「…まずあなたが何者かを教えて頂いても宜しいですか?」

「ぼくはきみたちの言葉でいうと、…えっと、カミサマ?かな」

「か、かかかか…!!」

神様だと!?こんなイケメンが神様なのか!?…ちょっと落ち着こうか私。今は色々突っ込みたいと思うがとりあえずこの件に関してはスルーして、一番大切な事を聞こうではないか。

「なんで私はここにいるの?」

しまった。タメ口やないかい。神様に怒られるわ!!ガクブルする私に彼は口角を上げて綺麗に微笑んだ。

「きみに新しい人生をあげる」

良い笑顔で神様はとんでもない発言をした。新しい人生って…なに?生まれ変わるってこと?また赤子からやり直し!?いやいや…流石にちょっと面倒臭いというかなんというか…。や、有り難いけどね!?

「赤子からやり直すのはちょっと…辛いっす」

正直にそう言えば神様は吹き出した。まぁそうだろうね!こんなこと言うのは私くらいだろうさ!でも無駄死にだったわけだしこれくらい我が儘言っても良いじゃない。
「わかった。じゃあ今のまま送り出すね!」

「有り難いです」

「あと…ね。もう一つ謝らなきゃいけないんだけど…きみを同じトコには返せない」

「えっと、…違う世界に飛ばされると?」

申し訳無さそうに神様は頷いた。そうかー…じゃあポケモン出来ないのかー…。まだ全部終わってないのに…って残念がるとこそこかよ。うーん…悲しいかな、友達もいないし、親も先に亡くなってるし…ま、いっか。

「大丈夫ですよ。割と未練はないので」

「ほ、本当に?…ごめんね、ありがとう…」

私が気を遣っていると思っているのか神様はまだ悲しそうにしている。気にすんなって!神様に会えただけでも儲けもんや〜!って思ってる人間なんだからさ!それより私が新しい世界で無事生きていけるかが不安である。

が、なるようになる。やってみるしかないさ。私超ポジティブシンキング!!

「じゃあ…送ってくれますか?」

「うん!…あ、忘れてた!!お詫び…なんだけどきみの願いを叶えてあげる!新しい世界ではどんな風になりたい?逆ハー補正とか?」

「ぎゃ、逆ハー補正?」

なんで神様がそんな言葉を知ってるんだ?とか突っ込みは言わないでおこう。…願い、願いねぇ。とりあえずトラックにひかれても平気な…頑丈な体にはしてもらいたいな。あとは…一人で生けていける力かな?その新しい世界に馴染めるように、ニートにならないよう働けるように!!その程度の力はいるね。うん。

「二個あるんですが、大丈夫ですか?」

「うん!何個でもいいよ!」

「あざっす!…えっとトラックにひかれても平気な体と、新しい世界でも一人で生けている力が欲しいです」

「え?逆ハー補正は?」

だから逆ハー補正はいらねぇよ!!なんでそんなにこだわるんだ…。私が不細工と言ってるのか!?んなことはわかってるよ!神様のばーか!神様の遠回しないじめに耐える私を不思議そうに見詰める神様がにこりとまた微笑んだ。

「わかった!きみの願い叶えるね!」

「うお…!!」

びっくりした。神様の体から眩い光が放たれたかと思うと、その光が私を包んでいく。温かい…何処か懐かしいその光が私の体に入っていった。…なんとなく頑丈になった気がするー!自分の頬をつねってみた。…普通に痛い!あれぇ?本当に頑丈になったのか不安だったけど神様がにこにこ笑顔を浮かべてたら文句言えないや…。

「これできみの願いは叶った。じゃあ…送るよ」

「…ありがとうございます」

「良いんだよ。…ぼくが悪いんだから」

「あはは…。そんなに気にしないでくださいよ、神様!」

神様みたいに綺麗な笑顔は作れないけど、私が笑ってみせれば神様もうん、と微笑んだ。そして神様の顔が真剣なものになり、トクン、と胸が高鳴る。や、やばい…イケメンは何をしてもイケメンや…。私がそんな不純な事を考えているとは思っていないだろう神様が聞き取れない呪文の様なものを呟いた。

おぉ…ファンタジーや。私が立っている床に幾何学的な魔法陣が浮かび上がり、光を放つ。こいつは…綺麗だ…。ぼんやりその光景に見とれていると段々景色が霞んできた。時間、か。

「神様!」

「な、なに?」

神様の顔が見えないけどなんとなく泣いてる気がする。こんなに泣くなんて…神様なのに変なの。…全ての生き物に平等で、優しいって事なんだろうな。

「私、頑張って生きるぜ!新しい人生ありがとう!」

「…っ!!うん…、ぼくもきみを見守ってる!カオル、………!!」

名前、知ってたんだ。その後になんて言ったのかはわからない。でも凄く嬉しかった。まるで川みたいだけど…これは時空って言うのかな…ふらふらとその中を漂いながら目を閉じた。あ、やばい。眠い。急激な睡魔に襲われ、私はまたもや意識を失うのであった。


"カオル、君に幸あれ!!"


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