ハルマ家のとある日、自室でムクホークの昴は手の中にあるモノを穴が空くのではないかというくらいに見つめていた。


(…っが、頑張れ、オレ!今日こそはアイツに…!)

『あれー?どうしたの昴。何ジッと見てるの?』

「うわあぁああ!!??」

『えぇえビックリしたぁああ!!え、何!?そんな驚く事ないじゃん!』

「ばばば、ばっかヤロー!!いきなり入ってくんじゃねーよヒナタ!」

『ご、ゴメンって…だからそんな涙目にならないでよ。あたしがイジメてるみたいじゃん…』


はた、と。昴は思った。


(これは…チャンスなんじゃないのか?)


意中の女の子と密室(※鍵はかかっていません)で2人きり…。これは…これは、告白するには最高のシチュエーションじゃないか!と。

グッと手の中のモノを握り直す。そう、昴はヒナタに告白する為に以前ヒナタが欲しがっていたアクセサリーを購入したのだ。

ツンデレ街道まっしぐらの彼にとってはかなりの成長である。それもこれも、自分より後に加入したライバルが原因であるのだが。

だが今そいつはいない。ここで決めるしかない!


「ひ、ひっ、ヒナタ!!」

『おわぁ!?な、何!?』


がっしりとヒナタの腕を掴みこちらへと向かせる。彼女の琥珀色の瞳は今自分だけを映している…何と幸せな事か。

…だがやはり彼はツンデレだった。


「―――っん、んなジッとこっち見てんじゃねぇよバーカ!!」

『いや理不尽!理不尽じゃないちょっと!?』


自分で向かせておきながら何たる仕打ち…とヒナタはうなだれる。だが今日こそはとやる気の昴、慌てて気を取り直す。


「い、いや…違うんだ。そ、その…オレ、オレは…オレは、お前が!好「天誅―――っ!!」ぅおぁっ!?」

『昴ぅううう!?』


ズザァアッとフローリングの床を滑って転がった昴。彼に跳び蹴りをかました犯人は今最も会いたくない男だった。


「ハーッハッハ!ざまぁみろや昴!ワイを出し抜こうたってそうはいかへんでぇ!」

「て、んめぇ…樹ぃいい!!やんのかコラァ!相性でいったらオレの方が有利なんだからな!?」

『ちょ、何だ何だどうして喧嘩が始まった』


颯爽とドアを蹴破りついでに昴も吹っ飛ばしたのはジュカインの樹。彼もヒナタに思いを寄せる一人である。


「おうコラ昴…誰の許可取ってお嬢に告白なんぞしようとしてんねん。ワイに黙ってとか絶対許さへんぞ」

「な、ん、で、誰かの許可がいるんだよ…!つぅかお前にだけはぜってぇ言わねぇからな」


お互いの胸倉を掴み小さな声で牽制しあう二人。勿論ヒナタには聞こえていない為何を言い合っているのかは分からない。


(おぉ…!何だかんだ仲良いなぁ、男同士の友情ってのは激しいんだね!)


などと思われているからご愁傷様である。


「おーいヒナタ、斉が新作お菓子が出来たから味見しないかって言っているよ」


開けっ放しのドアから顔を覗かせたのは家主のハルマ。30歳を過ぎているとは思えない童顔学者だ。


『本当!?わーい行く行く!』


哀れ、二人の争いの原因であるヒナタはお菓子に釣られ去ってしまった。その事に気付かない樹と昴は未だ言い争っている。


「やれやれ、今度は何で喧嘩して…ん?」


ハルマは足下に転がっていた小箱を拾い上げた。中を開けると可愛らしいアクセサリー。


「…ねぇ、コレは何だい?」

「あぁ!?それはヒナタに告白する為わざわざ買ったモンだよ!」

「何やとぉ!?ツンデレの癖に抜け目無いとこが腹立つねん!」


ピキッ、室内の空気が凍る。さすがに異変を感じた2人の争いも止まった。


「げ…っは、ハルマ!?いつの間に…!」

「…ふふ、ヒナタに告白とはどういう事かな?この僕に一から十までしっかり説明して貰おうじゃないか。事と次第によっては…分かるよね?」


ニッコリと微笑むハルマの後ろには般若が見える。昴と樹の額に冷たいモノが流れた。


「か、堪忍してや旦那ぁあああ!!」





『あれ、何か今樹の悲鳴聞こえなかった?』

「はは、どうせまた何かやらかしたんだろう。気にせずどんどん食え」

(本当バカね…)


ヒナタが絡んだ時のハルマの恐ろしさを改めて知った2人なのでした。


end

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