皆さんはご存知だろうか。トリックオアトリート。悪戯されたくなければ菓子を寄越せ、この呪文を吐きながら近所を練り歩くのが許される…末恐ろしいイベント。そう、ハロウィンである。この世界にもまさか全く同じイベントがあるとは思ってもいなかったぜ。そして今まさにお菓子をせびられているのだ。全く面倒くさいことこの上ない。


「クダリさん楽しそうっすね」

「えへへ…。この格好似合うかな?」

「ファンが見たら卒倒すると思いますよ」


いつも羽織る白とは正反対な漆黒のマントを翻して楽しそうに笑うクダリさんは立派なイケメン吸血鬼である。白いシャツにベスト、黒のパンツ髪はオールバックにしているし…や、八重歯まで付けてくるとは…なかなかやるな。だが残念ながらなぁ…。


「お菓子無いっすわ」

「え?」

「作ってないし、買ってもないっすわ」


いや〜、格好つけて終わっただけでしたね。ま、サブウェイまで行ったらアホみたいにお菓子貰えると思うよ。身の保証はしないがな。てなわけだ、さっさとお行きなさい。私は今から掃除をせにゃいかんのだから。…おい、何故私の手を掴んでいるんだ。不愉快さを全面に出すがクダリさんは気にもしない様子で、そのままグイッと手を引っ張った。当然私はクダリさんにぶつかる訳で。


「…ってぇな!鼻が折れたらどうするんすか!」

「大丈夫、そんな簡単に折れないから」

「いや私の鼻事情を知らんだろ…つか離せし…」


掴まれた手を離そうとするが、こ、こいつ…めちゃくちゃ力入れてやがる…!おまけに反対の手を腰に回し、引き寄せられた。凄く…乙女ゲーな雰囲気です…。って馬鹿やろう!キッと睨むが、余裕のある笑顔を見せるクダリさんをぶん殴りたくなった。…明らかに先程の無邪気な笑顔じゃないよな、これは。なんつーの?…妖艶って感じ?てかあれだな。私、ヤバいよな、これ。て、貞操が危ない!カンカンと頭の中で警報が鳴り響くが、不思議な色をしたクダリさんの瞳を見つめていると魔法にかかったみたいで。う、動けねぇ…!そんな私を見て彼は満足そうに笑みを深める。


「お菓子くれないなら…悪戯、しなきゃね」


色気たっぷりに呟いたクダリさんは私の首筋に顔を埋め、かぷりと甘く噛み付いた。ヒィィィッ!小さく悲鳴を上げる私の貞操を誰か守って下さい。いやまじで。



あまいお菓子、いただきます!







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