをご所望とのことで、宜しいですね?」

私の言葉に緊張した面持ちの少年が、力強く、はい!と答える。フレッシュさがあっていいねぇ。私には無いものだよ。眩しすぎるくらいだ。少年、いつまでもそのままでいてくれ。廃人だらけのギアステには居ないタイプだからな!ギラギラした廃人怖いもん!…そうか。きみも廃人なんだよね。少し悲しくなっちゃうわ。

「…きみの名前聞いてもいい?」

「キョウヘイです!…僕、二年前にカオルさんのことを知って、ずっと会ってみたかったんです…!」

わお。まじで?きみあれ見てたの?やめてやめて。私の黒歴史をえぐるのはやめて。…あぁ…そんなに瞳を輝かせて…。いいかい、キョウヘイ。良いことを教えてやろう。私はきみの思うような人間じゃないんだぜ?ニィっと口角を上げて、キョウヘイ!と声を張り上げる。

「最初から本気でこいよ?じゃねぇと、すぐに終わるからな!…ほんじゃま、勝負といこうか。私、今日早く帰りたいんだよね」

「そ、そんなすぐに終わらせませんから!エンブオー!」

名前を呼ばれ一度だけ頷いた貫禄が有りすぎるエンブオーが炎を宿し真っ赤になった拳を振り上げ、そのまま私に振り下ろす。…この感じ、やっぱりバトルってたまんない!その拳を受け止めれば、やはり、驚くエンブオーに苦笑する。皆最初は驚くんだよなぁ…。でも驚く割には容赦なく攻撃してくるから不思議だわ。…でも、残念。私の勝ち、だな!おっと、逃がしゃしないよ。距離を取ろうとしたエンブオーの首周りの…ほ、炎?あ、あご髭?ようわからんそれを掴んだ私は、負けじと拳を作り思い切りヤツの顔面に、叩きつけた。

「…あっ!エンブオー!」

ぐるぐると目を回しその場に倒れ込むエンブオー。戦闘不能…てなわけで。残念だったな、キョウヘイ。信じられないといった感じで立ち尽くす彼は、この後どうするのか…。反応を待っているとモンスターボールにエンブオーを戻したキョウヘイが、私に頭を下げた。…おお?

「…僕はまだまだ未熟だってことがわかりました。カオルさん、ありがとうございました。でも次は!僕が勝ちますから!」

…うむ、その言葉を口にしたのはキョウヘイ…お前で三人目だ。前の二人は強くなった…つまり、お前もきっと強くなる。ま、私にはかなわないけどな。どやぁ。…んあ?なんかうるさい…?キョウヘイも気づいたのだろう、視線を扉へと向けた。直後、派手な音を立ててノボリさんとクダリさん、そして私の家族たちが雪崩れ込んできたではないか。なにこれびっくり。

「カオル様!久し振りに拝見しましたが…見事なバトルでございました!…カオル様のいない日々は本当に寂しゅうございました…」

「ほんとほんと!やっぱり…カオルがいないと、僕、つまんない…。早くカオルのつくったご飯が食べたいよ!」

「いやわかった…。わかったからさ、お前ら…離せ。うぐ…!!ち、チラーミィ…!急所を狙うなとあれ程…!わわわ!ランクルス無表情怖い無表情怖い!おいナチュラルに服を脱がすな!お前はなにがしたいんだよ、ゾロアーク!!」

なんだこれは!きみたちさ、私がイッシュに帰ってきてまだ数時間しか経ってないって分かってる?疲れてるって言ってさっき投げ飛ばしたよね?なのに何故また抱きついてくるのかな?やめろ!暑苦し…わぷ!!キョウヘイイイイ!!笑ってないで助けなさいよ!

「…カオルさんの強さの理由、わかった気がします」

なにそれ。こいつらの世話をするのが私の強さの源だと言いたいのか?ばっかやろう!!あぁ…もう…。カオルさん…みんなに囲まれて幸せだけどさ…。うん、幸せなんだけどね?こう…愛が重いと言いましょうか…。はぁ〜……とりあえず今は…大人しく抱きしめられときましょうか。全く…お前らみーんな、だいすきだよ!

これからも…よろしくな。でもちょっと重いでお前ら。



「だぁー!!!わかった!今日はさっさと帰るぞ!クダリさん、仕事は?」

「バッチリ!明日の分までおわってる!」

「ふふふ…クダリは甘いですね。わたくしなど、一週間分は終わらせております!」

「それは…ちょっと引くわ。…まぁいい。今日は腕によりをかけてご飯作ってやるからな!」

「いや、まだ帰らせへんからな」

「「「クラウド……!?」」」





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