〜クダリside〜
第一印象は最悪。だっていきなり殴られそうになったんだよ?しかも傘で。心の広い僕だから良かったけど、カオルはもう少し考えて行動した方が良いよね。うん、だからバンギラスと戦っている姿を見た時は本気の馬鹿が現れたと思ったもん。あ、カオルには内緒ね?
でもあの時の彼女の笑顔…すっごく良かった!何が?って聞かれても説明は出来ないけど…。それがもう一度見たくてじっと顔を見てたんだけど、何故か僕にはその笑顔は向かない。ポケモンや幼い女の子にはあんなに笑いかけてるのに…。もしかして…監視されてるのに気付いてるのかな?
そう、ノボリがね、プラズマ団が乗っ取ろうとしてるって話と別に"カオル様は怪しい言動が多いので見張ってて下さいまし"って言うんだ。確かに普通の女の子ではないけど…。
「僕は君が危険人物とは思えないけどね。まぁいきなり殴られそうにはなった時はびっくりしたけど」
僕がそう言えばカオルは顔を真っ青にして、困ったように目をキョロキョロさせた。さっきまで凶悪なポケモンと凛々しく戦っていたとは到底思えなくてクスリと笑みが零れる。
「…その節は大変失礼致しました。土下座すりゃ良いですか?」
「あはは!もう気にしてないから大丈夫だよ!」
うん!やっぱり君は悪い子じゃないよ!ノボリには僕が説明しておこう。大丈夫!君は僕が守ってあげるから。
*******
カオルの考えている事がわかった時、僕…心臓がとまるかと思っちゃった。必死にシビルドンを止めようとしても何故か僕の言うことを聞いてくれなくて、シビルドンは電気を放出した。駄目、駄目だって!カオルが…死んじゃう!
シビルドンの放った電撃は綺麗な直線を描いて、カオルが持つ傘へと直撃した。電撃は傘を伝い、カオルを伝い、レパルダスを攻撃する。レパルダスはもちろん戦闘不能。…カオルは!?レパルダスと共に倒れた彼女はムクリと起きあがるとまず回りを見渡し安堵の息を吐く。…そして倒れるレパルダスを優しく撫でた。なんで?なんで、自分の心配をしないの?
その後、プラズマ団は逃げ出してカオルはその場に座り込んだ。ようやく自分の身体を確認する彼女を見て、僕は何故だか悲しくなってしまう。制服を脱ぎ、ソッと彼女の肩に乗せれば怪訝そうな表情をしたカオルと目が合う。一瞬、驚いたような顔をされた。
「クダリさん?」
「僕の制服、貸してあげる。服破れちゃったから」
「…どうも。ど、どうしたんですか?」
なんか泣きそうですよ、とカオルに言われて初めて気付いた。…僕、今胸が凄く苦しい。なんで彼女は自分を大切にしないのか。なんでこんな事になったのか。…僕が守ってあげるって思ったのに。無意識に僕は「ごめん」と呟いていた。そんな僕にカオルは不思議そうに首を傾げる。
「クダリさん、なんで謝るんです?」
「…僕が守らなきゃいけなかったのに、守ってもらっちゃった」
「そいつはおかしい…。貴方はちゃんと守りましたよ」
え?守った?僕が?その言葉に顔を上げればニッと笑い"このバトルサブウェイをね"とカオルが言ってくれた。僕、何も出来なかったのに、君はそんなことを言ってくれるの?なんだか嬉しくて泣きそうでカオルの顔が見れなくなって顔を伏せる。
「ありがとう、カオル」
「…どう致しまして?」
君の笑顔はやっぱり、すっごく良かった!でもその直後に見たノボリの顔はとっても怖くて僕どうしようかと思った!
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