憑いてますよ | ナノ




旧校舎って嫌いなんだけどなぁ…。先生に頼まれたんじゃ断れない。しかもこの荷物…すっごく重い!ぼくが抱えるダンボールの中には使わなくなった教材がこれでもかと入っている。暗いし寒いし埃っぽいし…もー、本当にやだ!!この木造の旧校舎…昭和初期に建てられたとっても古い校舎。今では物置となったここの噂を、ぼくは何度もノボリから聞いている。

旧校舎に入った生徒が行方不明になった、怪しい光を見た、化け物が出た…他にもなんか言ってた気がするけど忘れちゃった。ノボリは興奮すると話が長いんだもん。そんなくだらない噂なんかより、昨日からぼくの後ろをついて来る女の子の方が、よっぽど怖い。

「……はぁ〜、ノボリのばか!」

なにもしてこなくても、良い気持ちはしない。…早く帰ろう。ここに長くいちゃ、駄目な気がする。さっきから頬がピリピリしてるんだ。なにか…良くないことが起きる前、いつもこうなる。空気が違うって言うのかな?この旧校舎は…明らかに"普通"じゃない。ドサッと、ダンボールを置いて急ぎ足で廊下を出た。その時、声が聞こえた。思わず足を止めてしまったのは、その声があまりにも楽しげだったから。きっと良くないものの声。わかってた。わかってたけど…ぼくはゆっくり声がした方に歩き出す。

…理科室?色褪せた文字からなんとか読み取ることが出来たそこは、どうやら理科室だったみたい。中からは沢山の笑い声が聞こえる。…なんでかな、時々、関西弁みたいなものも混じって聞こえる気が…。幽霊も方言とかあるの?新発見!きっとノボリに伝えたら喜ぶ!そろりと、扉を開けた。

これが、ぼくとミコトの出会い。



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