連載番外編 | ナノ







※嵐志加入前です。







「おいヒナタ…とっとと注げ」

『もー…いい加減やめ「顔面にかえんほうしゃ喰らわせてやろうか」喜んで注がせて頂きます!!』


ここはポケモンセンターのとある一室…時刻は24時ちょうど。良い子はおろか多くの人は寝静まる時間だ。

それなのにあたしは何故かこうして紅矢に延々とお酒を注がされている…。

あぁ、どうしてこうなったんだろう。



事は1時間半ほど前に遡る――――。



−−−−−−−−−−−



「酒が飲みてぇ」

『はい?』


あたし達は旅の途中で立ち寄った街のポケモンセンターで一夜を過ごそうとしていた。夜も深く、元々アイラブ睡眠な雷士は勿論、早寝早起の蒼刃、夜更かしが苦手な疾風は既に夢の中。

あたしだって夕飯も食べてお風呂にも入り、寝支度を整えようと言う所だった。

明日の着替えを用意していた時、背後からヌッと現れた紅矢が放ったのが先ほどの一言である。


『いやいや、お酒なんて無いよ?ていうかあたし未成年だし買えないって』

「あ?んなこたぁ知ってるっつーの。だからテメェの代わりに俺がこうして買ってきたんだろうが」

『うわぁあああそういう時はノリノリで動くんですね紅矢様!!』

「文句あんのか」

「ありません」


お酒が入ったコンビニの袋をぶら下げ睨み付ける紅矢はもう本当のヤンキーにしか見えない。ていうか結構量あるし…大丈夫なのかな?


『…まぁ飲むのはいいけど、きちんと後始末はしてね?それと皆の安眠妨害はしない事!』

「何言ってやがる、テメェも付き合うんだよ」

『え、』


…何か今死の宣告をされた気がする。


放心状態のあたしの腕を掴み、ずるずると引きずる横暴キング。ちょ、あたしの意思は無視かい!いつもだけど!



「おら、座れ」

『っ!』


リビングへと連れて行かれ、皮のソファに沈まされるあたしの体。次いで紅矢も隣りに腰掛けその長い足を組む…そのふてぶてしい姿は正しく王様だ。


「ん、」


ん、って…。グラスをあたしの目の前に突きつけ、早く注げオーラ全開の紅矢。もうこうなったらあたしは諦めるしかなかった。



…そして冒頭に戻る。




『紅矢…お酒に強いのは分かるけど絶対飲みすぎだって。明日に響いても知らないよ?』

「うるせぇ…俺の勝手だろうが。おら、次」


全くこのワガママ大王め…!二日酔いになっても面倒見てあげないからね!?

…とは怖くて口には出来ない意気地なし。

あたしはお酒なんて飲んだ事ないから、紅矢が今飲んでるものがどんな味がするかなんて分からない。

けれど紅矢らしく、時折フワリと漂うフルーティな甘い香りが鼻孔をくすぐる。


(紅矢ってお酒も甘いのが好きなんだ…)


昔も何度かハル兄ちゃんや斉がお酒を飲む時にお酌をした事はあるけど、ここまで飲んだりはしなかった。きっと子供のあたしを気遣ってくれてたんだろうな。

…あ、そういえば1度樹がベロベロに酔っ払って大暴れした時に澪姐さんに手痛い制裁加えられてたっけ。いやーあの時の澪姐さんは恐ろしかったな…。







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