コウモリたちの試食会///幻想

ふわふわのケーキ、焼きたてのパイ、果物たっぷりのタルト。
透き通ったキャンディ、可愛らしいクッキー、甘い甘いチョコレート。

色とりどりのきらきらしたお菓子がテーブルいっぱいに並べられて、目の前で楽しげに光っている。

我々使い魔に与えられるいつもの待遇よりはるかに素晴らしい光景だ。

しかし。

「では、今年も感想を頼むね」

テーブルの向かいではご主人様がにこにこしながら待っている。
これが我々のご主人、金髪赤眼、黒い帽子とマントが似合う若い魔女である。

そしてこの菓子の試作は、毎年ハロウィンになるとやって来る「品評会」だ。

「あの……毎年のことなのですが」
「見た目も味も申し分ないです」
「けど、量が……」

我々は珍しく一致団結して反論してみるが、ご主人様は全く気にせず笑っている。

「いいじゃない。お腹いっぱいになって丁度いいでしょ?」
「いや、あの……」
「そうじゃなくて……」

……やっぱり今年も食べる羽目になるのか。
これを毎日の食事に行き渡るように分けてくれればいいのに。

「もう!ハロウィンは明日だって言ってるのに」
「準備が遅いんですよ……」

愚痴はご主人様に聞こえなかったようだが、仲間は聞いていたらしい。
先程からしきりに頷いている。

「とにかく!今夜中に味をみてよ!」

これらの菓子に何の意味があるのか、最初はわからなかった。
今ではうんざりするくらいにわかってしまった。
要するに魔女達の間で、お菓子作りの腕を競うらしい。

魔女は何故こんな面倒なことをするのだろう。
大体ハロウィンなんてなんでもない、人間達の祭りじゃないか。
どうして一晩中味の改良をしなくてはならないのだろう。

「……どう?おいしい?」
「はい、とても」

人間達は自由で羨ましい。

今はもう、主人にこき使われることも、食べ物が足りなくなることもないだろう。
やっぱり使い魔の権利は少ない。
ていうかこれはもはや虐待だ。虐待。

「いーっっぱい食べなさいね?」
「は……はい……」

ご主人様は嫌いじゃないけど、ハロウィンだけは止めてほしい。
使い魔だって街を歩きたいのに!

ああ、やっぱりこの試食会は最悪だ。
主人はそうでもないのにな。

そんなことを考えても、テーブルのお菓子は減らなかった。
ああ、来年こそはやりませんように!

私はそう思いながらタルトを口に運んだ。




コウモリたちの試食会
(祭りの準備は)
(どこの誰でも大変だね)


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Thanks/水葬

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