カッターちゃんは僕のために戦ってくれたのだと、後から気付きました。 あいつらの叫び声でたくさん人が駆け付けて、上辺だけの慰めを受けて、久しぶりに静かな食事をしたその後に。 やっぱりあの子は強かった。 僕にはない勇気を持って、誰とだって戦えるんだから。 そんなことをカッターちゃんに言ったら、黴菌くんのためだけ、と答えてくれました。 それでも、僕の世界は変わりません。 教室にいても殴られることはなくなりました。 放課後どこかで蹴られることもなくなりました。 声高らかに罵倒されることもなくなりました。 なくなったけれど。 僕の携帯には毎日メールが来ます。 僕の存在を否定する文字の羅列が何通も。 僕の居場所は汚れていきます。 腐臭にまみれたガラクタ達で。 僕は再び、今度は静かに排除された。 でも、構わない。気にならない。 だって僕にはカッターちゃんがいるから。 どんな傷も痛みも、幸福の前では塵にしか過ぎません。 みんながどんなに僕らを憎んでも、嫌がっても。 僕らは僕らなりに幸福を手に入れられる。 朝はおはようと挨拶をして、昼は二人でご飯を食べて、放課後は一緒に勉強をして、夜はおやすみとメールをする。 それが待ち望んだ幸福。居場所。生き方。 どうやら世界は僕が嫌いらしい。 それはもう変えられない真理らしいので、そんなことはもう気にしません。 僕はいじめられっ子の黴菌くん。 僕の彼女はいじめられっ子のカッターちゃん。 どんなに傷付いても、僕らは幸せな人間です。 ← → モドル |