ノボリさんは最後まで喋れなかった。何故なら電車が急に止まったからだぁぁぁ!!急停車した反動でシャンデラが私に突っ込んでずっこけるわ、頭打ちつけるわで最悪だったけど、何故無傷。…そういや頑丈にしてもろたな…。まだシャンデラが上に乗っている…もしや気絶した?と心配しているとシャンデラが赤く光り消えた。えぇぇ!?
「シャンデラさぁぁぁん!?」
「ボールに戻しただけでございます。安心してくださいまし」
ボールを元の場所に戻してノボリさんがキリッと私を睨む。に、睨まれた…だと!?そのままの表情でスタスタと長い足で私の元に近付いてくる。や、やばい…なんか知らんが怒られるわ!
「ひぃえええ!すみません!!すみません!!何かわからんけどすみません!!!!」
「カオル様!お怪我は…火傷はしておりませんか!?」
「え?ん?や、火傷!?」
そうだ!!シャンデラって思いっきり炎タイプだ!!慌ててシャンデラが飛んできた所を見るが火傷はおろか服も焼けていないではないか。…うん、何処も痛くないし大丈夫だ。
「怪我も火傷もしてないです」
「そうでございますか…。良かった…安心致しました」
ホッと胸をなで下ろすノボリさん。口はへの字だけどな。…しかし、また急に止まるってどういう事だ?ここ…どう見ても駅じゃないしね?私の不安な気持ちを感じ取ったのかノボリさんがインカムで話始めた。他の駅員さんと連絡を取ってるみたい。しかし、ノボリさんは大きく溜め息を吐いた。
「繋がりませんね…。一体どうしたというのでしょう…」
「…ノボリさん、あそこの扉開きます?」
「?はい、開きますよ」
そう言うとノボリさんは運転席(運転は自動だったみたい。すげぇ)に向かった。暫くしてプシューと音を立てて扉が開いた。ノボリさんありがとうございます!よっしゃ!と外に出ようとしたら肩を思い切り掴まれてしまった。
「…何をなさっているのです?」
「歩いて駅まで戻ろうかと」
「危のうございます!!ひかれたいのですか!?」
「もしかしたら列車が全部止まってるかもしれないじゃないですか」
そうなってたら大変じゃん。それに多分私ひかれても大丈夫。だって神様からもらった頑丈な体だからね!どやぁ!!ノボリさんの手を振り解き、飛び降りる。意外に高さがあってずっこけそうになったが気合いで踏ん張った。偉いぞ!私の足!!
「じゃ、ノボリさん行ってくるんで!!」
走り出そうとした私の肩をまたもやノボリさんがガシッと掴んだ。ちょ!痛い痛い痛い!少しは力の加減を…って、あれ?ノボリさんも降りてるじゃないっすか。
「どうしたんですか?」
「わたくしも一緒に参ります。…ポケモンをお持ちでないなら危険でございます」
「…ありがとうございます」
「お客様の安全を守るのも、わたくし共の大切な仕事ですから。…さ、参りましょう」
黒い制服を翻して、走り出したノボリさんはアホみたいに格好良くて思わず見とれてしまっていたら、ノボリさんに何をしてるんです!ってめっちゃ怒られたった。慌てて私も駆け出すのであった。
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