『ん〜…っ』
「ま、マスター、大丈夫?」
『うーん…あーダメ!やっぱり難しいよー!!』
「あはは…」
あたしはただいま疾風先生の元、お裁縫の修行中。一応編んでいるのは王道のマフラー、なのだけど…
あたしの向かい側に座っている疾風の手元をチラリと盗み見る。そこに見えるのはまるで売り物のように綿密に編まれ続けているマフラー…あれ、どうしてかな。あたしの手元の物がただの毛糸の塊にしか見えなくなってきた。
あたしは旅の合間にこうして裁縫をすることがある。理由は…やっぱり苦手だから。練習していつかは完璧に出来るようになりたいと思っているのだけど中々上手くいかないんだよね。
そして今日もポケモンセンターで夕飯を終えた後1人編み編みやっていたのだけど、うんうん悩んでいたあたしを見かねて疾風が来てくれたのである。
あ、冬だしマフラーを編もうと言ったのは疾風なんだよね。やっぱりドラゴン&地面タイプの彼は寒いのが苦手らしい。
それにしても疾風は上手い、神業か!って感じ。何でこんなに手先が器用なのかな…お顔も綺麗だし文句無いじゃん。
そんな思いを込めて見つめていたら視線に気付いたのか、疾風が顔を上げてクスリと笑った。うわ、今のスマイルは女の子やられちゃうんじゃないの!?
「マスター、出来そう?」
『うん…難しいけど、頑張る。せっかく疾風が教えてくれてるんだしね!』
「お、教えるって程じゃないけど…でもマスター頑張ってるし、ボクも手伝うよ」
さすが疾風くん、優しい!蒼刃とよく一緒にいるから紳士的な部分が移ってたりしてね。うんうん、どこぞのドSトリオにも見習わせたい。
『それにしても疾風って本当に凄いよね!前ビレッジブリッジでした化粧とかもそうだけど、見ただけで出来ちゃうとか羨ましい!手先が器用って素敵な才能だよ』
「そ、そうかな?ボクは凄いなぁとか、面白そうだなぁと思ってやってみるだけだけど…」
『それで出来ちゃうのが凄いんだよ!おまけにプロみたいに完璧にね!』
「あ、あはは、マスターがそう言ってくれると自惚れちゃうよ。でも…、」
『ん?』
「ボクも、そうやって誰かを素直に褒めることが出来るのはマスターの才能だと思うな。ボクね、マスターは本気で褒めてくれてるって分かるのが凄く嬉しいから、だからもっと色々やってみようと思うんだよ!」
そう言ってニッコリ笑う疾風にときめいたのは、はいあたしです。あぁあああもぉおおお疾風可愛いぃいいい!!
しかも何か嬉しいこと言ってくれたし!感極まってしまったあたしはいつものように疾風のサラサラの髪を撫でた。するとくすぐったいよと笑うからまた可愛い。
『はー…何かやる気出てきたよ疾風くん!この調子でドンドンやっちゃおう!』
「う、うん!完成させようねマスター!」
あたしは自分の髪と同じオレンジの毛糸、疾風は…おぉ、赤い毛糸だ!そっか赤かぁ…あ、意外と疾風に似合うかも。基本赤って紅矢のイメージカラーだけどね。
ちなみにこの毛糸達は全てハル兄ちゃんから送られてきた物です。一緒についていた手紙には「ヒナタは確か編み物をしていたよね。澪がたくさん毛糸を買ってきたから少し送ります。ヒナタ!風邪引かないように暖かい物を編むんだよ!それともし良かったら僕にも1つ、」…何故かここまでで途切れていたけれど。というかここから破れていて読めなかった。
まぁとりあえずハル兄ちゃん達の好意を有り難く!ということで貰った毛糸も疾風のお陰で報われるだろう。
『ねぇねぇ疾風、疾風の苦手な物って何?』
「に、苦手な物…あ、食べ物で言うなら冷たい物はダメ、かなぁ。アイスとか…それに蕎麦も暖かい方が好きだよ」
『おぉ、やっぱりタイプって食べ物にも関わってくるものなんだ。氷雨は逆に冷たい物好きだもんね!冬でもアイスコーヒーとか飲んでるし』
「ぼ、ボクはあの光景を見ているだけで寒くなるよ…だからね、たまに紅矢の近くに寄って、暖をとったりしてるんだ」
『あは、分かる分かる!紅矢って近くにいるだけで暖かいもんね、原型モフモフだし炎タイプだし!あたしも実は紅矢をブラッシングする時とかコッソリ暖まらせてもらってるんだよ。あ、でもこれは内緒ね?バレたら怒られそうだし!』
「う、うん!分かった!(マスターには怒らないと思うけど…)」
こうして色々なことを話しつつも手を休めることは無く作業を続けた。合間合間に疾風からの手解きを受けて、やっと!本当にやっとマフラーを完成させることが出来たのです!
『やったー!!凄い!初めてまともに形になったー!!』
「お、おめでとうマスター!」
『疾風のお陰だよー!ありがとう!』
「う、ううん、マスターが頑張ったからだよ!」
本当に嬉しい、だって今まで編んだ物はどれも納得がいかなかったけれど…このオレンジ色のマフラーは自分なりに達成感が湧いてくる。まぁ所々歪だったりするけれどね。
「…ね、ねぇマスター、それ…誰にあげるの?」
『へ?』
完成したマフラーを広げて眺めていると突然疾風に問われた。誰に…そっか、そういえばその事は言ってなかったっけ。
あたしはニッと笑って、気まずそうに俯いていた疾風の首に出来立てのマフラーを巻く。当然驚いた彼は素早く顔を上げて目を丸くしたから、その表情に思わず吹き出してしまった。
「え、え?」
『あは、これは疾風にあげる!貰ってくれる?』
「へ…あ、あの、本当に?」
『うん!元々疾風にあげようと思っていたヤツだし。あげる本人にやり方教えてもらうなんて間抜けだけど…』
苦笑いを浮かべるあたしを見て、何故かみるみるうちに真っ赤になっていく疾風。あ、ゴメン!部屋の中じゃやっぱり熱いよね!
慌ててマフラーを外そうとすると、その手を疾風に掴まれて阻止されてしまった。そしてそのままギュウと握られる。
「…な、何で、ボクに…?」
『何でって…えっと、編む直前に疾風が寒がりなの思い出したからかな。あたしの腕じゃまだこれくらいが限界だけど…少しでも疾風を暖めてくれますようにって願いは込めたよ!』
「…っあ、ありがとう、マスター…!」
疾風はあたしの手を握ったまま、何だか泣きそうな笑顔を浮かべた。その顔が本当に嬉しそうで、あたしもつられて破顔する。
そして疾風はいそいそと自分が編んだ赤いマフラーをあたしの首に巻いた。うわ、何これ質感から既に違う!手触りとか同じ毛糸使っている筈なのに何でこんな差があるの!?
(…あれ、ていうか何であたしに?)
「あ、あのねマスター、ボクもこれ…マスターにあげたい」
『え…い、いいの!?こんな綺麗なヤツ…!』
「う、うん、だってボクもマスターにあげる為に編んだんだから。女の子は体冷やしちゃダメってテレビで言ってたし…それに、」
(色的にも赤い糸、みたいで…それをボクが編んだんだと思うと、嬉しい。…なんて、)
『ん?何?』
「な、何でもない!と、とにかく、それ…使ってくれる?」
『勿論だよー!疾風が丹誠込めて編んでくれたマフラーだし大事にする!』
「え、えへへ、ボクもマスターのくれたマフラー大事にするよ!」
『ありがとう疾風ーっ!!』
「わ…っあはは、マスター暖かいね!」
『うん!』
飛び付いたあたしを嫌がりもせず受け止めてくれる疾風って本当優しいよね。お互いマフラーを巻いているせいかいつもより体温が暖かく感じて…ついこのまま眠ってしまいたくなった。
(多分これで他の皆がボクを警戒するようになると思う、けど…でも、それでもいいかな。ボクだって、マスター大好きだし)
『ねぇ疾風、せっかくマフラー巻いたんだしこのままどこか出掛けない?雷士達の分は無いから内緒で!』
「…!うん!」
絶対皆この疾風が編んだマフラー見たら羨ましがるだろうしね…特に嵐志!彼はオシャレさんだから。
…あ、
『あ、あの、ゴメン疾風。よく考えたらあたしの編んだそのマフラーじゃ外出るの恥ずかしいよね…?』
いくら今までで一番完成度が高いとは言え、それはあくまであたし個人の感想だ。世間一般的な目で見たらとても見せびらかせるような代物じゃないよね…。
途端に浮かれていた自分が恥ずかしくなりドアを開けようとしていた手を引っ込めると、疾風がニコッと笑ってあたしに言った。
「ううん、ボクはマスターがくれたマフラーで出掛けたいよ。マスターの優しさが詰まった物を見せびらかさないなんて、勿体無いと思うな」
…何この子、天然タラシ?
感動で思わず涙腺が緩んだのは間違いなくあたしの母性が原因だ。聞いて下さいハル兄ちゃん、我が子はこんなに優しくて男前な美少年に育ちました!
『あは、ありがとう!それじゃ行きますか!』
「うん!」
次は疾風に手袋も編んでみようかな、なんて思ったり。その為にあたしもっと練習して上手くなるよ。
こうしてオレンジと赤、2つの暖色で着飾ったあたし達は身も心も暖まったのでした。
〜おまけ〜
「はぁ…ヒナタからのマフラー早く届かないかなぁ。僕としてはやっぱりヒナタの髪と同じオレンジのマフラーを編んでほしいなぁ。ヒナタが一緒にいてくれるみたいで研究も頑張れそうだよ!」
「ハルマ、恐らくヒナタがマフラーを編んでくれることはないだろう。無駄な期待は止めておけ」
「まぁ私達がヒナタちゃんに余計な労力使わせない為に手紙を途中で破ったし、ハルマの心の叫びには気付かれてないでしょうね」
「ほんま旦那はシスコンやなー。そらまぁワイもお嬢に編んでもろたら嬉しすぎて死んでまうやろうけど!」
(お、オレもヒナタのマフラー欲しい…!)
end
「ま、マスター、大丈夫?」
『うーん…あーダメ!やっぱり難しいよー!!』
「あはは…」
あたしはただいま疾風先生の元、お裁縫の修行中。一応編んでいるのは王道のマフラー、なのだけど…
あたしの向かい側に座っている疾風の手元をチラリと盗み見る。そこに見えるのはまるで売り物のように綿密に編まれ続けているマフラー…あれ、どうしてかな。あたしの手元の物がただの毛糸の塊にしか見えなくなってきた。
あたしは旅の合間にこうして裁縫をすることがある。理由は…やっぱり苦手だから。練習していつかは完璧に出来るようになりたいと思っているのだけど中々上手くいかないんだよね。
そして今日もポケモンセンターで夕飯を終えた後1人編み編みやっていたのだけど、うんうん悩んでいたあたしを見かねて疾風が来てくれたのである。
あ、冬だしマフラーを編もうと言ったのは疾風なんだよね。やっぱりドラゴン&地面タイプの彼は寒いのが苦手らしい。
それにしても疾風は上手い、神業か!って感じ。何でこんなに手先が器用なのかな…お顔も綺麗だし文句無いじゃん。
そんな思いを込めて見つめていたら視線に気付いたのか、疾風が顔を上げてクスリと笑った。うわ、今のスマイルは女の子やられちゃうんじゃないの!?
「マスター、出来そう?」
『うん…難しいけど、頑張る。せっかく疾風が教えてくれてるんだしね!』
「お、教えるって程じゃないけど…でもマスター頑張ってるし、ボクも手伝うよ」
さすが疾風くん、優しい!蒼刃とよく一緒にいるから紳士的な部分が移ってたりしてね。うんうん、どこぞのドSトリオにも見習わせたい。
『それにしても疾風って本当に凄いよね!前ビレッジブリッジでした化粧とかもそうだけど、見ただけで出来ちゃうとか羨ましい!手先が器用って素敵な才能だよ』
「そ、そうかな?ボクは凄いなぁとか、面白そうだなぁと思ってやってみるだけだけど…」
『それで出来ちゃうのが凄いんだよ!おまけにプロみたいに完璧にね!』
「あ、あはは、マスターがそう言ってくれると自惚れちゃうよ。でも…、」
『ん?』
「ボクも、そうやって誰かを素直に褒めることが出来るのはマスターの才能だと思うな。ボクね、マスターは本気で褒めてくれてるって分かるのが凄く嬉しいから、だからもっと色々やってみようと思うんだよ!」
そう言ってニッコリ笑う疾風にときめいたのは、はいあたしです。あぁあああもぉおおお疾風可愛いぃいいい!!
しかも何か嬉しいこと言ってくれたし!感極まってしまったあたしはいつものように疾風のサラサラの髪を撫でた。するとくすぐったいよと笑うからまた可愛い。
『はー…何かやる気出てきたよ疾風くん!この調子でドンドンやっちゃおう!』
「う、うん!完成させようねマスター!」
あたしは自分の髪と同じオレンジの毛糸、疾風は…おぉ、赤い毛糸だ!そっか赤かぁ…あ、意外と疾風に似合うかも。基本赤って紅矢のイメージカラーだけどね。
ちなみにこの毛糸達は全てハル兄ちゃんから送られてきた物です。一緒についていた手紙には「ヒナタは確か編み物をしていたよね。澪がたくさん毛糸を買ってきたから少し送ります。ヒナタ!風邪引かないように暖かい物を編むんだよ!それともし良かったら僕にも1つ、」…何故かここまでで途切れていたけれど。というかここから破れていて読めなかった。
まぁとりあえずハル兄ちゃん達の好意を有り難く!ということで貰った毛糸も疾風のお陰で報われるだろう。
『ねぇねぇ疾風、疾風の苦手な物って何?』
「に、苦手な物…あ、食べ物で言うなら冷たい物はダメ、かなぁ。アイスとか…それに蕎麦も暖かい方が好きだよ」
『おぉ、やっぱりタイプって食べ物にも関わってくるものなんだ。氷雨は逆に冷たい物好きだもんね!冬でもアイスコーヒーとか飲んでるし』
「ぼ、ボクはあの光景を見ているだけで寒くなるよ…だからね、たまに紅矢の近くに寄って、暖をとったりしてるんだ」
『あは、分かる分かる!紅矢って近くにいるだけで暖かいもんね、原型モフモフだし炎タイプだし!あたしも実は紅矢をブラッシングする時とかコッソリ暖まらせてもらってるんだよ。あ、でもこれは内緒ね?バレたら怒られそうだし!』
「う、うん!分かった!(マスターには怒らないと思うけど…)」
こうして色々なことを話しつつも手を休めることは無く作業を続けた。合間合間に疾風からの手解きを受けて、やっと!本当にやっとマフラーを完成させることが出来たのです!
『やったー!!凄い!初めてまともに形になったー!!』
「お、おめでとうマスター!」
『疾風のお陰だよー!ありがとう!』
「う、ううん、マスターが頑張ったからだよ!」
本当に嬉しい、だって今まで編んだ物はどれも納得がいかなかったけれど…このオレンジ色のマフラーは自分なりに達成感が湧いてくる。まぁ所々歪だったりするけれどね。
「…ね、ねぇマスター、それ…誰にあげるの?」
『へ?』
完成したマフラーを広げて眺めていると突然疾風に問われた。誰に…そっか、そういえばその事は言ってなかったっけ。
あたしはニッと笑って、気まずそうに俯いていた疾風の首に出来立てのマフラーを巻く。当然驚いた彼は素早く顔を上げて目を丸くしたから、その表情に思わず吹き出してしまった。
「え、え?」
『あは、これは疾風にあげる!貰ってくれる?』
「へ…あ、あの、本当に?」
『うん!元々疾風にあげようと思っていたヤツだし。あげる本人にやり方教えてもらうなんて間抜けだけど…』
苦笑いを浮かべるあたしを見て、何故かみるみるうちに真っ赤になっていく疾風。あ、ゴメン!部屋の中じゃやっぱり熱いよね!
慌ててマフラーを外そうとすると、その手を疾風に掴まれて阻止されてしまった。そしてそのままギュウと握られる。
「…な、何で、ボクに…?」
『何でって…えっと、編む直前に疾風が寒がりなの思い出したからかな。あたしの腕じゃまだこれくらいが限界だけど…少しでも疾風を暖めてくれますようにって願いは込めたよ!』
「…っあ、ありがとう、マスター…!」
疾風はあたしの手を握ったまま、何だか泣きそうな笑顔を浮かべた。その顔が本当に嬉しそうで、あたしもつられて破顔する。
そして疾風はいそいそと自分が編んだ赤いマフラーをあたしの首に巻いた。うわ、何これ質感から既に違う!手触りとか同じ毛糸使っている筈なのに何でこんな差があるの!?
(…あれ、ていうか何であたしに?)
「あ、あのねマスター、ボクもこれ…マスターにあげたい」
『え…い、いいの!?こんな綺麗なヤツ…!』
「う、うん、だってボクもマスターにあげる為に編んだんだから。女の子は体冷やしちゃダメってテレビで言ってたし…それに、」
(色的にも赤い糸、みたいで…それをボクが編んだんだと思うと、嬉しい。…なんて、)
『ん?何?』
「な、何でもない!と、とにかく、それ…使ってくれる?」
『勿論だよー!疾風が丹誠込めて編んでくれたマフラーだし大事にする!』
「え、えへへ、ボクもマスターのくれたマフラー大事にするよ!」
『ありがとう疾風ーっ!!』
「わ…っあはは、マスター暖かいね!」
『うん!』
飛び付いたあたしを嫌がりもせず受け止めてくれる疾風って本当優しいよね。お互いマフラーを巻いているせいかいつもより体温が暖かく感じて…ついこのまま眠ってしまいたくなった。
(多分これで他の皆がボクを警戒するようになると思う、けど…でも、それでもいいかな。ボクだって、マスター大好きだし)
『ねぇ疾風、せっかくマフラー巻いたんだしこのままどこか出掛けない?雷士達の分は無いから内緒で!』
「…!うん!」
絶対皆この疾風が編んだマフラー見たら羨ましがるだろうしね…特に嵐志!彼はオシャレさんだから。
…あ、
『あ、あの、ゴメン疾風。よく考えたらあたしの編んだそのマフラーじゃ外出るの恥ずかしいよね…?』
いくら今までで一番完成度が高いとは言え、それはあくまであたし個人の感想だ。世間一般的な目で見たらとても見せびらかせるような代物じゃないよね…。
途端に浮かれていた自分が恥ずかしくなりドアを開けようとしていた手を引っ込めると、疾風がニコッと笑ってあたしに言った。
「ううん、ボクはマスターがくれたマフラーで出掛けたいよ。マスターの優しさが詰まった物を見せびらかさないなんて、勿体無いと思うな」
…何この子、天然タラシ?
感動で思わず涙腺が緩んだのは間違いなくあたしの母性が原因だ。聞いて下さいハル兄ちゃん、我が子はこんなに優しくて男前な美少年に育ちました!
『あは、ありがとう!それじゃ行きますか!』
「うん!」
次は疾風に手袋も編んでみようかな、なんて思ったり。その為にあたしもっと練習して上手くなるよ。
こうしてオレンジと赤、2つの暖色で着飾ったあたし達は身も心も暖まったのでした。
〜おまけ〜
「はぁ…ヒナタからのマフラー早く届かないかなぁ。僕としてはやっぱりヒナタの髪と同じオレンジのマフラーを編んでほしいなぁ。ヒナタが一緒にいてくれるみたいで研究も頑張れそうだよ!」
「ハルマ、恐らくヒナタがマフラーを編んでくれることはないだろう。無駄な期待は止めておけ」
「まぁ私達がヒナタちゃんに余計な労力使わせない為に手紙を途中で破ったし、ハルマの心の叫びには気付かれてないでしょうね」
「ほんま旦那はシスコンやなー。そらまぁワイもお嬢に編んでもろたら嬉しすぎて死んでまうやろうけど!」
(お、オレもヒナタのマフラー欲しい…!)
end