トウコとトウヤと合流し、おっさんの後について行くのだがおっさんがどこに向かっているのかさっぱり分からない。どうやらギアステーション内におっさんの言う"丁度ええ場所"はあるらしい。だがしかし、私達の行ったことのない道をスタスタ進んで行くではないか。おい、今スタッフ以外立ち入り禁止とか文字が見えたぞ。あんた一体何処に向かってるの?

「…それにしてもカオルさん、迷子センターの呼び出しで僕達呼ぶなんてもうしないで下さいね?」

「え?だって手っ取り早いじゃん。君達も呼び出し後、一分以内に来たし。いや〜速かったね!」

「もー!あたし達めちゃくちゃ恥ずかしかったんですから!次のアナウンスが流れる前に急いだんですよ!」

「そ、そりゃすまんかった。ほら、これやるから機嫌直しな」

ポケットから取り出した飴玉を二人に握らせる。今日のはかなり美味いぞ。濃厚モーモーミルク味だからな。私も一つ、包装を破いてぽいっと口に放り込む。…うむ、優しい味がする。美味い、と舌でコロコロ転がした。


******


おっさんに案内され、辿り着いた場所に私達は首を傾げた。吊革、大きな窓、窓を背にして座る横に長い座席…。うん、これはどう見ても車両だな。でも変だぞ。私達は通路を歩いてきただけだ。列車に乗ってない。どゆこと?良い仕事をしてきたランクルスを見るがまたもや知らねえ、という顔をされた。…おっさんどういうことや!睨みつけるがおっさんは楽しそうに笑いながら私にマイク的なものを向けた。

「よし、お嬢ちゃん!こいつに向かって一言!」

「意味がわからん。なに?突撃インタビューみたいな?ちゃんと説明しろ」

「まぁまぁ!凄い事が起こんねんて!なんでもええから、言うてみ?」

なんなんだよ、全く。突然そんな事言われても咄嗟に良い言葉は思い付くわけねぇだろうが。だが、ぐいぐいとマイクを押し付けてくるおっさんのしつこさに負けた私はふと思い浮かんだフレーズを口にした。

「友情!努力!勝利!」

え?ジャンプが好きなのかって?ジャンプよりマガジン派です。しかし言いやすいよね、友情、努力、勝利。で、これで凄い事が起きんの?

『声紋、登録致しました』

「あ?」

マイク的なものから機械的な声が…。は?声紋登録致しました?なにそれ怖い。その時だった。車両全体がガタガタと揺れ始めたのだ。じ、地震か…!?身を伏せようとしたが、どうやら地震とは違うみたいだった。車両が…変形してる?
なんという事でしょう!ズズ、と音を立てながら天井と座席がスライドして、広い空間へと様変わりしたではありませんか!って、違う違う違う。現実逃避したらあかんよ。トウコ達もポカンとしてるやないか。おっさんどういう事やぁぁぁ!!

「ここはお嬢ちゃんの担当になる場所や。まぁまだ調整せなあかんとこがあるやろうからもうちょい先の話になるやろうけどな」

「おっさん…。おい、おっさん…意味がわからんのだが…」

「二回も言うなや!…お嬢ちゃんもわしらみたいにBPかけてお客様と戦うねん!良かったやんか、給料あがんで!」

とりあえず今日は試しに戦ってみてな、とおっさんは私の肩をぽんと叩いた。…えっと、つまり…私SPやりーの、戦いーの、家政婦やりーの…?めちゃくちゃ過ぎんだろ!!…いや、とりあえずは今からのバトルに集中しよう。せっかくバトルフィールドも…出来たわけだし。コホンと咳払いし、状況が分かっていない二人に苦笑に近い笑顔を作った。

「…まぁ、バトるか」

「そ、そうですね!あたし達その為に来たんだもん!」

「色々ありすぎてすっかり忘れてた…。カオルさん、宜しくお願いします!」

「よろしく。優しくボコしてやんよ」

「じゃ、わしが審判したるわ〜」

色々とハプニングが起きたが、本来の目的を果たすことが出来そうだ。トウコとトウヤに対峙する。おぉ…なんかワクワクしてきた。割と私もポケモンと戦うの好きみたいね。いつからそんな体育会系になったんだろうな。ランクルスを見ればどことなくヤツもそわそわしている。そうだよな。お前も意外と好戦的だもんな。

「よし、私とヤン…ランクルスの力を見せてやろう」

あれ?なんか私ラスボス的ポジションみたいじゃね?気のせいだよね。だって私ヒロインだし。…ヒロインだよな?


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