「…きっと気のせいです。疲れてるから色々考えてしまうんですよ。ほら、男性って疲れてる時に性欲が強くなるとか…種族保存の本能だっけ…。そのせいでそんな事思うんやないですか?三徹でしょ?気のせいですって」

私必死過ぎワロタ。必死になるわ、貞操がかかってるんだからな。内心心臓ばっくばくだがそれが分からないよう冷静に諭すようにゆっくり言葉を紡ぐ。私、意外と無表情になるの得意なのだよ。しっかりノボリさんの目を見詰めれば、彼の目が困惑した様に揺れた気がした。

「わ、わたくし…そのような目でカオル様を見ていたのでしょうか…。申し訳ございません…!」

「わー!わー!いいです!謝らなくていいですから!…きっと今日ゆっくり寝たらそんな気持ちも落ち着きますよ」

だから早よ寝なさい。さり気なくノボリさんの手を外してやっと自由になった私のお手て。無事で良かった!…そうだ。ホットミルクでも作ってやろう。もしかしたらコーヒーよりそっちが良いかもしれんよな。両手で顔を覆って悶えているノボリさんの頭をポンと撫でてキッチンへ向かった。…さて、メープルシロップでも入れてやるかね。



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「…!とても、美味でございます…。そしてとても温かい…心まで満たされていきそうです」

「いや、流石にそれは言い過ぎだ」

ようやく落ち着いた様子のノボリさんが美味しそうにコクリコクリと喉を鳴らしてホットミルクを飲む姿はとても可愛いらしいものだった。あんたはこれからギャップ王ノボリとして名を馳せていくんだな、うん。…やっば、眠いわ。なんだかんだで午前2時。なんなら今から望遠鏡担いで踏切までいきます?ごめんなさい。無理です。

…頼むよ、もう寝かせてくれよ。そろそろ寝ますか、と小さく零せば意外にノボリさんも頷いてくれた。やったね!寝れるわ!あ、もう飲み終わった?じゃあ台所に置いてこよう。洗うのは明日で良かろう。
立ち上がった私をまたもやノボリさんは引き留めた。ノボリさんなんやねん…と視線を向けて驚愕した。耳だけでなく、ほんのり頬を赤く染めたノボリさんの姿にな。あ、あんた…それヒロインがする表情やで…。あんたじゃなくて私がすべき表情やで…。混乱する私を見上げて、ノボリさんが口を開いた。

「先程のホットミルク…今夜の様に二人の時に、また作って頂けますか?」


二人の時に、っていう単語が妙に気になったが今はこの妙な雰囲気から脱出したい!全力で頷けば、ノボリさんが笑った。いや笑ったというより微笑んだと表現した方がいいだろうか。頬を赤く染め口角を上げて、普段より優しげで柔らかな瞳。凄く綺麗で嬉しそうな微笑みに、何故か赤面する私。マッハで台所へ逃げ込み自分の顔に触ればめちゃくちゃ熱かった。なんやねん、これ。

コソコソ戻ればへの字に口を結ぶいつも通りのノボリさんが、お休みなさいまし、とようやく寝室へと帰っていった。それを見送って盛大に溜め息を吐いた。なにこれ?私振り回されただけじゃない?彼女?に振り回されただけじゃない?…ノボリさんと二人にならないように以後気をつけよう。心からそう誓い、リビングの電気を消したのだった。


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自分は解決してすっきりなノボリさんとノボリさんのせいでモヤモヤさせられた主人公さんでした\(^O^)/



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