朝飯も食べ終え、ノボリさんの出勤時間が近付いてきた。よし、やっと私の平和が戻ってくるわ。超嬉しい。ノボリさんの制服と帽子を抱えて玄関まで付いて行く私はまじで主婦みたいで嫌である。違います、家政婦です。っと、ノボリさん〜…ネクタイ酷いことになってるぜ。もしやあんたも寝ぼけてるのか…?

「ノボリさん、失礼」

「なっ…カオルさま!!」

慌てふためくノボリさんに静かにしろ、と睨めば降参したように大人しくなった。別にネクタイを綺麗にするだけなんだから、そんな慌てるなって。緩み、見事に曲がったネクタイは結び直した方が良いな。そう判断してブルーのネクタイをほどき、今度は緩まない様にしっかりと結んだ。よし、完璧過ぎるわ。流石私だな。

「いつまで固まってるんですか。ほら、コートと帽子ですよ」

「あ、ありがとうございます…」

耳が赤いままキリッと帽子を被り、コートに袖を通す様は可愛いのか格好良いのかもう良く分からなくなってきたよ。なんなの?家政婦さんがネクタイ結び直したら駄目なの?なら自分でしっかり結ばんかい。…ふむ、傘も持ったし…忘れ物は無いようだな。ほんなら気をつけていってらっしゃい。また三徹になる事を心から願うわ。まじで。家政婦にあるまじき願いだって?ほっとけ。

「では行って参ります」

「はいよ、お気をつけていってらっしゃいませ」

「カオル様も戸締まりには気をつけて下さいまし」

への字に口を結ぶノボリさんが玄関の扉を開けようと手をかけた。が、ノボリさんが鍵を開ける前にカチャリと音がして扉が開いた。まぁ、鍵持ってるのは私とノボリさんともう一人。クダリさんだけなわけで。ニンマリ笑顔のクダリさんの朝帰りーって初めてのパターンだな。おはようさんです。まだ雨は降ってなかったみたいだな。クダリさん濡れなくて良かったね。




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