不運な事が立て続きに起きた結果、私はギアステーション、バトルサブウェイの中をウロウロするハメになった。いや今のは不適切でしたね。見回りだ見回りしてんだったわ。今日でSPになって一週間が経った。
やはりポケモンの暴走というのはなかなか起こるものではないらしく今日も平和、つまり私は物凄く暇なんだよ。インカムから聞こえてくるのはシングルの挑戦者が云々、ダブルの挑戦者が云々…そればかり。私は、暇なんだよー!

あ、そうだ。暇なんでSPについて説明しよう。そうしよう。えー、コホン。SP…特別警備員は暴走したポケモンを止める…まぁ特殊部隊だよな。ただ暴走を止める。それだけなんだが、大事な"お客様"のポケモンな訳だから如何に傷付ける事なく、暴走を止めるかっていうのが大事らしい。
つまり自分のポケモンを使うなって事。面倒臭いよね。ま、私そんなの気にしないけどね。普通にボコすわ。…てかさ。

「私だけってのが意味が分からんよな」

そう。今この特別警備員と認められているのは私ただ一人。前任の人は嫁さんに子供が出来たからとかで辞めたんだって。いやいや、馬鹿やろう。私一人でどないするんやって話ですよ。…帰りてぇわまじで。
あ、SPだけどな、普通に私服なんだぜ。本当はおっさんみたいな緑の制服着るらしいんだけど、動きづらいから断ったわ。なので腕章だけ付けている。私服だけどスタッフだよ的なアピールだ。

「普通に考えてあれ着てたら戦えないっての。なぁ、チラーミィ」

言いながら頭を撫でてやれば嬉しそうな声を上げるチラーミィ。他の二匹は家でお留守番。いやね、三匹ゾロゾロ連れて来たら駄目って言うからね。しょうがないから毎日交代で連れて来ているのだ。今日はチラーミィの番……あれ、おかしいぞ。このチラーミィ…普通に可愛いんですけど。んな馬鹿な…まさか…。

「おま、ゾロアークか!?」

ぽん、と音がしたかと思うとそこにはへの字に口を結ぶノボリさん…に化けたゾロアークがががが。なんということだ…帰ったら絶対チラーミィに噛まれるわ。というか視線が…!視線が痛いんだけど!!突然現れたのにノボリさんと勘違いするとか皆馬鹿だろ?いや、あの本当すみません。これは違うんです。あぁもう…誰かー助けてー。胃がキリキリと痛み出した時、「カオル!」と名前を呼ばれた。視線を向ければ予想通りニンマリ笑顔な白ボスことクダリさんだった。助かった…。

「今日も見回りお疲れ様!…またゾロアークが化けてるの?」

「いえす…。お陰で女子共の視線が痛くて痛くて…」

「…思いっ切り抱き付いてるもんね〜」

ははは。乾いた笑いしか出らんわ。せめて…お姉さんに化けて欲しかった。ちょっと百合百合な絵面にはなるが、今よりはマシだろう。ゾロアークの頭を撫でながら苦笑を浮かべる。そんな私に「ちょっと休憩しない?」というクダリさん。激しく同意した私は休憩所へと移動を開始した。道中鋭い視線及び殺気が突き刺さってきたが根性で耐える事が出来た。私の心も強くなったもんだね。



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