カナリアの断末魔///junk

誰がこまどり殺したの?
それは私 私なの…

今日も呪いの歌が聞こえる。
高く積み上げられた本に混じって、銀色の小さな鳥籠が蝋燭の光を静かに跳ね返している。
籠の中で鳴くのは、僕の恋人だったモノ。

誰がこまどり殺したの?
それは私 私なの…

可憐な声で、同じ歌を永遠に繰り返す。
そんな奇妙な生き物が、そこにはいた。
虹色に輝く羽根。
首には赤いリボン。
艶やかに輝く黒髪に、美しい顔。

僕の恋人の顔。

あんなに愛していたのに。
僕のせいで呪われてしまった。

この世の全ての知識と引き換えに、僕は彼女を失った。

「おいで、レン」
鳥籠を開けて指を出すと、レンは静かに僕の指を掴んだ。
そして、にっこり笑うと再びあの歌を歌い出した。
何処か媚るような目で、声で、仕草で僕を誘惑する。

でも、これはエレンじゃない。
僕の恋人だったエレンは死んでしまったのだ。
だから、この人面鳥の名前はレン。
Ellenからe"生"を取ったらこうなるのだから。

嗚呼、また歌が聞こえる。

歌が、詩が、唄が。

彼女は嫌いだと言っていた歌なのに。

何故彼女と同じ顔なんだろう。
これが神とやらの罰なのか。
これが代償という呪いなのか。

今までの僕なら、このまま古びた机に突っ伏して泣きじゃくっただろう。
だが、僕はもう決めてしまったのだ。

「レン」
彼女だったモノは、名前を呼ばれることを喜ぶ。
そして、肩に飛んできて僕の頬にキスをするのだ。
レンは今もそうした。
それが最後のキスだと知らずに。

「おやすみ、レン」

僕に知識を与えた老人は、鳥が死ぬ時に僕も死ぬと言った。

「さよなら、エレン」

彼女の細い首に、僕はそっと手を掛けた。
ゆっくりと、ゆっくりと力を込めていく。
ばたばたと、彼女はもがいた。
彼女が散らしただろう虹色の羽は、涙に阻まれてよく見えなかった。

誰がこまどり殺したの?
それは私 私なの…

死の淵でも、彼女は歌を歌っていた。
そっと涙を流しながら。
それでも微笑みながら。
息が苦しい筈なのに。
僕に対する鎮魂歌のつもりだろうか。

だれがこまどりころしたの?
それはわたし わたしなの…

 れがこ どり ろし の?
そ はわた  わた な の

否、きっと呪いなのだろう。
首に加わる強い力と、何処かへ引っ張られていく意識を感じながら、僕はそっと目を閉じた。

だれ が こまどり ころしたの ?

そ れ は




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お題提供:小梅日和
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