君はハレー彗星///junk

初めて君を見たのは、夏だった。

目の眩むような日差しの中、君は突然木の上から飛び降りてきた。
そして、うっすらと額に汗を浮かべ、きょとんとした顔で僕を見たんだ。

日焼けしたしなやかな手足と男子みたいに短くした髪の毛には葉っぱがいっぱい付いていて、セーラー服も土だか苔だかで何となく汚れていた。
女の子らしさとはかけ離れていて、でも何だか輝いていた。

でも、そんなこと何も気にせずに君はにこっと笑顔を浮かべた。

「ハンカチかティッシュ」
「え」
「持ってないかな。鼻に泥が付いちゃったから」
「あ、じゃあ、これ」
「ありがとう」

これが最初の会話。
僕はひたすら混乱してしまって、多分無駄にあわあわしていたけれど。

「ありがとう」
「は、はい」
「これ、洗って返すね。君、何組?」

大きな瞳がじっと僕を見つめていた。
そのせいで、僕は君に何と言ったのか覚えていない。
集中していないと、君の真っ黒な瞳に吸い込まれそうだったから。

まるで宇宙のような、不思議な雰囲気だった。
そして、多分君はハレー彗星。

何故かそうはっきりと思った。
酸欠みたいにくらくらする頭の中で、君がぴかぴか光り出すまでにはあまりかからなかった。

近付くと酸素がなくなるって噂は本当だったみたいだね。




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Thanks/痴児
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