捧げ物 | ナノ





眩しく光り輝く太陽の下、見つめ合う2人の美少年。



「「…」」


…いや、何か喋ろうよ。






『ちょっと彩夢ちゃん…あの子達超沈黙なんですけどかれこれ15分くらい』

「う、うん…どうしたもんかね」


あたしと彩夢ちゃんはそんな雷士と空君をソッと見守っていた。


何故この状況になったのか…それは一時間程前に遡る。



−−−−−−−−−−



あたしはバトル続きだった皆を休ませる為、ポケモンセンターに来ていた。中には既に多くのトレーナーがいて見ただけで混んでいることが分かる。

受付のジョーイさんは案の定大忙しで、代わりにタブンネが声をかけてくれた。このタブンネはどうやらあたしと雷士のやり取りを見ていたらしく、ポケモンと会話が出来ることに気付いていたらしい。


〈混み合っててすみません。回復ですか?〉

『あ、うん!これだけお願いしたいんだけど…』

〈分かりました。この様子だと二時間くらいかかってしまいますが大丈夫ですか?〉

『大丈夫だよ、どこかで時間潰すから!』

そう言ってボールを預けると、最後にタブンネはニコリと笑い一礼して去っていった。



『…か、可愛い…!雷士もあれくらいの可愛げを身に付けてくれたらいいのに…っ』

〈そんなの僕必要としてないし〉

『うん大丈夫、期待はしてないから』


今回睡眠中でバトルに出ていない雷士を連れ、あたしは街でも散策しようと外に出た。うーん…どこか暇潰し出来る所ないかなぁ?


擬人化した雷士と街中を練り歩き、ふとお洒落なカフェテラスを見つけた。おぉ、何かここ可愛いぞ…!


『そうだ雷士、何かデザートでも食べよっか!』

「いいよ、一眠りしたら丁度お腹空いてきたところだし」

よし、雷士君の許可もゲット!ただ甘い物大好きな横暴キングにバレたら血を見ることになるから黙ってよう…。



『わーかき氷だ!暑くなってきたしいいかも…ん?』


ショーウインドウに飾られた色鮮やかなかき氷を眺めていると、隣りでやたら真剣にブルーハワイのかき氷を凝視している金髪君に気付いた。


(…あれ?このお花が似合う美少年って確か…)

うん、見間違いなんかじゃない。この子は…


『空、君?』

「…」


名前に反応したのか、クルリとこちらを向いた彼。うわぁああやっぱりそうだ!この雷士と同じ綺麗なお顔の無表情!


『あ、えっと…あたしのこと覚えてる?前一度会ったことあるんだけど…』

「…日向」

『え?』

「名前、確か日向でしょ」

『…!?ど、どうしよう雷士!!空君あたしのこと覚えてくれてた!あの時は全然絡めなかったら忘れられてると思ってたから超嬉しいよぉおお!!』

「うるさいよヒナタちゃん」


いつもの如く雷士にはバッサリ斬られたけどとりあえず嬉しい。…あれ、そういえば空君何かちょっと違う感じであたしのこと呼んだ気がする。雷士や皆に呼ばれるのとは別なような…気のせい、かな?


あたしがうんうん唸っていると、その様子をジッと見ていた空君が小さく笑った。おぉう…!何々笑うともっと美少年じゃん!


「…よく喋る所、少し彩夢に似てる」

『!』

この場合はあたしが…ということでいいのかな。空君がこれだけ優しく笑ってるんだから、きっといい意味で言ってくれたんだろう。あは、彩夢ちゃんてば愛されてるね!




『…あ、そうだ彩夢ちゃん!ねぇ空君、彩夢ちゃんと藍君は一緒じゃないの?』

「…一緒だったけど、途中でいなくなった。ここどこ」

『ま、迷子…!』


何と、空君は迷子になっていたらしい。確か前も3人で迷子になってたような…おまけに今回は離れ離れとかマズいでしょもっと焦ろう空君!?


(な、何か本当雷士に似てる…絶対仲良くなれると思うんだけど)


ジト目で隣りに立つ雷士を盗み見ると、興味なさそうに欠伸していた。…このマイペースめ。


『まぁとりあえず彩夢ちゃんと藍君探さないと「空ぁああああ!!」ナイスタイミングゥウウ!!』


いや本当ナイスタイミングだよグッジョブ!

人混みを掻き分けるようにして美少年&美少女…もとい藍君と彩夢ちゃんがこちらへ駆け寄ってきた。


「や、やっと見つけた…もう心配したんだよ!?」

「そうだよ空ってば急にいなくなっちゃうんだから!」

「いなくなったのそっちでしょ」

『わーお空君ゴーイングマイウェイか。やっぱり仲良くなれるよウチの雷士君と』

「まぁ同族だしね」


「…ってヒナタちゃん!?ヒナタちゃんだ!」

『わぁあああ彩夢ちゃんも覚えててくれた!!』

あまりの嬉しさに思わず彩夢ちゃんを抱き締めるあたし。…うん、ちょっと変態かもしれない。

でも彩夢ちゃんは一瞬ビックリしてたけどすぐに抱き返してくれた。会いたかったー!と言って笑う彼女は本当に天使です。


「…うん、ヒナタさんなら…許せる」

「ん、」


何か空君と藍君に許されたっぽいけど一体何をだろう?…まぁいいか。


『ねぇ彩夢ちゃん、また迷子になっちゃったの?』

「え、ええと…多分…(本当不思議のダンジョン過ぎるよ!何がどうして本家の世界に飛んじゃうわけ!?いやまぁ美味しいけど!)」

確か彩夢ちゃん達って前はしばらくしたら光に包まれて消えたんだよね…そんな光景見ちゃったら彼女達が別世界の存在だって思わずにはいられない。勿論友達に変わりはないから大した問題じゃないけど!



『あ、せっかくだしまたお茶しようよ!丁度美味しそうなカフェ見つけたんだー』

「うん賛成!わーすごいかき氷だ!しばらく食べてなかったし食べたい!」

「…ねぇ、かき氷って何」

『あれ?空君かき氷知らないの?』

「僕も知らないなぁ…見たことないもん」

藍君まで…うーむ、もしかしたらこの子達の世界には存在しないものなのかもしれない。

チラリと藍君を見た空君は、先ほど凝視していたブルーハワイのかき氷を指差した。


「…藍と僕の色に似てる」

「あ…本当だ!綺麗な青だね!」


…なるほど、だから空君これ見てたんだ!それにしてもこの青色コンビ可愛いなぁ…藍君なんか目キラッキラしてるよ雷士なんか光のない目してるのに。


「今失礼なこと考えたでしょヒナタちゃん」

『気のせい気のせい!ねぇ空君、藍君も。気になるならこれ食べてみない?ブルーハワイっていうんだけど…美味しいんだよ!』

「私は何にしよっかなー…イチゴもレモンも捨てがたい!」

『じゃああたし達で二種類頼んで半分こしよっか!』

「いいねいいね!早速入ろー!」


「…何か彩夢、楽しそうだね。ニコニコしてるよ!」

「…いいんじゃないの、女同士だし」

「ふぁあ…僕達も行こうか」


店内は大勢のお客さんで賑わっていて、このお店の人気を窺わせる。店員さんに案内された席は2人掛けと3人掛け…当然のように男女別れて座ることになった。男同士の話だってあるよね多分!

会って早々テンションMAXなあたしと彩夢ちゃんは波長が合うらしく、イスに座った雷士と空君を見てニヤリと笑った。


『ね、雷士と空君ってどんな話するのかな?』

「私もちょっと気になってた!空って基本言葉少ないけど…でも雷士君なら仲良くなれるかもしれないなって」


もしかしたら普段クールな2人が意気投合し、ハシャぐ様子が見られるかもしれない。間に挟まれた藍君ゴメンね!

こうしてあたし達は運ばれてきたかき氷をつつきつつ、ピカチュウコンビの様子を見守ることにしたのである。




…そして、冒頭に戻る。



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