愛と鶏肉///同性愛

今日は、唐揚げを作ります。
目の前には、まな板、包丁、それと鶏肉。
大学生になって2年と少し、だいぶ自炊にも慣れた。料理の腕が上がった所で、食べに来てくれる人はいないけれど。
鶏肉を手に取る。ひんやりして、ぐにぐにしている。気持ち悪い。黄色い脂が体温で溶けて、押さえる手が滑る。
骨は無い。たまに固い筋と、血管の名残り。ああ、この塊はかつて生命活動を行っていたのだなあ、と思い出す。
もし、人間の死体をすっかり血抜きして、ばさばさと精肉してもおんなじなんだろうか。自分で考えて、ちょっとうげえってなった。思わず包丁を持つ手も止まる。そりゃそうだ。
でも、もしタブーじゃなかったら、自分の大好きな人が死んじゃった時、私はその人の死体をうっかり食べちゃうかもしれない。
多分、私の恋はどれだけ祈っても実を結ばないだろうし、どんなに頑張ったって二人体を重ねることなど出来やしないから、そのくらいしないと、私の恋は何だか報われない。そんなチャンスなんて絶対無いけど。
もし、本当に想像だけど、私があの子を食べられるなら、一口目はどこにしようかな。
柔らかそうな内腿。それともぷっくりとした乳房。いや、透き通るように白い二の腕かも。
そこまで考えて、私は何だか虚しくなった。救われないなあ、と自分でも思う。
私がこんな妄想を繰り広げている間、きっとあの子は彼氏と仲良くしてるだろう。思わず脳裏に、ベッドが軋む音が浮かんだ。穢される純潔。いや、元からきっとそうだろうとも。
ぶんぶんと頭を振って、嫌な考えは追い出した。
鶏肉がぬるくなってしまう前に、さっさと切ってしまわなくちゃ。
何せ今夜は唐揚げ。晩御飯まではまだまだ。
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