橙水葬///

道端に薄橙の花が咲いていた。
橋の下を流れる川は冷たそうだった。

近くの土手を下りて、手で水を掬う。
やっぱり冷たい。
今日なら私の命を奪ってくれるかな。

天候は曇り。風は少し冷たい。
舞台は揃ってしまった。

善は急げ、って言うよね。
そう思って私は薄橙の花を摘み取った。
勿論名前なんか知らない。
でも可愛い花だからいいよね。
それで小さな花束を作る。

うん、綺麗に出来た。
そうしたら髪を解いて、鞄を置く。

ちょっと身軽になった分、わくわくした。
どうせだからと制服のリボンも外す。

これで準備万端。
何時でも飛べる。

遺書とか書いた方がいいのかな。
でも嫌なことだらけだから書ききれないよね。
それよりも、死に様の方が大事。
これだけ水が冷たければ中々腐らないだろうな。
私も人形みたいに真っ白に死ねるかな。
後は髪の毛がぶわあ、と水面に広がれば完璧。
ああ、花は抱いた方がいいのかな。
それとも、飛ぶ前に散らした方が良いのかも。

そんな風に水面を見つめながら悩んでいた瞬間だった。

「おい」

貴方の鋭い声。

とても間が悪い。
空気読めないって言った方が良いのかな。

折角わたし、彼岸へ行く所だったのに。

「……何してるんだよ」

貴方が来なければ、身も心も死ねたのに。

「私の、お葬式」

さよなら、わたしの心。

薄橙の花が水面に落ちて、散った。


橙水葬
(貴方の所為で死に損ねた)
(別に言い訳じゃないの)
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