憑いてますよ | ナノ




ぼく、クダリ。何処にでもいる普通の高校生。…でも、ひとつだけ、普通じゃないことがある。それは小さい頃からみんながみえないものが、みえるんだ。最初は、みんなにもぼくと同じものがみえてるのかと思ったけど、違った。壁をすり抜ける人も、襖から覗く赤い目も、毎晩毎晩天井に現れる大きな白い顔も…。

ぼくにしか、みえてないんだって気づいた。

「どうして…?ぼく、嘘なんか吐いてない…。あそこに血まみれのおねえちゃんがいるよ?きゅーきゅーしゃ、呼ばないと…」

誰もいない道路の端を指差してそういうぼくを、最初は心配していた両親も今はただただ気持ち悪いものを見るような目で見てくる。両親だけじゃない。学校の先生も、同じクラスの子も、みんなみんな同じ目でぼくを見てた。…ただひとり、兄のノボリだけは、違った。ひとりぼっちのぼくをいつもいつも慰めてくれた。

「クダリ、泣かないで下さい。わたくしはしんじます。クダリがいうものを、わたくしがみることは出来ないけれど…わたくしはしんじますから、どうか…泣かないで」

「…ノボリ、うん!ぼく、ノボリがいるから、だいじょうぶだよ!」

ポロポロ涙は零れたけど、にっこり笑ってみせれば、ノボリも安心したみたいに笑顔を浮かべた。これが、ぼくが小学生の頃の話。…で、そんな優しかったノボリも今では…。

「クダリ、クダリ!見て下さいまし!このスーパーブラボーな箱を!なんとなんと、この箱には鬼の指が封印されているらしいのです!これが買わずにいられますか?いいえ、無理でございます!!」

「んもー、ノボリ!また変なの買ってきてる!あと、近所迷惑!」

キラキラと瞳を輝かせたノボリが手に持つ、古びた小さな箱。もう…見てるだけで頭がいたくなる。おまけに、何重にも重ねて貼られている御札は今にも破れてしまいそう。…それから、ノボリの後ろに立った首がぐらぐらしてる女の子。うっかり首が落ちちゃうんじゃないの?…あぁ、だから変な骨董品を買うのはもうやめてって言ったのに!

優しかった兄は、立派なオカルト狂になってしまった。明らかにぼくの影響だよね…。溜め息を吐いたぼくを、光の無い目で女の子が見ていた。



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