彼女は未だ天使のような寝顔で眠り続ける。でも僕が首にかけた手に少しだけ力を込めると、数秒の後ヒュッという空気の詰まる音を上げて咳き込んだ。


『っぅ、げほっ!けほっ!…っな、何…?』


ようやく覚醒したらしい。僕は首から手を離してそのままスルリと彼女の頬を撫でた。


『…?らい、と…?』

「おはよう、ヒナタちゃん」


当たり前だけど状況が掴めていない彼女にニコリと微笑んでやる。すると彼女はキョロキョロ辺りを見渡し、次いで自分に跨がる僕を見て首を傾げた。


『雷士…今って夜中だよね?どうしたの?』


…この状況でもまだそんなことを言うんだ。まぁ僕に対して警戒心なんて持ってこなかったから当然と言えば当然か。逆に今は有り難いかもしれない。


「…ヒナタちゃん、僕達ずっと一緒だよね?」

『…?う、うん…?』


ニヤリ、自分でも口元が厭らしく歪んだのが分かった。僕は狡い、でもここで止める気など更々ない。


「うん、そうだね。じゃあ…ヒナタちゃんのこと、犯すね?」

『…え?』


何を言ったか聞こえなかったのかもしれない。たとえ聞こえていたとしても、この純粋な子は意味を理解することは出来なかっただろうけれど。

彼女が言葉を紡ぐ前にその小さな唇を僕の唇で塞いでやった。すると彼女は大きな目を更に見開いて体を強ばらせる。

顎を掴み、咥内に舌を滑り込ませ歯列をなぞった。何をされているのかやっと理解したらしい彼女は僕の胸を押して抵抗しようとしたけどそんなの無駄。

両腕を掴み上げ片手で固定し、逃げ惑う小さな舌を捕まえ容赦なく吸い上げる。湿った水音が上がる度に僕の体は熱を発散させたいと疼いた。

思う存分堪能し、最後に柔らかい唇をペロリと一舐め。彼女は声も出ないのか、真っ赤な顔をして目尻に涙を溜めていた。


(…イイ顔)


今この子は間違いなく僕だけを見ている。あの頃と同じように、世界には僕とこの子しかいない。

首から鎖骨、Tシャツから覗く胸元まで丹念に舐めると大袈裟に跳ねる小さな体。そこでやっと悲鳴を上げようとした口を素早く掌で押さえ付け、僕は無言で彼女の衣服を剥いでいった。




そこからは、至福の時間。




−−−−−−−−−




(…暖かい…)


泣き腫らし、焦点の合わない目はただ宙を見つめている。僕はそんな彼女の細いけれど柔らかい体をギュッと抱きしめ、ある一点に微かに血を滲ませたシーツにくるまっていた。


(さすがに初めてで無理させちゃったかな…でも可愛いのが悪い)


叫ばれて他の仲間が来ないようにと終始口を塞いでいたけれど、時折漏れ出た言葉は痛い、とかやめて、だったと思う。まぁ僕も正直余裕などなかったからそんな悲痛な言葉に耳を貸してやることは出来なかったけれど。


『…なん、で…?何で、こんな…っ』


やっと絞り出したのだろう、か細い声で彼女は問う。未だプルプルと体を震わせていた。


「…何で?そんなの、君は僕のものだからに決まってるでしょ」


僕だって優しさはあるから、仲間達と旅をすることくらいは許してあげる。やっぱり僕はこの子の笑顔が何よりも好きだし、仲間といることでもっと笑ってくれるなら2人きりで生きる人生は後回しにしてもいい。




…でも、




太陽に光る髪も、優しい手も、明るい声も、暖かい瞳も、頬を流れる涙すらも、僕のものだ。

この子を甘やかし、守るという最高の役目をあんなヤツに盗られてたまるものか。

一線を越えてしまった以上、もう邪魔はさせない。

邪魔すると言うのなら自分の立場を分からせてやる。たとえどれだけ仲間が増えようとも、この子のパートナーは僕だ。一番は、僕だ。


僕以外見ることは許さない。

僕の傍から離れることも許さない。

誰にも、渡さない。


「君と蒼刃達は違う。でも僕と君は死ぬまで…いや、死んでからだって、ずーっと一緒でしょ?」



…あれ?どうしたのヒナタちゃん、そんなに震えて。寒いの?だったら僕が暖めてあげる。

僕は優しく微笑んで、再び流れ落ちた涙を舐め取りもう一度強く抱き締めた。

僕ヒナタちゃんに抱き締められるのが好きだったんだけど…でもまぁこっちもいいかな。


あぁ、今日からはまたグッスリと眠れるよ。




この抱き締める腕はまるで、
(君を繋ぎ止める首輪のようだ)



end




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