さっぱりしたぜ〜。シャワーを借りたお陰で身体がポカポカしてきた。クダリさんが用意してくれた服に着替えながらこれから執務室に居座ろうか本気で悩んでいる。いやでも双子がいるしなぁ…。うむむ…。
タオルで頭をガシガシ拭きながらシャワー室を出たら、土下座で待機するノボリさんがいるんだけど。え、えっと…とりあえず閉めましょうか。私は何も見なかった…ことにしよう。扉を閉じかけたら、お前人間じゃないだろ!と突っ込みたくなるような速さでノボリさんが阻止してきた。なにこれ怖い。

「わかった!わかったから!怖いから止めて!」

そう叫ぶとピタリと動きを止め、またも土下座をするノボリさんに私は溜め息しか出ないわけで。…なに?一体なんなのさ。ある意味ホラーやで。しゃがんで様子を伺うが反応無し。…だからなぁ。

「…口で言ってくれないとなにもわからないですよ、ノボリさん」

出来るだけ優しく言った…つもりだ。謎過ぎる行動に多少苛ついてはいるけどな!まぁいつもの乙女の暴走なんだと思うが…。土下座しながら私の言葉を聞いていたノボリさんが恐る恐るといった感じで顔をあげた。そのノボリさんの表情に衝撃を受けた。捨てられた子犬のように瞳をうるうる潤ませ、今にも泣き出しそうではないか…。必死に堪えているのか、いつも以上に口をキュッと結んでいる。…ど、どうしたんだ!?

「わたくしを…き、嫌いにならないで下さいまし…!!」

やっと口を開いたかと思うと…なにを言っとるんだ、この人は。って、おいおいおい!いきなり泣き出すなよ!下唇を噛み締めて、ポロポロと涙を零し始めたノボリさんに私は盛大に焦り出す。こんなとこで乙女振りを発揮するなよ…!!あー…もう、仕方ないな…。そっとノボリさんの顔に手を伸ばし、親指で涙を拭う。その私の行動で、頬を一気に赤くするノボリさんに苦笑してしまう。本っ当に、乙女なんだから。

「嫌いになんかなりませんよ。ノボリさんは私にとって、守るべき人なんだから」

そう。ポケモンの技を食らっても平気な私は、大切な人達の盾になって守りたい。最近、そう思うようになってきたのだ。まぁノボリさんやクダリさんにはお世話になりまくってるし?上司だし?私みたいに不慮の事故で死なせたくないし?それに…なんだかんだ大切だしな。フッと笑みを浮かべれば赤くなったノボリさんが両手で口を抑えふるふると身体を震わせている。ん?……あれ?私今ナチュラルにフラグ立ててしまっ…た…?

サーッと音がしてんじゃね?ってな具合に自分が青ざめている自信がある。だがノボリさんはそんな私のことを気にもしないで握り拳を作り興奮した様子で口を開いた。

「カオル様が…!わたくしを…わたくしを、お守り下さると…!」

「ちょ…ちょっとノボリさん落ち着こうか…」

「わたくし、クダリに自慢してまいります…!!」

「や、やめろぉぉおおお!!」

私の必死の抵抗も虚しく物凄いスピードでクダリさんの元へ辿り着いたノボリさんは、某出っ歯の芸人もびっくりなマシンガントークで語り始めた。それはもう幸せそうな顔で。近くにいたおっさんはニヤニヤするし、クダリさんが狡い狡いと叫び出すし、チラーミィはまだ寝てるしで私はただただ遠い目をするしかなかったのだった。



「あのような仕打ちをしたわたくしに…カオル様は守ると!そうはっきり仰ったのです!わたくしは感動で…涙が止まりません…!その時わたくし心の底から思いました…この方をお慕いして良かったと!!」

「ほぉ〜…。良かったなぁ、お嬢ちゃん?」

「おっさんまじ黙れ…。ノボリさんも黙りやがれ!!うぐ…!く、クダリさん、くるしい…!」

「カオルがノボリを守るっていうなら、僕はカオルを守るからね!…だから、僕をもっと見てよ…」

「(誰か助けてくれよぉぉおお!!)」



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