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これは、むかしむかしのものがたり。

あるところに、いくらたべてもそのおなかをみたすことができないおひめさまがいました。
けれども、みたこともないくらいうつくしく、としをとらず、わかわかしいおひめさまでもありました。

おうさまは、そんなかわいいおひめさまのためにたくさんのりょうりにんをやといました。

おしろのなかには、みたこともないごうかなりょうりがテーブルいっぱいにならべられます。
ぜんぶ、おひめさまのためによういされたたくさんのりょうりです。

でも、おひめさまはまんぞくしません。

さらにおいしいりょうり、めずらしいりょうり、かわったりょうり、きれいなりょうり。
おひめさまはおなかをみたすために、いろいろなりょうりをほしがりました。

おうさまは、もっとたくさんうでのいいりょうりにんをさがしてやといました。

おしろのなかはテーブルにならべられなかった、たくさんのりょうりでいっぱいになりました。

けれど、まだおひめさまはまんぞくしません。

そうしていくうちに、おひめさまはせかいじゅうのりょうりをぜんぶたべてしまいました。

それでも、まだおひめさまはまんぞくしません。

おひめさまはあたらしいりょうりをたべたがるのですが、もうおひめさまのしらないりょうりは、このせかいにありません。

なやみつづけたおひめさまは、あるときおうさまをかまどにいれてやいてしまいました。
やけたおうさまは、たべてみるといままでたべたことのないくらい、とてもおいしいあじでした。

つぎにおひめさまは、ちかくにいたじょちゅうを、かまどにいれてやいてしまいました。
やけたじょちゅうは、おうさまのあじではなかったけれど、とてもおいしいあじでした。

そしておひめさまは、だいじんをかまどにいれてやいてしまいました。
やけただいじんも、おうさまのあじではなかったけれど、とてもおいしいあじでした。

それから、おひめさまは、おしろのひとたちをつぎつぎかまどにいれてしまいました。
やがて、おしろのひとたちはみんな、おひめさまにたべられてしまいました。

まだおなかがすいてしかたがないおひめさまは、まちへとあるいていきました。

みちをあるいているひとやこどもをさらって、おしろのかまどでやきました。

やがて、まちのひとびとはこわがって、まいにちまいにちいえのなかにかくれてすごすようになりました。

そんなことはしらずに、おひめさまは、まちをあるきつづけます。

やがて、おひめさまは、まちでにんげんをみつけることができなくなりました。

そうして、おひめさまは、まちをでてもりへとあるいていきました。

そのもりには、まものがすんでいましたが、まちのようすをみていたまものたちも、おひめさまをこわがってもりのおくにかくれていました。

おひめさまは、おなかがすいてたおれそうになりながら、あたらしいりょうりをさがしつづけました。

やがておひめさまは、もりでいちばんおおきなきをみつけました。

そのきには、いままでみたこともないまっかでまるいきのみがなっていました。
じゅくして、いまにもおちそうで、とてもおいしそうなきのみでした。

おひめさまは、そっとそのみをもぎとって、ちいさくひとくちかじりました。
さわやかなあまさと、しゃりしゃりとしたはごたえをもつふしぎなきのみでした。

おなかがすいていたおひめさまは、そのみをむちゅうでたべました。

そして、そのみをすべてたべおわったしゅんかん、おひめさまはぐれんのほのおにつつまれました。

ひめいをあげることも、あつさをかんじることもできないまま、おひめさまはいっしゅんではいになってしまいました。

やがて、まものがやってきて、のこったほねをくわえてさっていきました。


はつかねずみがやってきた。
これではなしはおしまい。




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