「カオルちゃん…!駄目だよ、危ないよ!」

「心配するな、カズマサ。私があんな変な奴らに負けると思うか?おっさんもそんな顔するなよ!」

泣き出したカズマサの肩を叩くおっさんの顔も苦しげに歪んでいた。…たく、廃人のクセに優しい奴らばっかりなんだからな。というか、あんたこの間人間やないな〜、とか言ってたじゃねぇか!心配性め…。もう一度言うが、私は強いのだ。多分大爆発食らっても無傷だからな。そんな私なんだ、安心したまえ。

「お客様の安全を守るのも、鉄道員の仕事だろ。私は一人でも平気だ。信じろよ、私を!」

口角を上げて、ニッと笑みを浮かべれば参った、と言いたげに苦笑するおっさんが拳を突き出してきた。な、なに!?一瞬殴られるかと思ったわ!訝しげにおっさんを見れば、はよせんかい!と怒られてしまった。…なんてこったい。この私がこんな青春っぽい事をするとはな。己の拳を、おっさんの拳にコツンと合わせる。無性に恥ずかしくなるんですけど!…お、おっさん恥ずかしくないのかよ!?

「ボスたちのことは頼んだで。…無理はすんなや、カオル」

「おう…。あんたもな、クラウド……のおっさん!」

「おっさんは余計や!!」

ば、馬鹿やろう!!いきなり名前を呼ぶんじゃねぇ!恥ずかしいし、照れるし…ん?なんか……死亡フラグ立ってるみたいじゃね?え、嘘?まさか最終話で私死んじゃうの?勘弁勘弁勘弁。死亡フラグめ…抗ってみせるからな…!って、こんな事してる場合じゃないわ。急がねぇと!…ん?なんだよ、エリ子…。てめぇもポケモン居ないんだろ?じゃあ何も出来ないだろうが。

「……なんだよ?」

声を掛ければビクッと身体を震わせるエリ子。…え?私そんなに怖い?まぁ昨日のはてめぇが悪いんだから仕方ないだ…ろ!?な、泣き出しやがった!!な、なんでだよ!ちょ、待て待て。私ハンカチ持ってないんだけど。女子力?んなもん持ち合わせてねぇわ!!…ポケットの中には数個の飴玉しか入っていない。…マイガッ!でも一応あげてみる、か。

「こらこらお嬢さん。いきなり泣くなよ。焦るだろうが…。ほら、モーモーミルクいちご味だ。これをやろう」

「……」

睨まれた。なんでや。人の気遣いを貴様は…!仕方ないので無理矢理握らせる。…長話し過ぎたかな。おっさんとカズマサ、三匹に視線を向ける。

「まずは自分たちが助かることを考えろ。地上には警察が沢山いるから保護してもらえる筈だ。で、お前らはプラズマ団に会ったら容赦なく攻撃な。私が許す。そんでもって私は双子とあんたらのポケモンを救出するってことで。んじゃ…」

また会おうぜ、その私の言葉に全員頷き、おっさんを先頭に脱出を開始した。…が、エリ子は一向に動かんではないか。なにしてんの?馬鹿なの?助かりたくないのか、この馬鹿やろう!

「ほら、置いてかれるぞ!早く行けよ!」

「私は…あなたに酷いことしてきたのに、どうしてここまで…優しく出来るのよ…!あなたが今からやろうとしてる事は凄く危険だってわかってるの!?」

先程同様、涙を零すエリ子のその言葉に目を見開いた。し、心配されとる…あのエリ子に。まじか…カオルさんびっくり。なんだよ…お前、割と良い奴じゃん。あれ?お前私のライバルポジション狙ってんの?残念だが私にライバルは必要ない。私が強すぎてライバルの意味をなさないからな。嫌味じゃないって!事実だって!

「…まぁ、お前らが私のことが嫌いでも、お前らは私にとって守るべきお客様だからな」

「あなた……」

ハッ…!また一つ、死亡フラグを立ててしまった気がする。いやいや…沢山のフラグをへし折ってきたこの私がそんな簡単に死ぬはずがなかろう。…死なないよな?…とりあえずあれだ、お前はそろそろ行きな。

「何シケた面してんだよ。双子もお前のポケモンも私が助けるからさ、いつもみたいに強気でいろよ、エリ子!」

「わ、私はそんな変な名前じゃないから!」

そうかそうか。だが私の中では君は既にエリ子で決まっているから仕方ないさ。さぁ、行け!笑いかけ、軽く手を振れば少し迷ったような仕草をしたがエリ子は私に一礼して走っていった。意外と…可愛いじゃないか。…さて、と双子とポケモンたちを救出に向かいますか!

…しまった。私、双子がどこにいるか知らないんですけど。やばばば。…そうだ。倉庫を出て、未だ気絶中のプラ男Cの頬を叩く。おい、起きろよ。漸く奴の瞼がピクンと動いた。そしてパチリと開かれた瞳と目が合う。青ざめる奴が悲鳴を上げるが逃がしはしない。胸倉を掴み、睨みつける。

「サブウェイマスターは何処だ?答えないとまた蹴るぞ」

「ちゅ、中央制御管理室…」

「そ。ありがと」

パッと離すと叫び声を上げながら逃げ出すプラ男Cを遠い目で見送った。そんなにビビることはないだろうが。…ま、二人が何処にいるか分かったし、行くか。走り出した私が願うのは、彼らの無事ただ一つ。私が行くから…待ってろよ…!!



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