捧げ物 | ナノ





聞く所によると、小鳥ちゃん達は初めて出会った時のようにヒウンアイスを買いにイッシュまで来たとのこと。でもやっぱり慣れない地方だから迷っちゃってたみたいで、そこに偶然あたしが通りかかったみたい。

どうもウチでいう紅矢みたいな暴君さんが小鳥ちゃんの所にもいるらしく…その人がヒウンアイスを気に入ったから、また買って来いって言われたんだって。

うう、小鳥ちゃんも苦労してるんだね…!分かるよその逆らったけど返り討ちにされる気持ち!

すると彼女も、「ありがとう分かってくれて!」 と言って互いにがっしりと手を握り合った。これぞ怪我の功名…ん?違うかな?まぁいっか、小鳥ちゃんとの友情は深まったし!

ちょうどあたし達もヒウンアイスを買いに行く所だったので、道案内を兼ねてお店まで同行した。そして現在注文したアイスが運ばれて来るのを待ちつつ、ジュースを飲みながらオープンテラスで談笑中です。

あたしと小鳥ちゃんは歳も近いし話題に事欠かない。それに蒼刃と魁斗さんも中々相性が良いらしく、嵐志を交えつつ仲良さげに会話をしている。

彼らを何度も振り返っては頬を染めて通り過ぎる女性達を見て、あたしもチラリと美形3人を観察してみた。

蒼刃と嵐志はイケメンって感じだけど、魁斗さんはどちらかと言えば美形に分類されるお顔だ。おまけにさっき小鳥ちゃんの為にイスを引いてあげていたし、気遣いも素晴らしいと感心してしまう。


『…ねぇ小鳥ちゃん、魁斗さんってすっごい紳士だね!』

「そうね…でも魁斗って確かに物腰も柔らかいし優しいしバトルも強いんだけど、ただ話が長くて哲学っぽい時があるのよね…」

『そ、そうなの?でもそれを抜きにしても、小鳥ちゃんを大切に思ってるのが伝わってきて素敵な人だと思うけどなぁ』

「ふふ、それを言うなら蒼刃さんだって同じだと思うわ。ヒナタちゃんのこと好きで堪らないって感じだもの!勿論嵐志さんもね」

『う、うーん…何かそう言われると照れる…でもあたしから見ても蒼刃は真面目だし男前だし絶対モテると思う!紅矢もちょっとは見習ってほしいよー』


そうだ、紅矢は蒼刃と魁斗さんの紳士っぷりを見習うべきだと思う。ついでに嵐志もヘラヘラしないでたまには蒼刃みたいにキリッとしてみるとか、魁斗さんみたいにふんわりと穏やかに微笑んでみるといいかもね!…あ、やっぱりダメだそんな嵐志想像出来ない。











「…何か今姫さんにすげー傷付くこと思われたような気がする」

「バカを言うな!ヒナタ様が俺達を貶すようなことを仰る筈がないだろう!」

「ふふ、蒼刃はとても彼女のことを慕っているのですね」

「当然だ!天使の如く純白可憐な容姿、慈悲深く清廉なお心…どれをとっても素晴らしいお方だ。俺は初めて出会ったあの日からヒナタ様の為に生き、命を賭してお守りすると決めている」

「ぶはっ、相変わらずそーくんは姫さんに対して極端だよなー!」

「いいえ嵐志、蒼刃にとってそれは極端ではないのですよ。己の命を賭けて、生涯お守りしたいと思える主に出会えたのは蒼刃からすれば何にも代え難い幸せ。その気持ちはわたしにもよく分かります。小鳥様も蒼刃でいうヒナタさんと同じく、わたしなどには大変勿体無い主…彼女を傷付ける物全てからお守りすることはわたしにとって名誉でもあるのです」

「お、おー…そっか。魁くんもコトちゃんのこと大好きなんだな!」

「ふ、やはり話の分かる奴だ。だが…1つだけ魁斗と俺では決定的に違うことがある。それは…主に対する想いの違い、だな?」

「…ふふ、さすがは波動使い。このわたしの心の内さえもお見通しという訳ですか」

「自慢する訳ではないがな。お前は主に親愛を、そして俺はヒナタ様に狂う程の…いや、これは言わないでおく。容易く口にしてしまうと暴走しかねない」

「いやいやそーくん、それでも充分爆弾発言だぜ。何で普通に言わねーんだよ姫さんのこと女の子として愛し…ぅぶっ!?」

「嵐志ぃいいい!!貴様のような軽薄な男が軽々しくヒナタ様への愛を口にするなど許さん!!」

「いや今のはオレじゃなくてそーくんの気持ちを代弁しただけなんだけどな!?」

「ふふっ、本当に楽しい方達ですね」











「…ね、ねぇヒナタちゃん。蒼刃さんが嵐志さんのこと締め上げてるけど大丈夫?」

『うん!いつものことだし多分OK!』

(い、いつもなんだ…)


あたしは小鳥ちゃんとの会話に夢中だったから蒼刃達の会話は聞こえなかったけど…魁斗さんもクスクス笑ってるし、きっと楽しい時間だったんだろう。

恐らく余計なことを言ったんであろう嵐志との賑やかなやり取りを、あの慎重な蒼刃が堂々と見せてるんだもん。この短い時間に3人が仲良くなれてあたしは嬉しいよ!

そうこうしている間にお待ちかねのヒウンアイスが運ばれて来て、それぞれの分を手に取ったあたしと小鳥ちゃんは満足げに席を立った。





『それじゃ小鳥ちゃん、アイスが溶けない内に帰ろっか!』

「うん、そうね。本当にありがとうヒナタちゃん、お陰で助かったわ」

『全然いいよー、気にしないで!魁斗さんもお元気で!王牙さんと噂の暴君さんにもよろしくお伝えくださーい!』

「ふふ、かしこまりました。蒼刃と嵐志も、大変和やかな一時をありがとうございます」

「俺も感謝する。またな、魁斗」

「じゃーな魁くん!コトちゃん!」


名残惜しくも別れを告げ、互いに背を向け歩き出す。あたしの両隣を歩く蒼刃と嵐志を見上げると、2人共口元に柔らかな笑みを浮かべていた。

嵐志はともかく、普段あまり笑わない蒼刃がこんな顔をするのは珍しい。もしかしたら魁斗さんの影響を受けたのかもね。


(もしまた会えたら…氷雨と魁斗さんを会わせてみたいなぁ。似非紳士に本物の紳士っぷりを見せてあげたいし!)


まぁこんなことを本人に口走ったら間違いなく真っ黒な笑顔を向けられるだろうから怖くて言えないけど。あぁそれと、もう一度王牙さんと紅矢が会ったらきっとケンカが始まっちゃうだろうね。

そんな相性が良いんだか悪いんだか微妙な2人を、またあたしと小鳥ちゃんで止めるんだ。それを見て笑う嵐志と、呆れたように溜め息を吐く蒼刃と魁斗さん…あは、どうしよう想像するだけで楽しい。



(シンオウかぁ…うん、また1つ行きたい理由が増えちゃった)



会えたら、じゃなくて。今度はあたしが会いに行こうと、心からそう思えた。



(また会おうね、小鳥ちゃん!)



end


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