静寂だけが私の心休まる場所。 家に帰れば誰もいない。 柔らかな薄闇だけが私を包む。 そうして深呼吸をしてから、腫れた頬を冷やしたり、切れた場所に絆創膏を貼ったり、ようやく自分を癒すことが出来る。 女の子だもの。傷だらけは嫌。 私に無関心な親は真夜中に帰ってきて、私が学校にいる間に出勤する。 もちろん私には気付かない。 でも、それでいい。私に気付いてくれるのは黴菌くんだけでいいの。 黴菌くんは優しい。 彼も傷付いているけれど、私の頬をそっと撫でてくれる。私にはない優しさだ。 黴菌くんが近くにいると心がふわりと軽くなる。 きっと私と違って魂が純粋なのね。 傷付いて、傷付いて。 だけどきらきらと光る優しい心。 私が彼を守らなくては。 だって私はカッターちゃんだもん。 傷付くのも、傷付けるのも平気。気にしない。 黴菌くんの敵を切り刻むのは私。 だから、もう泣かなくていいんだよ。 そう心の中で語りかけながら、私はそっと目を閉じた。 ← → モドル |