最近超寒くね?いやまじで。朝起きたら寒くてキレるからね。寒いんですけど!って。まぁチラーミィからうるせぇ!と頭突きを食らうんだけどね。だって寒いんだもん。冬が悪い。あれ?今秋?いきなり寒くなったからよく分かんないや。
私は寒さに弱い。暑さにも弱いけどね。夏も冬も嫌いだ…!

「…うぅ。今夜は特に冷えるなぁ…」

なんでそんな私が寒い夜に外にいんのって思うよね?…星だよ、星。見に行きたいんだと…ノボリさんが。

目を輝かせて「今日の夜はランプラー座流星群が見れるそうですよ」と朝から仕事が終わるまで何度も何度も言われた。これはあれだな。多分見に行きたいんだろうな。一人で行けばいいのに…面倒臭い。そして二人で帰宅している途中…。

「…今夜は空が澄んでおりますね。きっと星も綺麗でございましょう」

言い終わるとノボリさんは期待に満ちた眼差しを私に向けた。まだ諦めてなかったのか!…ノボリさんなかなかしつこいのな。はぁ、仕方ない。折れてやるか。私超優しいよな。

「…見に行きます?」

「ほ、本当でございますか!?実はわたくしも流星群というものがどんなものか興味がございまして…」

バレバレやで。見に行きたかったのバレバレやで。嬉しくて興奮しているのかノボリさんがめちゃくちゃ喋っている。…星が好きねぇ。私よりロマンチストじゃないか、乙女ノボリよ。そうですねそうですねと適当に相槌を打つ私にも気づかないとは…興奮し過ぎやで。

どうやらカナワタウンに穴場があるらしく、ギアステーションに戻りカナワタウン行きの列車に乗り込む。車内の暖房に感動した!暖かいわ〜…余は幸せじゃ…。うとうとしながら列車に揺られて待つ事一時間。やっとこさカナワタウンに着いた。列車の扉が開くと冷たい外気が車内に入ってきて一気に覚醒する。超寒い。なにこれ。山か、山だからなのか。この私のイライラはあっという間に吹き飛ぶことになる。

「…うおぉ!?めっちゃ綺麗やないか!」

私、カナワタウン舐めてたわ。ただの鉄オタの聖地かと思ってたが、こんなに星が綺麗に見えるなんて。見上げると満天の星、星、星!天の川が肉眼ではっきり見えるって凄くね?凄いよな!あれが天の川なのかは知らんがな。こりゃ凄いと見上げる私の手をノボリさんが軽く引いた。ん?ここで見るんじゃねぇの?


「…わたくしの秘密の場所がございます。ご案内致しますのでついて来て下さいまし」

「…あんた結構星見にきてんのな。え?まさか一人で…!?」

「ち、違います!クダリとでございます!」

いやそれもどうかと思うが。イケメン二人が真夜中に星を見るとか…妖しすぎだろ。え、ベーコンレタスバーガー?止めろよ!私はそんなの求めてないからな!…あ。ナチュラルにノボリさんと、手繋いでる。え?ノボリさん無意識?乙女ー!気づいて!あんた私のお手て掴んでますよ!…まぁ、暖かいから繋いでてやるよ!いや照れてないからな。違うからな。少し山を登ったところでノボリさんの足が止まった。

「…さぁ、こちらでございます」

「………」

少し開けた場所に出ると、私は呆然と夜空を見上げていた。言葉が出ない美しさとはこの事か。突き刺すように輝く星達に圧倒された。星が眩しいと感じた事があるか?私はない。多分条件も良かったんだと思う。光害も月明かりもなく、空気も澄んでいる。…ただね、やっぱり寒いよな。ひときわ冷たい風が吹き付けて身体を震わせる。

直後ふわりと温かいものが私の身体を包み込んだ。いえす。ノボリさんですよ。あの乙女がやらかしました。背後から私を抱き締めている。ちょ、ちょ、ちょ。手を繋ぐのはまだ我慢出来たけどこれは、恥ずかしすぎるわ…!

「おい…何しているんすか」

「こ、こうしていれば…温かいでしょう?」

「あ、あったかいけど!…あー!!ノボリさんノボリさん!流れ星!!」

糸を引くような淡い光が幾重にも夜空を流れている。流れ星初めてみた!なにこれ興奮する。ら、ランプラー座流星群?まずその名前にも私は驚愕したがね。まぁそんな事は帳消しにするくらい綺麗だ。凄い凄い!と飛び跳ねる私。意外と無邪気だろ?その時耳元でくすくす笑う声がした。ちょ、くすぐったいんですけど。少し身をよじるとギュッと抱き締める力を強めたノボリさん。…あるぇ?

「なんか今日…ノボリさん男らしいですね」

「わたくしだって、男なのです。…貴女様はもう少し危機感というものをお持ちになられた方がよろしいかと…」

「うるせー!乙女に言われたくないわ!」

ぐっとノボリさんが息をのむ音がした。なんだ自覚はあったのな。…あぁ、星は綺麗で素敵だし、…ノボリさんがあったかくてなんか良いね。…うお!流れ星がいっぱい流れ出した!これはチャンスである。

「今が続きますように!今が続きますように!今が続きますように!」

い え た !やったー!!三回いえたー!!イェー……イ。私はとんでもない事を言った気がする。だって今のってさ、この状態が続くのを願ったみたいな感じじゃね…?やばばば!と慌てる私からそっとノボリさんが離れた。さむい。振り返ればいつものへの字口。暗いから分からないがきっと赤い顔をされているでしょう。


「わたくしも、そう願いました」

今度は正面から抱き締められることになろうとはな。…これじゃあ、星が見えんだろ。ばか。






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