あの後おっさんに映像を見せてもらい私は見事にその場に崩れ落ちた。なにあれ。現実であんなことあるんだな。えーと、あれだあれ。「私のために争わないでー!」的な(笑)馬鹿野郎!笑えないわ!

そして私はトボトボとサブウェイ内を歩くが…とてもとても居心地悪いデース。もうな、まじで誰か助けてくれ…。私を見ながらひそひそ話をする女子共に視線をやり、溜め息をついた。「ひそひそ…あれが…ひそひそ」、「…二人を誑かした…ひそひそ」、「…ひそひそ…潰しましょう…ひそひそ」。こんな感じの内容がな、聞こえるんだわ。あんたら重要なとこが漏れてるから。ひそひそ話の意味がないからな。しかも…おま…つ、潰すだと!?この私を倒せるのか?お前たちのような女子共に…。

「…あーあ、めんどくせ…」

言っておくが私はなにもしてないから。誰が好き好んでであの二人を誑かすというのだ。私?いえいえお断りです。…女子は本当にめんどくせ。…ん?なんだあの女…。エリートトレーナーの女が自分のポケモン…ウインディにコソコソ耳打ちしている。……なんだ?すっげぇ嫌な予感。肩に乗るチラーミィに少し離れてろ、と降ろした瞬間私の身体が炎に包まれた。…ひゅ〜、ギリギリセーフだったわ。

「きゃー!ごめんなさい!大丈夫ですかぁ?」

わざとらしいエリ子(エリートトレーナーの女…長いのでエリ子と呼ぶことにする)の言葉に若干苛つきながら炎を掻き消す。なにこれ?ひのこ?威力低くね?やるなら火炎放射くらい食らわせてみろよな。…ふむ、服は燃えてないな。最近服も強くなった気がするわ。

「…私だからいいが、他のお客様に危害を加えないようにして下さいね」

ぱんぱんと服を払いながらそう言えば、エリ子の目が恐ろしく釣り上がる。は?なにそれ?怖い怖い怖い。君、何かに取り憑かれてる?そんな感じの顔やで。エリ子の表情に引く私に、今度は大量の水が襲いかかった。…炎の次は水?消火活動のつもりか?…びっしゃびっしゃ。溜め息をついた私に今度は愉快そうに笑うエリ子にこりゃ駄目だと心の中で呟く。

「炎に囲まれてたから助けたつもりだったけど…大丈夫かしら?」

ニヤニヤ笑いながらパラ子(パラソルお姉さんな)が私に近づいてくる。…チッ、このカス共が。濡れた髪をかきあげながら平気です、と言う私にまたしても嫌そうな顔をする二人。こんなもんでへこたれるワケがねぇだろうが。っと、チラーミィ…そんな威嚇するな。私は平気だか…ら…。く、クダリさーん!!!いつから見ていたのかその瞳が恐ろしいまでに冷たいではありませんか。

「君たち、カオルになにしたの?ねぇ、今なにしてたの?」

「…え、いや…その」

「早くこたえて」

笑顔でヤンデレっぽい言葉を紡ぐクダリさんはまじで怖いんですけど。二人も青ざめながら肩を揺らしている。…たく、しょうがねぇな。ガリガリと頭を掻きながらクダリさん、と声を掛ける。二人に向けていたような冷たいものではない、優しさ溢れる笑顔をクダリさんが私に向ける。ギャップギャップ!激しすぎだろ!!

「これは事故だ。エリ子のポケモンのひのこがうっかり私に当たって、それを見たパラ子が水鉄砲で助けてくれた。それだけ。だから彼女たちは悪くないです」

…あるぇ?なんでエリ子たちがすげえ嫌そうな…苦虫を潰したような顔をしてるわけ?一応あなたがたを庇ってるんだぜ?なのに何故にそんな顔をされなきゃいかんのだ。…あぁ、エリ子とパラ子って言ったから?だってお前らの名前しらねぇもん。仕方ないだろ!私の言葉を聞いたクダリさんがふぅ、と呆れたように息を吐き、コートを脱いで私の肩にかけてくれた。…っておい!

「あんたの制服が濡れるからいいよ!返す返す!」

「だーめ!…カオル、白のシャツ着てるってわかってる?」

「……借ります」

なんてこったい…。透けてたのね。全然気づかなかったわ。素直にそう言った私に満足したように笑うクダリさんにほんの少しときめいたのは内緒だ。チラーミィを抱きかかえて前を隠すことにする。濡れるのが嫌なのかチラーミィが暴れて顎打った…。超痛い…。この石頭め…!コントでもやってるのか?という視線をクダリさんに向けられたがスルーさせてもらう。そのクダリさんが私の肩に手を置いて、二人を見る。

「…自分のポケモンはちゃんとしつけてね。カオル、着替えにいこう?」

「おう。…じゃあな」

なんとまぁ…嫌そうな顔してんだよ。そんなに双子が好きなら…行動しろよな。いや、私をいじめろとかそういう意味ではなく…。振り向いてもらう努力をしろってことだ。まずは乙女ゲーで勉強しなさい。え?違う?違うの?



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