捧げ物 | ナノ





※嵐志加入前です。





『ふぃー…今日もいい天気だねぇ』

〈そうだね、という訳で僕寝ていいかな〉

『いやいやもう少し会話して下さいよ寂しいから』

雷士と毎度お馴染みのやり取りをしつつ、あたし達はとある町をブラブラしていた。うーん、今日はどうしようかな。最近歩きっぱなしだし少し休憩でも…。


〈…あれ、見てヒナタちゃん。何か倒れてる〉

『へ…ってうわぁあああ大変じゃん!!お願いもっと焦って雷士くん!』

〈えー…めんどくさい〉

『もぉおお雷士ってば本当に雷士なんだから!!』


雷士の指差す先には3匹のポケモンがグッタリと倒れていた。ちょ、皆小さいし!怪我でもしてたら…!


『…あれ、』

走り寄った途端、思わず足が止まる。倒れている3匹…え、何この子達…!



『…かっ、可愛いぃいい!!何この超絶プリティトリオ!?どうしよう雷士あたし連れて帰っていいかな!?』

〈ちょ、やめてよヒナタちゃん。僕まで警察に捕まるのはゴメンだよ〉

『あれ!?そこなんだ!?』


ギャイギャイ騒ぎつつ3匹を抱き上げれば、その可愛さにまたまた口元が緩む。それに見た所怪我もなくて安心した。

いやー、それにしても…っ


『イーブイにピカチュウにポッチャマとか可愛いの頂点と言っても過言じゃないと思うの!ねぇ雷士!?』

〈僕もピカチュウなんだけど〉




〈…んん、〉

『!』

あ、騒いでたから起きたのかな…?イーブイがくぐもった声を出して身をよじった。


〈…あれ?ここは…?〉

『おはよー、大丈夫?』

〈…え!?〉

『わっ!?』

ぼんやりと目を開けたイーブイはあたしの顔を見て覚醒したらしい。素早く腕の中から飛び降りてしまった。ていうか声可愛いな女の子か!

〈に、人間…!?って空!藍!起きてよ2人共!〉

〈ん…あれ?〉

〈…〉

『おぉ、名前があるんだね君達』

イーブイちゃんの声で目を覚ましたピカチュウとポッチャマは自分達の状況をすぐさま理解したみたい。2匹共同じように身をよじって抜け出してしまった…寂しい。


〈彩夢!こ、ここって一体…!?〉

〈…人間?〉

〈そ、そうだよねやっぱり…どこからどうみても人間だしそれに肩にピカチュウ乗せてるし〉


『…えーと…初めまして?』

あからさまにオロオロしてるイーブイちゃんとポッチャマ…君?の目の前にしゃがみ込むとまたもや硬直してしまった。ピカチュウ…君、はやたら冷静だったけどね。


『うーん…どうしたら警戒といてくれるのかな。ちょっと雷士さん、何とか説得してみて下さいよ』

〈僕そういうの向いてないよ〉

『あぁまぁ確かに…。よし、こうなったら数で攻めようか!』


パンと膝を叩いて立ち上がり、ボールから皆に出てもらう。するとその様子を見ていたイーブイちゃんが目を見開いた。


〈…それ…モンスターボール…?〉

『お、知ってる?』

〈し、知ってるも何も…(え、ここってまさかポケダンじゃなくて本家の世界!?それはそれで美味し…じゃなくて何で!?)〉

〈…何か、あれ…見覚えある気がする〉

おぉ…ピカチュウ君が超涼しげな瞳でボールを見つめてる。何かちょっと雰囲気が雷士と似てるかも?


〈ちょっと2人共!そんなことより僕達囲まれてるよ!?〉

『あー…えっとね、あたし達別に君達をどうこうしようってつもりはないんだけど。』
 
だからもう少し仲良くしてほしいな、なんて。


〈まぁ怯えんのも無理ねぇだろ。どう見ても弱そうじゃねぇかコイツら〉

〈な、何おう!?私達弱くないもん!〉

〈ウザい…潰そうか〉

『わぁあああ電撃ダメ絶対!!紅矢も喧嘩売らない!』


〈な、何か…あのピカチュウ、雷士に似てるね〉

〈そう?まぁ気は合いそうだけど〉


ピカチュウ君はクールかと思いきや、どうやら中々好戦的なようです。



〈おいお前達、見た所敵ではないようだが…ヒナタ様に危害を加えるならば容赦はしないぞ〉

『蒼刃!』

〈…な、騎士キャラ…!〉

〈彩夢!?〉


んん?イーブイちゃんが急にキラキラし始めた。あれか、蒼刃に惚れちゃったとか。若いね青春!



『…ってそんなこと言ってる場合じゃなかった!ねぇねぇ君達、トレーナーとはぐれちゃったの?それとも野生?』

〈と、トレーナー…?よく分からないけど、僕達はプクリンのギルドの弟子だから…野生ではないかな?〉

『ぷ、プクリンのギルド…?何それ世のプクリンってそんな親分キャラなの?』

〈…まぁ、親分って感じではないかもね〉

出来るだけ怖がらせないように優しく聞くと、ポッチャマ君がおずおずと答えてくれた。それに反応するようにピカチュウ君も口を開いてくれる。う、嬉しい…!

1人感動していると、イーブイちゃんが何やらブツブツ独り言?を呟いていることに気付いた。




〈どうしよう私達ダンジョン行くつもりが本家の世界にトリップしちゃったってこと…!?トレーナーとか言ってたしやっぱりそうだよねきっと…。あぁもう確かに美味しい展開ではあるけどちゃんと帰れるのかなぁ!?〉



『…だ、大丈夫?』

〈きゃあ!?〉

耳を押さえながらうんうん唸っているイーブイちゃんをもう1度抱き上げると、やっぱり驚いてはいたけど今度は逃げられたりはしなかった。…ていうか、固まってる?


〈…あれ?そういえば何で私達ナチュラルに原型なんだろう〉

『…え、えーと…普通はポケモンって原型でいるものなんじゃないかな?』

〈…あ、そっか。ここはそういう世界だもんね…〉

『?そういう…?』

〈な、何でもないです!!〉


慌てて否定を繰り返すイーブイちゃんに聞いちゃいけないことなのかと理解。まぁ詮索するのも良くないし、聞かなかったことにしよう。

ひとしきり考え込んだ様子の彼女は、あたしに抱き上げられたまま顔を上げた。

〈えぇと…詳しくは言えないけど、私達のいた所では原型でいる方が稀なのでとりあえず擬人化します!ほら空、藍も!〉

〈あ、うっうん!〉

〈…分かった〉


『お?』

イーブイちゃんが長い耳をピコッと動かしたかと思うと、一瞬で小さな体が光に包まれた。ピカチュウ君とポッチャマ君も同様に姿を変えていく。




「…ふう、やっぱりこっちの方が動きやすいね!」

「そうだね、僕達はいつもこの姿だし…」

「…別にどっちでもいいけど」



『―――っか、可愛いぃいいい!!』

「わぁっ!?」


現れたのはこれまた美少女&美少年。うわぁああ可愛い!!可愛すぎる!!あたしは堪らず3人共まとめて抱き締めた。


〈2回目はさすがに通報されるよヒナタちゃん〉


お願い黙って雷士!!



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