澄ちゃんと灯李くんの話を聞いて、ひとまず最後に立ち寄ったお店に案内してもらうことにした。もしかしたらチサトちゃん達もその付近に戻っているかもしれないしね。
『そういえば澄ちゃんは何のポケモンなの?』
「わたし、コイキング!」
『そっかコイキングなんだ!確かにすごく綺麗な赤い髪だもんね。じゃあ灯李くんは…えっと、ヒトカゲ…かな?』
「すごいな、分かるのか」
『その尻尾で何となくね!ヒトカゲはあたしの生まれた地方ではメジャーなポケモンだから、目にする機会もよくあったの』
それに灯李くんは小さいから、さすがにリザードやリザードンではないでしょう…とはさすがに言わなかった。この子そういうのに敏感で傷付きやすそうな感じがしたから…。それにしても澄ちゃんも灯李くんも今後進化する可能性があるんだよね?うーん…最終的にはギャラドスとリザードンになるかもしれないのかぁ…いや、部外者のあたしがどうこう言える立場ではないのだけど。でもこのままの可愛い姿でいてほしい気も…!
「ヒナタちゃん」
『え?あっ、どうしたの澄ちゃん?』
突然澄ちゃんに話しかけられて少し驚いた。も、もしかしてあたし繋いだ手に力を込め過ぎちゃってた?どうしよう痛かったのかな!?
「ヒナタちゃん、とっても優しい。チサトちゃんのお友達なら、わたしも友達!」
『……あぁあああ可愛いぃいいい!!』
「わっ!」
「うわっ!?な、何でオレまで!!」
『問答無用に可愛いから!!』
何これ!何この子達!?いや灯李くんは何も言ってないけれど。でも存在そのものが可愛いからまとめて抱き締める!
いいなぁ、チサトちゃんってばいいなぁ…!今も道中で澄ちゃんと灯李くんはあたしと手を繋いでくれたし、こんな可愛い子達と一緒に旅をしているなんて羨ましいよー!ウチにいるのは子供の教育に悪いダメな大人と、既に大人になりかけている子達ばかりだから…。ってこんなこと思っているのがバレたら主にドSトリオに締められるよね。疾風もまだ十分可愛いし…うん、贅沢は言わないでおこう。
「静まれ…まだ相手は子供だ…っ静まれ俺の怒りぃ…!!」
「姫さーん、そーくんが色々限界みてーだから早く進もーぜ!」
「で、でもちゃんと我慢してるから、蒼刃えらいね!」
「いやー、あのなてっちゃん。普通は子供に嫉妬するだけならまだしも、殺意まで抱いたりしねーからな?そーくんが異常なだけだからな?」
ふぅ…2人のとんでもない可愛さをたっぷり堪能させてもらったよ。あれ?何だか嵐志が心なしかやつれているような…気のせいかな?
「らいとんとかさめっちのツッコミって大事だったんだな…オレは姫さんにキツく言えねーし…」
「し、仕方ないよ、嵐志。ボクも、マスターに痛いことは出来ないから…」
「ぐ…っだがしかし子供と戯れるヒナタ様も聖母のごとく美しく可憐…!!」
「そーくんは黙っててくんねーかな!?」
『ちょっ何々?喧嘩はダメだよ?』
あたしがそう言うと、嵐志にしては珍しく苦笑いを浮かべて何でもないと言われてしまった。んん…?まぁ…本人がそう言うならいいのかな。よし、では気を取り直してチサトちゃん探しを再開しなきゃね!
「なぁ、そういえば嵐志達は何のポケモンなんだ?」
「オレはゾロアーク!んでそーくんはルカリオで、てっちゃんはフライゴンだ。知ってるか?」
「分からない…フスベには、いなかった」
「フスベ?」
『あ、聞いたことある!確かジョウト地方の町だよね?ジョウトはカントーの隣だから一度行ってみたかったんだけど…今となっては中々ねー』
カントーに住んでいた頃ならまだしも、現在はイッシュに身を置いている以上ジョウトに行くのは難しい。いつか行こう行こうと思っていて結局実現出来なかったんだよねぇ。そうだ、今の発言からすると澄ちゃん達はジョウトの出身なのかな?もしもゆっくり時間が取れたらチサトちゃんにも色々聞いてみよう。
途中あたしのせいで脱線してしまったけれど、何とか目的地へと辿り着くことが出来た。澄ちゃん達が最後に買い物をしたというお店は大型デパートで、そのせいか人通りもより多くなっているように感じる。今は他の買い物客の迷惑にならないように空きスペースにいるから見晴らしがいいけれど…なるほどね、確かにこれだけ人やポケモンがいれば小さい子ははぐれちゃうかも。
「そーくんの波動って知らない人間のも探せんのか?」
「いや、さすがにそれは難しいな。一度本人の波動を見て覚えさえすれば辿れるんだが…」
『そっか…でも仕方ないよ、気にしないで蒼刃。まずはこの辺りを地道に探そう!』
紅矢ならもしかしたら探せるかもしれないけれど、その為にはチサトちゃんのニオイを知らないとダメだしね。何よりあの横暴キングがわざわざホテルからここまで来てくれるとは思えない。
『さて、じゃあ気合いを入れて…』
「…あっ!!」
『ん?どうしたの澄ちゃ、』
「チサトちゃんと、晴琉!あそこ!」
「本当だ!こっちに来るぞ!」
えっ見つかるの早いね!?本当にそうなら最高なんだけども!
澄ちゃん達の視線の先にあたしも目を向けると、確かに以前出会ったときと変わらない姿の2人が近付いて来ているのが分かった。あの鮮やかな青い髪、すらりと高い背は晴琉で…その後ろにいる長い髪を靡かせた小柄な女の子は…間違いない、チサトちゃんだ!
「…!おいチサト、お前の言う通りヒナタだったぞ。それに何故か澄と灯李も一緒だ」
「本当!?…あっ、ヒナタちゃん!」
『チサトちゃーん!』
再会の挨拶代わりと言わんばかりに思いきり彼女に抱き付くと、勢いがつきすぎて2人してよろめいてしまった。うわぁ、前に抱き締めた時にも思ったけれど…やっぱりチサトちゃん細いよ!絶対あたしの方が肉ついてる…!
「チサトちゃん、晴琉!」
「ったく探したじゃねぇか。どこに行ってたんだよ?」
「いや…迷子になってたのはお前達の方だと思うが…」
「ふふっ、でもとても心配していたから…無事に見つかって良かった!」
うん、本当に…あたしも良かったと思う。澄ちゃんも灯李くんもすごく嬉しそうな顔をしているし、チサトちゃんと晴琉も心から安堵しているようだ。あの時2人に声をかけて間違いなく正解だったね。
「ところでヒナタはどうしてここに?確かイッシュにいたはずじゃ…」
『あ、それなんだけど…ざっくり説明すると旅行に来てたの!それで観光がてら散策をしていたら困ってるっぽい澄ちゃんと灯李くんを見つけて、一緒にチサトちゃん達を探してたんだよ。勿論最初はチサトちゃんのポケモンだなんて知らなかったけどね!』
「そうか、なるほどな…これで合点がいった」
「ご、ゴメンなさい!迷惑かけちゃったよね…」
『ううん全然!2人共すっごく可愛いし、チサトちゃんと晴琉にまさか会えると思ってなかったから嬉しいよー!』
そう言うとチサトちゃんはありがとう、と言って笑ってくれた。これぞまさしく天使の頬笑み…!晴琉も相変わらずイケメンだし…うんうん、お似合いの2人だよね。
「私もこんなに早く再会出来るとは思ってなかったよ。必死に探し回っている時にヒナタちゃんっぽい人が見えたから…まさかとは思ったのだけど。でも確かめなきゃ、と思って近寄ったら澄ちゃん達も一緒にいるから驚いちゃった!」
「澄と灯李は小さいから見付けるのも大変だった。でもお前は結構目立っていたから分かりやすかったぞ」
『えっ?あたしってそんなに悪目立ちしてる!?』
「違う、そういう意味じゃない。その髪色がってことだ。それを目印にして辿り着けたようなものだからな」
「それだけハッキリしたオレンジ色の髪ってあんまり見ないもんね。私は綺麗だと思うけれど…」
『ありがとうチサトちゃん好き!!』
「わっ…!ふふ、ありがとう!」
感激のあまりもう一度抱き付いたら、晴琉に思いきり苦笑いをされてしまった。でもゴメンね晴琉、あなたの大切な子だってことは分かっているけれど我慢出来ないんだよ…!
「そういえば…ヒナタ、後ろにいるのはお前の仲間か?」
『あ、うん!そうだ紹介しないとね。えっとまず…ってうわぁぁあっ!?』
「ヒナタ様!!その前にどうか説明願います何故この男のことを呼び捨てにされているのかそして随分親しげですがどんなご関係なのか!!」
「ご、ゴメン、マスター!さっきから嵐志と一緒に押さえてたんだけど、振り解かれちゃった…!」
『2人がかりでないとダメな程!?』
後ろを振り返った瞬間、鼻がくっつきそうなくらいの近距離まで詰め寄ってきた蒼刃に、恐怖を感じるくらいのノンブレスで捲し立てられてしまった。いやいやどんなご関係と言われましても…!普通の友達ですが!!ていうか疾風がさっきからって言ったけどいつからこんなご乱心だったの!?
「悪ぃなー、アイツ姫さんが絡むと基本的に情緒不安定なモンで…」
「い、いや…俺は大丈夫だが…むしろヒナタはいいのか…?」
「わたし、ビックリした…」
「オレも…」
『ゴメン!本当にゴメンね!!』
「なっ泣かないでヒナタちゃん!」
「おーい姫さん、何とかそーくんを落ち着かせてやってくれよ!自己紹介はオレらがしとくから!」
「う、うん…きっと今の蒼刃は、マスターの言う事しか聞かないと思うから…」
『えぇぇ…!でも……うぅ、分かった!ほら蒼刃、ちょっとこっちおいで!』
視線を一切逸らさずじっと無言であたしを見つめてくる姿に若干恐怖を覚えながらも、声をかけたらすぐに反応してくれたので内心ホッとした。うーん…普段はここまで極端になることは無いのにどうしちゃったのかな?でも不安がっているならちゃんと安心させてあげるのもトレーナーの努めだもんね!
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