※恋人設定です
「…よし、作るぜヒナタ」
『い、イエッサー…』
本日の宿として借りた一室にあるキッチン。そこにあたしはエプロンをつけて立っていた。ちなみに隣りでやたらやる気満々に腕まくりをしているのは、料理には全く縁のなさそうな横暴キング。
…えーと、ちょっと整理しようかmy脳内。
まずあたしは今日時間があるから、バレンタインも近いことだしお菓子作りの練習でもしようとキッチンに立った。すると紅矢がフラりとやって来て…
「どうせ俺が食うモンだしな、テメェがヘマしねぇように見ててやる」
とか何とか言い出して…いやいや失礼だよね紅矢ってば。あたしだって人並みに料理出来るし心配ないのに!…多分。
ていうかあたし1人でやりたかったのにな…そりゃ最終的には紅矢にあげるものなんだけどさ。え?何故かって?え、えと…一応紅矢があたしのか、かれ、彼氏…だから。うわぁあああ何コレ恥ずかしい!!
…ま、まぁそれは置いておいて、せっかくこっそり作ってビックリさせようと思っていたのに。けれど鼻が利く紅矢に甘いニオイは隠せなかったらしい…あたしのバカ。
そしてただ茶々を入れるだけかと思えば、何と自分までエプロンをつけ出したからあたしは理解が追い付かない。え、何で?そう問いかけたら、
「あ?俺もやった方がたくさん作れんだろ。甘ぇモンの量は多いに限る」
つまり一緒に作るということらしい。…あれ、あたしの乙女心はガン無視ですか紅矢様。サプライズ作戦を踏みにじりましたね!?
…なーんて、思ったのに。
白のYシャツを着て、腰に黒いカフェエプロンをつけた紅矢は、その…かなりカッコ良い。赤い髪だし襟足が長いから見た目は不良でチャラそうな男の人って感じだけれど…そうやって黙っていればキリッとした顔立ちで真面目そうに見えるのにな。
何だかいつもは見ない姿に少しだけドキドキしてしまい、チラチラ紅矢を見ていたら「見とれてんじゃねぇよアホ」って叩かれた。う、酷いよ紅矢のバカ…!
「おら、そこの生クリーム取れ」
『はいはい…』
題して、【紅矢様の!横暴クッキング☆】
…うわぉ超帰りたい。ていうか自分のネーミングセンスも痛かった。
それにしても…紅矢ってお菓子作りも出来るんだ。意外だなぁ…普段絶対こういうのやらないのに。
『ねぇ紅矢、紅矢って前からお菓子作り出来たの?』
「あ?まぁな。前のトレーナーは手持ちに個人的なモンや金は寄越さなかったからな、甘ぇモン食う為には自分であるモン使って作るしかなかったんだよ。…だがテメェは違ぇな、俺らに要らねぇモンまで寄越しやがる」
『え!?要らない物!?あ、あたし何あげちゃったんだろう…!?』
「疾風のマフラーとか雷士の枕とかだな。俺らは人間じゃねぇ、そんなモンは必ずしも必要じゃねぇだろ」
『そ、そうだけど…、』
「まぁ、アイツらにとっちゃ喜ばしいことだろうがな。顔見てりゃ分かんだろ、アイツらがどんだけ嬉しそうな顔してるか」
『!』
…こ、紅矢は嘘吐かないから…今のって本音だよね?うわぁ何か嬉しい…!疾風も雷士も、他の皆も喜んでくれているんだ…!
「…間抜けヅラすんなバカ、チョコ垂れんぞ」
『いたっ!?』
う、また叩かれた。でもつい衝撃で痛いって言ってしまったけれど、あんまり痛くないかも。…あは、紅矢も口元が笑っているし手加減してくれたんだね。
そう言えば紅矢って結構手際良いなぁ。普段やらないだけで割と器用だったりして。勿論仲間内のベストオブ器用は疾風だけどね!
「…よし、後は冷やして固めるだけだな。完成するまでの暇つぶしにゲームでもするか」
『ゲーム?何の?』
「テメェを弄り回してどの部位が一番イイ声で鳴くかを探り当てるゲーム」
『全身全霊でお断りさせて下さい』
何しれっと恐ろしいこと言ってんの紅矢様…!何をされるか分からないけれど、この不敵な笑みを見る限りきっと痛いことに違いない。だってドSだから。
そんなことしたら全力で蒼刃呼ぶからね!?そう言ったら1つ鼻で笑ってソファにドカリと腰掛けたから、多分…冗談だったのだと思いたい。
ひとまず命の危機を免れたことに安心したあたしも読みかけの雑誌を手に取って時間をつぶした。
そして約1時間後、冷蔵庫を開けてみると。そこには何とも出来映えのいいトリュフチョコが鎮座していたのです!
『おぉ…!美味しそう!』
「当然だろ、この俺が甘ぇモンに関して失敗する筈がねぇ」
『さすがです甘味キング!』
初めての協同作業がお菓子作りってどうなのだろう。よく分からないけれど、でも楽しかったな。紅矢も嬉しそうにトリュフチョコを手に取って眺めているからきっと満足したのだろう。
ココアパウダーをまぶしたトリュフチョコを数個お皿に移しリビングへと運ぶ。わーい早速待ちに待った実食だ!
ニヤニヤ締まりのない顔で笑っているのが自分でも分かるから、あたしも分かってはいたけれど相当甘い物好きだね。さすがに紅矢程ではないと思うけれど…それでも甘い物は毎日食べたいし。
ウキウキしつつ綺麗な円形のトリュフチョコを1つ摘んで口に入れようとしたら、何故かその手を紅矢に掴まれて阻止される。そしてあろうことかトリュフチョコを奪われてしまった。
『ちょ、何するの紅矢!あたしのチョコ返してよー!』
「…はっ、」
『あ″ぁあああ食べたぁああああ!!』
本当に何てことすんのこの鬼畜ウインディは!!??いいもん次は絶対奪われないようにするし!!
人の食べようとしている物を奪うなんて、まるで初めて出会った時と同じだ。少しだけムッとしながら次のチョコに手を伸ばそうとした瞬間、紅矢があたしの顎を掴み自分と目線を合わせた。
…え、何その嫌な笑み。
この顔は経験上何だか良くないことを考えている顔だ。ちょおおおお牙!!牙見えてますよ紅矢様ぁあああ!!
『っも、もう文句言わないから噛むのはやめ、んぐっ!?』
鋭く光る牙を見せたままゆっくりと顔を近付けてきたから、命の危機を感じたあたしは必死に顎を掴んでいる手を離そうとした。けれどそんな抵抗も虚しくもうダメ、噛まれる!
…そう思ったのに、襲ってきたのは痛みではなく何か柔らかい感触だった。
『…っ!?』
「ん…、」
ぬるり、紅矢の舌が挿入されると同時に甘い物が口内に押し込まれる。少し溶けてしまっているけれど、丸みを帯びたソレは間違いなく先ほど奪われたトリュフチョコだ。
何度も角度を変えて激しく口付けられる内にチョコは液体状になり徐々に喉へ流し込まれていき、酸素も碌に取り込めず苦しくなったあたしはとうとう咳き込んでしまう。けれど真っ赤な顔をして咽せるあたしを見て紅矢は満足そうに舌なめずりをした。
『っう、けほっ!も、本当に何するの紅矢…!』
「はっ、イイ顔じゃねぇかヒナタ」
『そんなこと言ってほしいんじゃなくて…わ!?』
未だ整わない呼吸のまま反論しようとしたら、今度は思い切り引き寄せられそのまま抱き締められた。元々体温の高い紅矢にこうされると何だか気持ち良くて怒る気が無くなってしまう。
「…テメェはミルクチョコだな。くどい程甘ったりぃのに、つい手が止まらなくなる。まるで麻薬みてぇだ」
『ま、麻薬…?あたしそんな危険性持ってないと思うんだけど…』
凄い微妙な例え方するなぁ紅矢って。というか頬を掠める髪がくすぐったいのだけど。
「…いいかヒナタ、テメェ他の野郎にチョコなんざやるんじゃねぇぞ。たとえハルマや雷士でもだ」
『へ?』
「テメェは俺の女だ、俺以外に好意を捧げる必要なんざねぇ」
『こ、好意って…そりゃ確かに雷士達のこと好きだけど、でもそれは仲間としての好きで、』
「うるせぇ、言うこと聞け」
あたしの言葉など聞き入れることもせず、抱き締めたまま再び強引に唇を塞がれる。でも、決して乱暴ではなくて…紅矢の隠された優しさを感じるようなキスだった。
「テメェに中毒になるのは、俺1人で充分だ」
そう言って口角を吊り上げ笑う紅矢をカッコ良いと思うあたしも大概だなぁと思いつつ、照れ隠しですっかり柔らかくなってしまったトリュフを紅矢の唇に押し付けてやった。
〜おまけ〜
「ちょ、マジでオレらには何もねーの!?姫さんのチョコ楽しみにしてたんだぜ!?」
『ご、ゴメン本当にゴメン!でも紅矢が怒るんだもん…!』
「紅矢貴様ぁあああ!!ヒナタ様を誑かしただけでは飽き足りずヒナタ様のチョコまで独占するなど許さん!!」
「はっ、俺のモンに手ぇ出そうとするテメェらが悪い」
end
「…よし、作るぜヒナタ」
『い、イエッサー…』
本日の宿として借りた一室にあるキッチン。そこにあたしはエプロンをつけて立っていた。ちなみに隣りでやたらやる気満々に腕まくりをしているのは、料理には全く縁のなさそうな横暴キング。
…えーと、ちょっと整理しようかmy脳内。
まずあたしは今日時間があるから、バレンタインも近いことだしお菓子作りの練習でもしようとキッチンに立った。すると紅矢がフラりとやって来て…
「どうせ俺が食うモンだしな、テメェがヘマしねぇように見ててやる」
とか何とか言い出して…いやいや失礼だよね紅矢ってば。あたしだって人並みに料理出来るし心配ないのに!…多分。
ていうかあたし1人でやりたかったのにな…そりゃ最終的には紅矢にあげるものなんだけどさ。え?何故かって?え、えと…一応紅矢があたしのか、かれ、彼氏…だから。うわぁあああ何コレ恥ずかしい!!
…ま、まぁそれは置いておいて、せっかくこっそり作ってビックリさせようと思っていたのに。けれど鼻が利く紅矢に甘いニオイは隠せなかったらしい…あたしのバカ。
そしてただ茶々を入れるだけかと思えば、何と自分までエプロンをつけ出したからあたしは理解が追い付かない。え、何で?そう問いかけたら、
「あ?俺もやった方がたくさん作れんだろ。甘ぇモンの量は多いに限る」
つまり一緒に作るということらしい。…あれ、あたしの乙女心はガン無視ですか紅矢様。サプライズ作戦を踏みにじりましたね!?
…なーんて、思ったのに。
白のYシャツを着て、腰に黒いカフェエプロンをつけた紅矢は、その…かなりカッコ良い。赤い髪だし襟足が長いから見た目は不良でチャラそうな男の人って感じだけれど…そうやって黙っていればキリッとした顔立ちで真面目そうに見えるのにな。
何だかいつもは見ない姿に少しだけドキドキしてしまい、チラチラ紅矢を見ていたら「見とれてんじゃねぇよアホ」って叩かれた。う、酷いよ紅矢のバカ…!
「おら、そこの生クリーム取れ」
『はいはい…』
題して、【紅矢様の!横暴クッキング☆】
…うわぉ超帰りたい。ていうか自分のネーミングセンスも痛かった。
それにしても…紅矢ってお菓子作りも出来るんだ。意外だなぁ…普段絶対こういうのやらないのに。
『ねぇ紅矢、紅矢って前からお菓子作り出来たの?』
「あ?まぁな。前のトレーナーは手持ちに個人的なモンや金は寄越さなかったからな、甘ぇモン食う為には自分であるモン使って作るしかなかったんだよ。…だがテメェは違ぇな、俺らに要らねぇモンまで寄越しやがる」
『え!?要らない物!?あ、あたし何あげちゃったんだろう…!?』
「疾風のマフラーとか雷士の枕とかだな。俺らは人間じゃねぇ、そんなモンは必ずしも必要じゃねぇだろ」
『そ、そうだけど…、』
「まぁ、アイツらにとっちゃ喜ばしいことだろうがな。顔見てりゃ分かんだろ、アイツらがどんだけ嬉しそうな顔してるか」
『!』
…こ、紅矢は嘘吐かないから…今のって本音だよね?うわぁ何か嬉しい…!疾風も雷士も、他の皆も喜んでくれているんだ…!
「…間抜けヅラすんなバカ、チョコ垂れんぞ」
『いたっ!?』
う、また叩かれた。でもつい衝撃で痛いって言ってしまったけれど、あんまり痛くないかも。…あは、紅矢も口元が笑っているし手加減してくれたんだね。
そう言えば紅矢って結構手際良いなぁ。普段やらないだけで割と器用だったりして。勿論仲間内のベストオブ器用は疾風だけどね!
「…よし、後は冷やして固めるだけだな。完成するまでの暇つぶしにゲームでもするか」
『ゲーム?何の?』
「テメェを弄り回してどの部位が一番イイ声で鳴くかを探り当てるゲーム」
『全身全霊でお断りさせて下さい』
何しれっと恐ろしいこと言ってんの紅矢様…!何をされるか分からないけれど、この不敵な笑みを見る限りきっと痛いことに違いない。だってドSだから。
そんなことしたら全力で蒼刃呼ぶからね!?そう言ったら1つ鼻で笑ってソファにドカリと腰掛けたから、多分…冗談だったのだと思いたい。
ひとまず命の危機を免れたことに安心したあたしも読みかけの雑誌を手に取って時間をつぶした。
そして約1時間後、冷蔵庫を開けてみると。そこには何とも出来映えのいいトリュフチョコが鎮座していたのです!
『おぉ…!美味しそう!』
「当然だろ、この俺が甘ぇモンに関して失敗する筈がねぇ」
『さすがです甘味キング!』
初めての協同作業がお菓子作りってどうなのだろう。よく分からないけれど、でも楽しかったな。紅矢も嬉しそうにトリュフチョコを手に取って眺めているからきっと満足したのだろう。
ココアパウダーをまぶしたトリュフチョコを数個お皿に移しリビングへと運ぶ。わーい早速待ちに待った実食だ!
ニヤニヤ締まりのない顔で笑っているのが自分でも分かるから、あたしも分かってはいたけれど相当甘い物好きだね。さすがに紅矢程ではないと思うけれど…それでも甘い物は毎日食べたいし。
ウキウキしつつ綺麗な円形のトリュフチョコを1つ摘んで口に入れようとしたら、何故かその手を紅矢に掴まれて阻止される。そしてあろうことかトリュフチョコを奪われてしまった。
『ちょ、何するの紅矢!あたしのチョコ返してよー!』
「…はっ、」
『あ″ぁあああ食べたぁああああ!!』
本当に何てことすんのこの鬼畜ウインディは!!??いいもん次は絶対奪われないようにするし!!
人の食べようとしている物を奪うなんて、まるで初めて出会った時と同じだ。少しだけムッとしながら次のチョコに手を伸ばそうとした瞬間、紅矢があたしの顎を掴み自分と目線を合わせた。
…え、何その嫌な笑み。
この顔は経験上何だか良くないことを考えている顔だ。ちょおおおお牙!!牙見えてますよ紅矢様ぁあああ!!
『っも、もう文句言わないから噛むのはやめ、んぐっ!?』
鋭く光る牙を見せたままゆっくりと顔を近付けてきたから、命の危機を感じたあたしは必死に顎を掴んでいる手を離そうとした。けれどそんな抵抗も虚しくもうダメ、噛まれる!
…そう思ったのに、襲ってきたのは痛みではなく何か柔らかい感触だった。
『…っ!?』
「ん…、」
ぬるり、紅矢の舌が挿入されると同時に甘い物が口内に押し込まれる。少し溶けてしまっているけれど、丸みを帯びたソレは間違いなく先ほど奪われたトリュフチョコだ。
何度も角度を変えて激しく口付けられる内にチョコは液体状になり徐々に喉へ流し込まれていき、酸素も碌に取り込めず苦しくなったあたしはとうとう咳き込んでしまう。けれど真っ赤な顔をして咽せるあたしを見て紅矢は満足そうに舌なめずりをした。
『っう、けほっ!も、本当に何するの紅矢…!』
「はっ、イイ顔じゃねぇかヒナタ」
『そんなこと言ってほしいんじゃなくて…わ!?』
未だ整わない呼吸のまま反論しようとしたら、今度は思い切り引き寄せられそのまま抱き締められた。元々体温の高い紅矢にこうされると何だか気持ち良くて怒る気が無くなってしまう。
「…テメェはミルクチョコだな。くどい程甘ったりぃのに、つい手が止まらなくなる。まるで麻薬みてぇだ」
『ま、麻薬…?あたしそんな危険性持ってないと思うんだけど…』
凄い微妙な例え方するなぁ紅矢って。というか頬を掠める髪がくすぐったいのだけど。
「…いいかヒナタ、テメェ他の野郎にチョコなんざやるんじゃねぇぞ。たとえハルマや雷士でもだ」
『へ?』
「テメェは俺の女だ、俺以外に好意を捧げる必要なんざねぇ」
『こ、好意って…そりゃ確かに雷士達のこと好きだけど、でもそれは仲間としての好きで、』
「うるせぇ、言うこと聞け」
あたしの言葉など聞き入れることもせず、抱き締めたまま再び強引に唇を塞がれる。でも、決して乱暴ではなくて…紅矢の隠された優しさを感じるようなキスだった。
「テメェに中毒になるのは、俺1人で充分だ」
そう言って口角を吊り上げ笑う紅矢をカッコ良いと思うあたしも大概だなぁと思いつつ、照れ隠しですっかり柔らかくなってしまったトリュフを紅矢の唇に押し付けてやった。
〜おまけ〜
「ちょ、マジでオレらには何もねーの!?姫さんのチョコ楽しみにしてたんだぜ!?」
『ご、ゴメン本当にゴメン!でも紅矢が怒るんだもん…!』
「紅矢貴様ぁあああ!!ヒナタ様を誑かしただけでは飽き足りずヒナタ様のチョコまで独占するなど許さん!!」
「はっ、俺のモンに手ぇ出そうとするテメェらが悪い」
end