海市///junk

御覧なさい、綺麗でしょう。海に浮かんじゃいますが、あすこは駅ですよ。名前を夢の跡と云うのです。そんな名は聞いたことが無いですか。そうでしょう。あれは、境目を走る列車が停まるのです。此岸と彼岸の間なぞ、ヒトにはそうそう縁の有るものではありません。え、非科学的。私は学が無いものですから、科学なんぞはよく分かりませんが、そんなものは彼方には何ら関係が無いのですよ。瓦斯灯が現れてからもう幾分も経ちますが、魑魅魍魎どもは其処ら中から湧いてきます。御存知ですか。妖怪は境に棲むのです。どんなに夜が明るくなろうとも、此岸と彼岸が在る限り、また境目も消えやしません。おや、恐ろしいですか。それとも、馬鹿馬鹿しい作り話だとお思いですか。私はどうなのかって。何も怖がることなどありません。私はあわいの者ですから。ええ、ヒトとは少し違うのですよ。それに、境目というのは案外近いものです。そら、窓の外を御覧なさい。百鬼夜行が見えるでしょう。幻じゃあありません。言った通りでしょう。貴方だってすぐに行けますよ。簡単です。切符を買えば良いんです。勿論、境目にも列車は通っていますよ。此方と同じようにね。本当に便利なものです。ああ、もう着いたのか。え、この駅の名前ですか。此処は骨休めと云います。はい。勿論境目ですよ。お降りになりますか。まだ先ですか。では、私はこれで。それじゃあ、御機嫌よう。

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お題:異界
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