ボク達は、マスターのことが大好きだ。
『ひょあっ!?』
「姫さーん!今日こそオレと一緒に風呂入、へぶっ!?」
「そこに直れ変態狐ぇえええ!!ヒナタ様へのふしだらな言動は許さん!!」
「ちょ、そーくんマジ過ぎ…!でもよー、そーくんだって姫さんのハダカ見てーだろ?」
「なっ…!?ば、馬鹿を言うな!!この俺に限ってそんな…!」
「おやおや、どうでしょうねぇ…?ヒナタ君のシミ1つない健康的で柔らかな肌…年相応な顔付きにそぐわず出る所は出ている魅惑の体つき…未だ誰の侵入も許していない【自主規制】…本当に蒼刃は見たくないのですか?」
「―――……っ!!やっ…やめろ貴様らぁあああ!!」
『ちょ、何事何事!?蒼刃に何言ったの2人共!?』
あ、あはは…良かった、マスターには聞こえなかったみたい。ポケモンは人よりも耳が良いから、ボクは聞こえちゃったけど…。
ボク達は今ポケモンセンターの外にあるフィールドで、バトルの特訓をしていた。ひとしきり終わって休もうとしてたんだけど…それにしても、嵐志は相変わらずマスターを後ろからギュッてするの、好きだなぁ。
蒼刃はそんな嵐志からマスターを守って、でも氷雨にからかわれてる。それで最後には、いつもあぁやって暴れ出しちゃうんだよ、ね。
嵐志と氷雨はからかうのが好きだから、蒼刃の反応が楽しいみたい。氷雨が一番からかって喜んでるのは、マスターだけど。
『ら、雷士!お願いとめて!』
〈無理、眠い、お休み〉
『安定の傍観!?』
くぁあ、と大きな欠伸をしてぱたりと倒れちゃった雷士。も、もう寝ちゃってる…雷士って、こういう面倒くさそうなことには極力関わらないんだよね…。
マスターは…すごく悩んでる顔してる。きっと頼もうか頼まないか、ぐるぐる考えてるんだろうなぁ。でも結局、意を決したように声をかけた。
『こ、紅矢!ケンカの仲裁とプリンを取引しませんか!』
「あぁ?くだらねぇ…プリンだけ寄越せ」
『ちょ、それじゃ意味ないじゃん!』
「はっ」
もーっ!ってなってるマスターを見て、鼻を鳴らして笑った紅矢。そのまま木陰に移動して、どこから取り出したのかぽりぽりポッキーを食べ始めた。うーん…雷士よりはマシだけど、紅矢もあんまり好んでは関わらないんだ。
その内マスターは諦めたみたいで、ヨロヨロと芝生に座っていたボクの所へやってきた。…ん?ボクの所…?
『疾風ぇ〜…っもうあたしには君しかいない!』
「う、わぁ!?」
ゆっくり手を広げて近付いてきたと思えば、マスターはギュウッてボクに抱き付いてきた。何度もマスターには抱き付かれたことあるけど、いつもマスターからはお腹の奥がウズウズするような甘いニオイがして、ドキドキしちゃうのは内緒なんだ。
『あー…疾風の傍が一番平和だよ…』
「あはは…お疲れ様、マスター」
ボクの隣に座り直したマスターは眉を下げて溜め息を吐く。そんなマスターの頭を、いつもマスターがしてくれるみたいに撫でたら、マスターは嬉しそうに笑ってくれた。
『あは、疾風は優しいね!ドSトリオも疾風くらい優しかったらいいのになぁ』
「そ、そうかな?紅矢も氷雨も、皆マスターには優しいよ?」
『いーやそれはない!だってヤツらはあたしをイジメてる時超笑顔だもん!』
それは、好きな子ほどイジメたいってヤツだって氷雨が言ってたけど…マスターは気付いてないみたい。
(…気付かれるのも、イヤ、だけど…)
それは臆病なボクのワガママ。嵐志や蒼刃みたいに自分からマスターに向かってはいけなくて、こうして心の中で祈るだけ。どうしてだろう、強くなりたいからバトルは積極的に出来るのに。どうして、マスターには積極的に出来ないのかな。
(この、幸せで平和な関係を、壊したくないからかな?)
ボクはきっと、今の何かが壊れてしまうのが、怖いんだ。…でも、でもそれじゃいつか、マスターが…。
「あ――ってっちゃんずりー!!何姫さんの隣陣取ってんだよ!!」
『ひぇ!?み、見つかった!』
「おや…そう言えばヒナタ君は疾風には自分から寄っていきますよね。全く、僕達と何が違うのでしょう?」
『根本的な部分だと思うよ氷雨様!』
氷雨の何気ない言葉に、ボクはハッとした。…そうだ、マスターは…、
(マスターが、自分から抱き付くのは…ボクだけ、だ)
思い返してみれば、マスターは抱き付かれることはいっぱいあっても、自分から抱き付くのは殆どなかったと思う。でも…ボクには、いつも笑って抱き付いてくれた。
それを理解した瞬間、ボクは胸がとっても熱くなった。顔にも熱が伝わって、自然と口元が緩む。…そう、だよね…諦めるのは、早いんだ。
「…マスター、行こう!」
『へ?』
突然立ち上がり、フライゴンの姿に戻ったボクを見て、マスターがビックリしてる。そんなマスターにクスリと笑ったボクは、翼が邪魔にならないよう下ろして腰を曲げた。
『え、あの、どうしたの疾風?』
〈えへへ、乗ってマスター!マスターのこと、守るから!〉
いまいち状況が理解出来ないまま、ボクの背中に乗るマスター。そしてボクはマスターが落ちないように、ゆっくりと飛び上がった。
「は、疾風!?何をする気だ!」
〈ゴメンね蒼刃、マスターは、ボクがもらうよ!〉
「ほう、通常ドラゴンは姫を攫う悪者ですが…疾風の場合は囚われの姫を救い出すドラゴン、という訳ですか」
「冷静に言ってる場合じゃねーだろさめっち!?お、おいこーちゃんも来いって!姫さんがてっちゃんに連れ去られるー!」
「あぁ…?ちっ、疾風…イイ度胸じゃねぇか」
う、やっぱり紅矢はちょっと怖いなぁ…でも、ボクだって負けない。聞こえないフリをして、氷雨達の技も届かない位置まで上昇した。
『わぁ…!高いね疾風!』
〈もっともっと、飛べるよ!〉
ボク達を見て大騒ぎしてる蒼刃達と、気持ち良さそうに熟睡してる雷士。そしてボクの背中で楽しそうに笑うマスター。
ボクの大好きな、平和な光景。とってもとっても、幸せ。
…でも、マスターを独り占め出来たなら…きっと、もっと幸せだよね!
〈マスター、このまま景色の綺麗な所まで行こう!〉
『うん!』
ボクはマスターと視線を交わせ笑い、よく晴れた大空を飛び立った。
平和っていいね
(でも、君が絡めば話は別、だよ?)
『ひょあっ!?』
「姫さーん!今日こそオレと一緒に風呂入、へぶっ!?」
「そこに直れ変態狐ぇえええ!!ヒナタ様へのふしだらな言動は許さん!!」
「ちょ、そーくんマジ過ぎ…!でもよー、そーくんだって姫さんのハダカ見てーだろ?」
「なっ…!?ば、馬鹿を言うな!!この俺に限ってそんな…!」
「おやおや、どうでしょうねぇ…?ヒナタ君のシミ1つない健康的で柔らかな肌…年相応な顔付きにそぐわず出る所は出ている魅惑の体つき…未だ誰の侵入も許していない【自主規制】…本当に蒼刃は見たくないのですか?」
「―――……っ!!やっ…やめろ貴様らぁあああ!!」
『ちょ、何事何事!?蒼刃に何言ったの2人共!?』
あ、あはは…良かった、マスターには聞こえなかったみたい。ポケモンは人よりも耳が良いから、ボクは聞こえちゃったけど…。
ボク達は今ポケモンセンターの外にあるフィールドで、バトルの特訓をしていた。ひとしきり終わって休もうとしてたんだけど…それにしても、嵐志は相変わらずマスターを後ろからギュッてするの、好きだなぁ。
蒼刃はそんな嵐志からマスターを守って、でも氷雨にからかわれてる。それで最後には、いつもあぁやって暴れ出しちゃうんだよ、ね。
嵐志と氷雨はからかうのが好きだから、蒼刃の反応が楽しいみたい。氷雨が一番からかって喜んでるのは、マスターだけど。
『ら、雷士!お願いとめて!』
〈無理、眠い、お休み〉
『安定の傍観!?』
くぁあ、と大きな欠伸をしてぱたりと倒れちゃった雷士。も、もう寝ちゃってる…雷士って、こういう面倒くさそうなことには極力関わらないんだよね…。
マスターは…すごく悩んでる顔してる。きっと頼もうか頼まないか、ぐるぐる考えてるんだろうなぁ。でも結局、意を決したように声をかけた。
『こ、紅矢!ケンカの仲裁とプリンを取引しませんか!』
「あぁ?くだらねぇ…プリンだけ寄越せ」
『ちょ、それじゃ意味ないじゃん!』
「はっ」
もーっ!ってなってるマスターを見て、鼻を鳴らして笑った紅矢。そのまま木陰に移動して、どこから取り出したのかぽりぽりポッキーを食べ始めた。うーん…雷士よりはマシだけど、紅矢もあんまり好んでは関わらないんだ。
その内マスターは諦めたみたいで、ヨロヨロと芝生に座っていたボクの所へやってきた。…ん?ボクの所…?
『疾風ぇ〜…っもうあたしには君しかいない!』
「う、わぁ!?」
ゆっくり手を広げて近付いてきたと思えば、マスターはギュウッてボクに抱き付いてきた。何度もマスターには抱き付かれたことあるけど、いつもマスターからはお腹の奥がウズウズするような甘いニオイがして、ドキドキしちゃうのは内緒なんだ。
『あー…疾風の傍が一番平和だよ…』
「あはは…お疲れ様、マスター」
ボクの隣に座り直したマスターは眉を下げて溜め息を吐く。そんなマスターの頭を、いつもマスターがしてくれるみたいに撫でたら、マスターは嬉しそうに笑ってくれた。
『あは、疾風は優しいね!ドSトリオも疾風くらい優しかったらいいのになぁ』
「そ、そうかな?紅矢も氷雨も、皆マスターには優しいよ?」
『いーやそれはない!だってヤツらはあたしをイジメてる時超笑顔だもん!』
それは、好きな子ほどイジメたいってヤツだって氷雨が言ってたけど…マスターは気付いてないみたい。
(…気付かれるのも、イヤ、だけど…)
それは臆病なボクのワガママ。嵐志や蒼刃みたいに自分からマスターに向かってはいけなくて、こうして心の中で祈るだけ。どうしてだろう、強くなりたいからバトルは積極的に出来るのに。どうして、マスターには積極的に出来ないのかな。
(この、幸せで平和な関係を、壊したくないからかな?)
ボクはきっと、今の何かが壊れてしまうのが、怖いんだ。…でも、でもそれじゃいつか、マスターが…。
「あ――ってっちゃんずりー!!何姫さんの隣陣取ってんだよ!!」
『ひぇ!?み、見つかった!』
「おや…そう言えばヒナタ君は疾風には自分から寄っていきますよね。全く、僕達と何が違うのでしょう?」
『根本的な部分だと思うよ氷雨様!』
氷雨の何気ない言葉に、ボクはハッとした。…そうだ、マスターは…、
(マスターが、自分から抱き付くのは…ボクだけ、だ)
思い返してみれば、マスターは抱き付かれることはいっぱいあっても、自分から抱き付くのは殆どなかったと思う。でも…ボクには、いつも笑って抱き付いてくれた。
それを理解した瞬間、ボクは胸がとっても熱くなった。顔にも熱が伝わって、自然と口元が緩む。…そう、だよね…諦めるのは、早いんだ。
「…マスター、行こう!」
『へ?』
突然立ち上がり、フライゴンの姿に戻ったボクを見て、マスターがビックリしてる。そんなマスターにクスリと笑ったボクは、翼が邪魔にならないよう下ろして腰を曲げた。
『え、あの、どうしたの疾風?』
〈えへへ、乗ってマスター!マスターのこと、守るから!〉
いまいち状況が理解出来ないまま、ボクの背中に乗るマスター。そしてボクはマスターが落ちないように、ゆっくりと飛び上がった。
「は、疾風!?何をする気だ!」
〈ゴメンね蒼刃、マスターは、ボクがもらうよ!〉
「ほう、通常ドラゴンは姫を攫う悪者ですが…疾風の場合は囚われの姫を救い出すドラゴン、という訳ですか」
「冷静に言ってる場合じゃねーだろさめっち!?お、おいこーちゃんも来いって!姫さんがてっちゃんに連れ去られるー!」
「あぁ…?ちっ、疾風…イイ度胸じゃねぇか」
う、やっぱり紅矢はちょっと怖いなぁ…でも、ボクだって負けない。聞こえないフリをして、氷雨達の技も届かない位置まで上昇した。
『わぁ…!高いね疾風!』
〈もっともっと、飛べるよ!〉
ボク達を見て大騒ぎしてる蒼刃達と、気持ち良さそうに熟睡してる雷士。そしてボクの背中で楽しそうに笑うマスター。
ボクの大好きな、平和な光景。とってもとっても、幸せ。
…でも、マスターを独り占め出来たなら…きっと、もっと幸せだよね!
〈マスター、このまま景色の綺麗な所まで行こう!〉
『うん!』
ボクはマスターと視線を交わせ笑い、よく晴れた大空を飛び立った。
平和っていいね
(でも、君が絡めば話は別、だよ?)
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