ある日、私と晴琉くんは足りなくなった道具を買い足しに近くのフレンドリーショップまできていた。
澄ちゃんと灯李はみたいテレビの番組があったみたいでお留守番。荷物持ちとして晴琉くんがついてきてくれることに。

「あ、お客さん!福引き1回できますので、外にテントがありますんで、係にチケット渡してくださいね!」
「福引き?」
「いい商品当たるといいですね、ご利用ありがとうございました。」

レジのお兄さんにお釣りと一緒に渡された福引きチケット。そういえば店内にポスターが貼ってあった気がする。

「晴琉くん回す?」
「いや、チサトが回せよ。折角だ、いい商品当ててくれよ。」
「いい商品って言われてもなぁ……。」

福引きの会場近くに着くとなかなか賑わっているよう。大きく刷られたポスターを貼り付けた立て看板にはそれぞれ等と商品が書いてある。どれどれ……。

「あ!みて!4等は全国のショップで使える商品券だよ!これが当たったら1番いいかも!」
「……、お前はとことん主婦目線だな……。」

失礼な!でもこの時しっかりとすべての賞を見ておけばよかったのです。まさかあんなことになるなんて……!

福引きの列に並んで順番を待つ。ちらりと見るとほとんどの人がポケットティッシュだったり、お菓子の詰め合わせだったりと、参加賞程度のものが多いみたい。期待せずに回した方が良さそうだな、なんて考えている内に私たちの番。
テントには係のお姉さんと、彼女のポケモンなのかケーシィがいた。ケーシィは手持ち無沙汰なのかガラガラをつついて揺らしている。

「はいどうぞー!1回ですね!」
「頑張ってポケットティッシュ貰ってこい。」
「もう!晴琉くんのいじわる!」

期待をしないようにガラガラをゆっくり回す。
カラカラカラ……、ポン!キラン!……きらん?

「お、おめでとうございます!1等の直行!イッシュ・ホドモエマーケット特別ご招待!!です!」
「……はい!?」
「まさか1等とはな、やるじゃないか」
「あ、あはは……?」

4等の商品券から下のものばかり見ていたから、まさか1等が当たるなんて思ってもみなかった。盛大にベルを鳴らしていただいて、注目を集めるのは何だか恥ずかしい。それに……。

「あの、私、これ行けないのでお返しします。旅の途中ですし、さすがにイッシュまで行けないですし……。」
「ああ!大丈夫ですよ!今すぐ行ってきてもらえる直行便ですから!」
「おい、それってどういう……。」
「ケーシィ、ようやく出番だよ!さぁいきますよー!ケーシィ、テレポート!!!」
「ちょっ、まっ……!!!」

私たちの抗議の声は、アローラに響くことは無かった。
イッシュでは二重の悲鳴が響くことになってしまったが。



「…えぇぇーーーーー!!!!」
「え、ちょっ、えぇぇーーーーー!?」

突然のテレポートに対処が出来ず腰を抜かした私は着地に失敗してしまった。なんともおしりが痛い。
視界に長い脚がしっかり地面を踏みしめているのを見ると、晴琉くんは無事らしい。良かったけどなんだかくやしい。
ところでなんで悲鳴が二重に……?と辺りを見渡すと、私と同じ様に尻餅をついている女の子が!

「ご、ごめんなさい!大丈夫ですか……?」
「あは、ありがとう!突然現れるからビックリしちゃって……、あなたも大丈夫?」
「はい。私はなんとも……。」
「ならよかった!」
『ヒナタちゃんが勝手に転んだだけだしね。』

キラキラした笑顔で私の心配をしてくれた女の子、オレンジ色の髪が陽の光を浴びてとってもキレイ。
そして女の子の隣には、可愛らしいピカチュウくんが。

「あたしはヒナタ、こっちは相棒のピカチュウで雷士っていうの!」
「はじめまして、私はチサトです。でこっちが……。」
「晴琉、ガブリアスだ。よろしく。」
「チサトちゃんに晴琉さんね!よろしく!で、二人はどうして突然現れたの?」
「それが、どう説明したら……。」
『チサトちゃん、この紙袋、君の?』
「紙袋?雷士くん、見せてもらってもいいですか?」

雷士が"そこに落ちてた"という紙袋には、
【1等 直行!イッシュ・ホドモエマーケット特別ご招待!!への当選おめでとうございます。同封してあるチケットをマーケットで提示することによって様々な物を特別価格でご奉仕いたします。心ゆくまでお買い物をお楽しみください。3時間ほどいたしましたら、ケーシィとお迎えにあがります。マーケットの入り口でお待ちください。】
とのお手紙と、マーケットで使えるチケットが入っていた。

「なるほど、これでなんとなく分かった!突然現れたのはケーシィのテレポートだったんだね!」
「そうみたいです…。ヒナタさんを驚かせてしまってすみません……。」
「そんなそんな!それよりあたしはこうしてチサトちゃんと出会えたことが嬉しいよ!」
「ヒナタさん……!」
「敬語もなしでいいよー!そんなに歳も変わらないもん!」
「じゃあ…ヒナタちゃんで!」

それに、と言葉を止めたヒナタちゃんはちょいちょいと私を手招いた。耳を貸してってことかな?

「さっきチサトちゃん、雷士の言葉分かってたでしょ?」
「!!な、何でそれを……!」
「実はあたしもなの。同じようなチカラを持った子に逢えるなんて思ってもみなかったからビックリしちゃった!」
「ヒナタちゃん……。」
「こんな偶然滅多にないもん!良かったらお友達になってください!」
「!こ、こちらこそ!よろしくね!」

まさか旅行?先でこんなに可愛いお友達が出来るなんて思ってもみなかった!すっごく嬉しいなぁ!

「そういえばヒナタちゃんはどうしてここに?」
「あ、うん!買い物に!他の仲間は近くのポケセンで留守番してくれてるんだ。」
「じゃあ一緒に行きません?何だかこのチケットがあれば安く買えるみたいだし!」
「本当に?ありがとうチサトちゃん天使!」
「はわわ!!」

こうして私とヒナタちゃんは一緒にお買い物をすることになりました!天使といってハグしてくるヒナタちゃんに嬉し恥ずかしです。天使はヒナタちゃんだと思うけどなぁ。

ピカチュウの雷士くんもいつの間にか人に化けていたようで、毛先の黒い金髪の優しげな目をした美少年が晴琉くんとお話をしていた。うん、絵になるね。
会話の内容までは聞こえないけれど、晴琉くんがチラッとこちらを見てため息をついていた気がする。うん、これはからかわれてる気がする。ひどいんだから!
雷士くんも同じ様にチラッとヒナタちゃんを見ていたけれど、なんだかとっても優しい顔をしていて、雷士くんがヒナタちゃんを大切にしてるんだなぁというのが見てわかった。もしかして……?


それぞれ仲良くなれたところで時間は有限、お買い物しましょう!ということに!
私たちが落ちた場所から30秒も歩かず見えてきたのは大きな大きなマーケット!お祭りの露天商みたいにお店がぎゅうぎゅう集まっている。その中には色んなきのみやお香などポケモンのためのお店もあれば、アクセサリーなどの雑貨屋さんまで。なんだかとっても楽しそう!

目をキラキラさせた私とヒナタちゃんとは反対に男子組はげんなりしている。そっか、女の子の買い物って男の子には長く感じちゃうんだっけ。

「晴琉くんはお外で待ってる?」
「雷士も頭の上で寝ててもいいよ?」
「いや、ついて行くさ。」
「僕も。ヒナタちゃん後先考えずに買いまくりそうだからストッパー。」
「う、否定はできないけど失礼だよ!」
「あはは、じゃあ二人もなにか欲しいものあったら声掛けてね!」

お買い物はとっても楽しかった。普段は高くて手を出せないお香なんかもあのチケットのお陰で半額以上割引になっていたし、雑貨やお洋服を売っていた場所ではヒナタちゃんとお互いに似合いそうなものを勧めあったりした。なんといっても色々なきのみが新鮮に安く手に入って、晴琉くんに「これ以上は流石に俺も持ちきれないぞ」と苦笑されてしまった。

「僕達飲み物買ってくるから。」
「そこで待ってろよ。」

買い物を満喫し、お迎えが来るまであと30分ほど、あとはのんびりお茶をしようということで、私たちは外のベンチに来ていた。
座るベンチの横にはたくさんの買い物袋。持って帰るのがちょっと大変そうだけど、開けるのが楽しみ。

いっぱい買ったねー、なんてヒナタちゃんと談笑していると大きなの影が私たちを覆った。

「ねえ君たち二人?ならオレらと遊ばね?」
「てか君たちチョーかわいいじゃん!」
「いや、私たちは……。えっと、困ります…。」
「人を待ってるんです!ごめんなさい!」
「えー友達待ち?じゃあその子も合わせて遊べばいいよ、ほら荷物もってあげるからさ!」

横に置いてあった買い物袋と腕をつかまれて唖然。ヒナタちゃんを見れば、同じ様に強引に捕まれて眉間にシワが寄っている。どうしよう、怖い!

「あの、ほんと困ります!」
「やめてください!!」

「そう、その子僕のだから、手ぇ出さないでくれる?」
「俺のに、汚い手で触らないでくれるか?」

目に涙が浮かんできたその時、掴まれていた腕は離され、変わりに肩を抱いたのは安心する体温と声。
ヒナタちゃんも雷士くんに抱きしめられ、痛そうだった手も離してもらっている。

「不愉快だから消えてくれる?それとも消されたい?」
「これ以上関わるのであれば……、わかるな?」

二人から出る威圧感に負けたのか、男の人たちはバツの悪そうに走っていった。

「晴琉くん!」
「ごめんなチサト、怖かったろ。」
「ううん、晴琉くんが来てくれたからもう怖くないよ。」

「雷士!あ、ありがとう!」
「いいよ無事なら、てかなんで僕のこと呼ばないのバカなの頭空っぽなの。」
「ごめんなさい!ごめんなさいってば!!」

涙を拭ったせいで目の赤い私と、雷士くんに引っ張られてほっぺの赤いヒナタちゃんは目を合わせてこっそり笑った。


一悶着あったがもうお別れの時間。
「ヒナタちゃん今日はありがとう!また会えたら今度は他の仲間も紹介するね!」
「チサトちゃん!こちらこそいっぱいありがとうだよ!あたしも今度は仲間紹介する!変わってるけど大切な仲間なの!」
「楽しみです!」
「こっちこそ!!」

最後に思いっきりハグをして、私と晴琉くんはお迎えのお姉さんとケーシィの元へ。その前に。私は二人の方にに駆け寄った。

「あ、雷士くんにいっこだけ!」
「……僕に?」
「うん。耳貸してくれますか?」
「……どうぞ。」
「雷士くんってヒナタちゃんのこと大好きなんですね!」
「……なっ!」

キラキラの金髪から覗くお耳が赤く染まったのを見て、私は駆け出した!

「ヒナタちゃん!またね!!」
「チサトちゃんも!またねー!!!」

私たちはテレポートで、アローラへひとっ飛び。

「……あの子、トロそうなくせにやってくれるなぁ。」
「雷士、最後に何話してたの?」
「……ヒナタちゃんにだけは絶対内緒。」
「え!」

そんな会話がされている事もつゆ知らず。
無事にアローラへ戻った私と晴琉くんは、たくさんの買い物袋を手に、澄ちゃんと灯李への謝罪を考えていた。
そういえば、私が雷士くんと話しているとき、晴琉くんもヒナタちゃんと話していた気がしたんだけど気のせいかな?

傾いた夕陽の中、うっかり転がり落ちたきのみを拾うのに精一杯だった私は、晴琉くんの耳が夕陽とは違う理由で赤く染まっていたことに気が付かなかったのである。



end

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