※フライゴンに進化した直後くらいのお話
どうしてだろう。タワーオブヘブンでの一件以来、マスターのことを見ると何故だかムズムズする気がする。話すと体の中から熱くなってくるし、心臓がばくばく煩いのに…でも決して嫌な感じではなくて、とにかくおかしな気分なんだ。
今だって気付けばマスターのことを目で追っていて、その言動1つ1つに反応しては顔が緩んでしまっている。あぁ、マスターって甘い物を食べる時は本当に幸せそうだなぁ。ボク、人間の表情があんなにクルクル変わるなんて知らなかったよ。
最初に言った通り、マスターのことを見ると胸の奥の方がムズムズする。でも、それと同時にぽかぽか暖かくなるような優しい感じもして嫌じゃない。だから、ボクはこの気持ちは好き。
ただ困るのは…ずっとこの感情だけではいられないこと、かな。
(…あぁ、また、だ)
目の前で嵐志がマスターにちょっかいをかけている。邪魔しないで、というマスターの言葉を意に介さず、彼女の柔らかそうな髪を撫でていた。すると次に蒼刃がやってきて、嵐志に強烈なパンチを浴びせる。それで嵐志は苦笑いを浮かべつつ退散したけれど、今度は蒼刃がマスターの手を握り締めて、俺がお守りしますと言葉をかけた。
分かってる。これがいつもの光景だ。嵐志も蒼刃もマスターのことが大好きだから、こうやって構ったり守ろうとしたりする。ううん、2人だけじゃなくて、他の仲間達や勿論ボクだってそう。みんなみんなマスターが好きで、マスターの周りにはいつも誰かがいる。それが当たり前…なんだけど。どうしてなのか、最近は妙にモヤモヤしてしまう。
これって変だよね?だってボクは雷士達のことも好きなのに…。大切な仲間が大切なマスターと仲良くしているのって、すごく良いことだと思うのに。それなのに、誰かがマスターの傍にいると、胸がギュウって締め付けられて苦しくなってしまうんだ。
つい先日にも、物知りな氷雨に理由が分かるか聞いてみたけれど、こればかりは自分で考えなさいと言われてしまった。いつもだったらどんなことでも教えてくれるのに…。でも、それだけボクにとって重要な問題ということなのかな。
『疾風?』
「っ!」
『どうしたの?何だかぼーっとしてたみたいだけど…』
不意にマスターがボクの顔を覗き込んできて、カッコ悪いけど思いきり驚いてしまった。それでも何とか大丈夫と返すと、マスターはふんわりと優しく笑ってくれる。するとどうだろう、ついさっきまでモヤモヤしていた気持ちが晴れて、途端に嫌じゃないドキドキへと変わっていった。やっぱりマスターは凄いなぁ。一瞬でボクの気持ちを変えてしまうのだから。
…と、そこまで考えたところで、先程まで一緒にいた蒼刃もこの場からいなくなっていることに気付いた。
「あ、あれ?蒼刃は?」
『外を走ってくるって言って出て行ったよ。蒼刃もたまにはゆっくり休めばいいのにね!』
そ、そうなんだ…。雷士と紅矢と氷雨はまだジョーイさんに回復してもらっている最中だし、嵐志はさっきのやり取りのあと出かけてしまったみたいだから…今はボクとマスターの2人きり。それを実感して更に胸の鼓動が激しさを増した。
(別に、今までだって2人きりになったことはあるのに…。ボク、本当にどうしたんだろう。嬉しいのに、それだけじゃないような…複雑な気持ちだ)
お母さん相手にはこんな風にならなかった。だったら、やっぱりマスターが特別なのかな?
ボクと向かい合わせに座っているマスターのことをチラリと盗み見る。…うん、可愛い。でもそんなの、出会って間もない時から思っていたことだ。なのに、その頃よりも今の方がずっと可愛いと感じる。
どうして?こんな風にマスターのことを見るとふわふわしてドキドキするのに、さっきのような仲間とのやり取りを思い出すとキリキリと胸が痛くなってしまう。ボクはどうすればいいんだろう。分からない、分からないよ、マスター。大好きなのに苦しいなんて、こんな気持ちは初めてだから。
早く早く、見つけたい。この思いの答えを。
『…疾風、本当に大丈夫?何だか辛そうに見えるけど…』
「え…?」
マスターがとても心配そうにボクを見つめていた。どうやら気付かないうちに泣きそうな顔になっていたようだ。
(違うよマスター、そんな顔をさせたいわけじゃない)
自分が情けなくて悔しくなる。今のボクでは、ただの大好きという言葉すら上手く伝えられないから。でも、マスターを心配させたくない。
…だから、
「何でもないよ、マスター」
そう言って笑えただけ、救いだと思った。
この止まらない気持ちを教えて
(キミを困らせてしまう、その前に)
どうしてだろう。タワーオブヘブンでの一件以来、マスターのことを見ると何故だかムズムズする気がする。話すと体の中から熱くなってくるし、心臓がばくばく煩いのに…でも決して嫌な感じではなくて、とにかくおかしな気分なんだ。
今だって気付けばマスターのことを目で追っていて、その言動1つ1つに反応しては顔が緩んでしまっている。あぁ、マスターって甘い物を食べる時は本当に幸せそうだなぁ。ボク、人間の表情があんなにクルクル変わるなんて知らなかったよ。
最初に言った通り、マスターのことを見ると胸の奥の方がムズムズする。でも、それと同時にぽかぽか暖かくなるような優しい感じもして嫌じゃない。だから、ボクはこの気持ちは好き。
ただ困るのは…ずっとこの感情だけではいられないこと、かな。
(…あぁ、また、だ)
目の前で嵐志がマスターにちょっかいをかけている。邪魔しないで、というマスターの言葉を意に介さず、彼女の柔らかそうな髪を撫でていた。すると次に蒼刃がやってきて、嵐志に強烈なパンチを浴びせる。それで嵐志は苦笑いを浮かべつつ退散したけれど、今度は蒼刃がマスターの手を握り締めて、俺がお守りしますと言葉をかけた。
分かってる。これがいつもの光景だ。嵐志も蒼刃もマスターのことが大好きだから、こうやって構ったり守ろうとしたりする。ううん、2人だけじゃなくて、他の仲間達や勿論ボクだってそう。みんなみんなマスターが好きで、マスターの周りにはいつも誰かがいる。それが当たり前…なんだけど。どうしてなのか、最近は妙にモヤモヤしてしまう。
これって変だよね?だってボクは雷士達のことも好きなのに…。大切な仲間が大切なマスターと仲良くしているのって、すごく良いことだと思うのに。それなのに、誰かがマスターの傍にいると、胸がギュウって締め付けられて苦しくなってしまうんだ。
つい先日にも、物知りな氷雨に理由が分かるか聞いてみたけれど、こればかりは自分で考えなさいと言われてしまった。いつもだったらどんなことでも教えてくれるのに…。でも、それだけボクにとって重要な問題ということなのかな。
『疾風?』
「っ!」
『どうしたの?何だかぼーっとしてたみたいだけど…』
不意にマスターがボクの顔を覗き込んできて、カッコ悪いけど思いきり驚いてしまった。それでも何とか大丈夫と返すと、マスターはふんわりと優しく笑ってくれる。するとどうだろう、ついさっきまでモヤモヤしていた気持ちが晴れて、途端に嫌じゃないドキドキへと変わっていった。やっぱりマスターは凄いなぁ。一瞬でボクの気持ちを変えてしまうのだから。
…と、そこまで考えたところで、先程まで一緒にいた蒼刃もこの場からいなくなっていることに気付いた。
「あ、あれ?蒼刃は?」
『外を走ってくるって言って出て行ったよ。蒼刃もたまにはゆっくり休めばいいのにね!』
そ、そうなんだ…。雷士と紅矢と氷雨はまだジョーイさんに回復してもらっている最中だし、嵐志はさっきのやり取りのあと出かけてしまったみたいだから…今はボクとマスターの2人きり。それを実感して更に胸の鼓動が激しさを増した。
(別に、今までだって2人きりになったことはあるのに…。ボク、本当にどうしたんだろう。嬉しいのに、それだけじゃないような…複雑な気持ちだ)
お母さん相手にはこんな風にならなかった。だったら、やっぱりマスターが特別なのかな?
ボクと向かい合わせに座っているマスターのことをチラリと盗み見る。…うん、可愛い。でもそんなの、出会って間もない時から思っていたことだ。なのに、その頃よりも今の方がずっと可愛いと感じる。
どうして?こんな風にマスターのことを見るとふわふわしてドキドキするのに、さっきのような仲間とのやり取りを思い出すとキリキリと胸が痛くなってしまう。ボクはどうすればいいんだろう。分からない、分からないよ、マスター。大好きなのに苦しいなんて、こんな気持ちは初めてだから。
早く早く、見つけたい。この思いの答えを。
『…疾風、本当に大丈夫?何だか辛そうに見えるけど…』
「え…?」
マスターがとても心配そうにボクを見つめていた。どうやら気付かないうちに泣きそうな顔になっていたようだ。
(違うよマスター、そんな顔をさせたいわけじゃない)
自分が情けなくて悔しくなる。今のボクでは、ただの大好きという言葉すら上手く伝えられないから。でも、マスターを心配させたくない。
…だから、
「何でもないよ、マスター」
そう言って笑えただけ、救いだと思った。
この止まらない気持ちを教えて
(キミを困らせてしまう、その前に)
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