憑いてますよ | ナノ




ぼくの守護霊がいなくなってしまったということをありありと実感させられた。血まみれで顔の半分がない女に手首を掴まれたり、鞄に大量の耳が入ってたり…今まで経験したことがないことが起きて、ぼく涙目。でもその度にミコトが守ってくれる。幽霊が、幽霊を祓うってどういうことなんだろうね?祓われる幽霊も、なんだこれ?って顔してたような気がする。…どうやらミコトは特殊過ぎる存在みたいだね。周りを警戒しながら歩くミコトが、そうだ、と呟いた。

「クダリ…もうすぐでお家ですよね?着いたら結界を張りましょう」

「け、結界!?ミコト、そんなこともできるの?」

「えぇ、生前…そういう仕事をしてましたので」

そう言ったミコトの顔がほんの少し曇った。…なにか、あったのかな?でも、ぼくは聞かない。聞いてほしくないものかもしれないから。…それに会ったばかりなのに、深くまで聞けないよね。溜め息を吐いたぼくの隣のミコトは怒鳴り声を上げながら襲い来る悪霊たちを消し去っていくのだった。そして漸くぼくらは家に辿り着く。…家に帰るのにこんなに苦労するなんて、今まで考えたこともなかったよ。

「ただいま〜…」

玄関にノボリの靴がある。…今日は帰って来るのが早いなぁ。いつもなら骨董屋さんに行ってるはずなのに…え…?な、なにこの感じ…。家全体に重い空気が漂っているし、なんだか…淀んでいる。なにかが、いる…。隣のミコトを見れば、コクン、と頷いた。やっぱり良くないものがいるんだ…!…ノボリを、助けないと!ぼくは靴のまま駆け出した。後ろでミコトがぼくを呼んだけど、ノボリが危ないんだもの!止まれないよ…!


(全く…怖がりなクセに、無茶をするんですね)




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