まさかね。 自分のクラスの生徒が自殺するなんて思わなかった。 家族ほどじゃないにしても、身近な人間が突然いなくなるというのはショックだったよ。 同時に、存在が消えるっていうのはこういうことだと思い知らされた。 悲しいって気持ちより、どうして?何で?って感じ。 本当に何も無くなるんだ。 それに、彼女は遺書を遺さなかったんだ。 身の回りの物も妙にすっきりしててさ。 何か、計画的に自殺したんじゃないかって思った。 不謹慎だってのは分かるよ。 でも、本当にそうだったんだよ。 ……考え過ぎか。 そうだよな、僕なんてまだ教師二年目だしな。 まあ、クラスの子供達にも一応話は聞いてみたよ。 自殺の原因になるようなことが何かないか、ってね。 でも皆分からないって言うんだ。 たった一人だけ話した子がいたけど……。 え?その子? ああ……彼女の親御さんには失礼だけど、勉強のことで期待をかけすぎたんだって言ってた。 僕はそれを聞いて、違うな、って思った。 もちろんなんとなくだよ。 何でかな……多分彼女ならそんなこと気にしないと思ったんだ。 それに、親御さんとの関係も良かったみたいだし。 他の子? さあ……特に何も言ってなかったけど。 影が薄かったってことかな。 ……なあ。 僕は最近生徒たちが怖いよ。 彼女が自殺してから、何かがおかしいんだ。 僕との間に大きな溝が出来たみたいなんだよ。 しかも自然に出来た溝じゃない、誰かが突然作ったみたいな溝さ。 突然切り離された気がするんだ。 生徒は自分たちだけで固まって……何かな……ピリピリしてるんだ。 悲しいからとかじゃないんだ、何かに怯えてるような……。 ……気のせいか。 それなら、良いよ。 僕は彼女がこの溝を作った気がしてならないんだ。 そりゃあ、我ながら考え過ぎだと思うさ。 でも、僕は彼女のせいで生徒たちが怖くなった気がするんだ。 どうしてだろうね。 彼女は一体何だったんだろうね。 そもそも学校って、何だろうね。 ← |