memo | ナノ
国に嫁いできたオリビア様と、九人の妻の中の誰かとの間に世継ぎを作り次第即位なさるエドワード様の食事の時間は、私のようなメイドにとってとても息苦しいもの。
オリビア様はここに来て一度も笑ったところを見せたことがなく、ご飯も事務的に召し上がられているのがわかり、心苦しささえ感じることもありますが、一方でエドワード様はその悪癖からかオリビア様をまるで物のように思っているようで、笑わないオリビア様に対して涙を求めていらっしゃる。
今日も無口なオリビア様と一緒に食事をとりながら、その麗しい容姿がご飯を召し上がられいるご様子をじっと眺めている始末。
オリビア様もエドワード様も、お互い愛がなく、ただ片方が片方の欲を満たすだけの関係性はなんと表せばよいのでしょうか。


「オリビア」
「はい」

ふとエドワード様が口を開き、それにオリビア様が返事をされる。
すっと持ち上げられた瞼から覗く金の瞳がエドワード様を射抜くと当の王子はにこやかに笑って私に合図を送られた。
ただ黙って用意されたガラスの小瓶に入ったピンクの液体をエドワード様の元へお運びする。
それを受け取ったエドワード様は、オリビア様にその液体の説明をされた。
その内容に目を見開くオリビア様に、私はそれは驚きになられるだろうなと思う。



―――ここからエドワード視点

この国に伝わる秘薬、通称、神の雫は男性を妊娠させる薬だ。
少しずつ子供を産めるように身体のつくりを変える効果があるという。
かつてどうしても愛しい男性との間に子を作りたかった何代もの前の王が当時一番賢いとされていた者に作らせたという薬だ。
この国にしか咲かない花が元になっているいて、この国にしか伝わっていないその秘薬の効果は王族に絶大な信頼を寄せられている。

目を見開いて秘薬を凝視するオリビアをじっと見る。
驚いた顔もまた、美しい。

「その薬を、私に飲めというのですか」
「その通り」

ふふと笑って見せるとオリビアは少し難しそうな顔をした。
オリビアの美しい容姿は素晴らしい。その遺伝子をこの私の子供にも与えたいと思うのは当然のことだ。
白い髪に金色の瞳。美しいその容姿にその声。
美形と評される私と混ざることによってどんな子供が生まれるのか非常に楽しみで仕方ない。
オリビアに似て美しい子供が生まれた時は、どうしようか。
二人とも塔に閉じ込めてしまうのも悪くない。
私はオリビアが紡ぐ私の意思に沿うという返事を非常に満たされた気持ちで聞いた。



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テーマ「人外ファンタジー」
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