『よいしょ、っと…これで買い出しは終了だね。最後にメインイベント、ヒウンアイス行きますか!』
「だな!にしてもこーちゃんもひでーよな、姫さんの首根っこ捕まえたかと思えば一言ヒウンまで行って買って来いとかさ!」
「あぁもう何も言わないで嵐志さん自分が惨めになるから!!いいんだよ他の生活ひちゅじゅひんを買うついでだと思えば!!」
「噛みっ噛みだぜ姫さん!」
(言えていないヒナタ様もお可愛らしいです…!)
…えー、あたし達は現在ヒウンシティで買い物を終えた所です。別にわざわざヒウンで買う必要はないんだけど、さっき嵐志が言ったように横暴キングである紅矢様の魔の一声で遥々ヒウンまで来たという訳で。
まぁでも…ヒウンアイスは確かに美味しいし、足を運ぶ価値はあるよね。今回買い物に付き合ってくれた嵐志と蒼刃にも何か買ってあげよう。何と言ってもこの2人はよく一緒に来てくれるプライスレスな優しさを持つコンビなんです!
「重いだろ姫さん、こっち貸しな?」
「いいえヒナタ様!俺1人で充分ですのでどうぞご遠慮なくこの俺に荷物をお渡し下さい!!」
『あ、え、でも…1つくらいはあたしも持たないと申し訳ないと言うか、』
「…俺はヒナタ様にとって…嵐志よりも頼りない男なのでしょうか…?」
『やっだなぁああ蒼刃くんってばそんなことないよー!?うんじゃあ本当に悪いんだけどこっちの荷物もお願いしちゃっていいかな!?』
「はい!お任せ下さいヒナタ様!」
や、やられた…あたし蒼刃のあのションボリ顔と声に滅法弱いんだよね…ていうかこのやり取り久し振りだよ。
後ろで嵐志が「これが病みそーくんの真骨頂だな!」とか何とか言ってたけど、何となくあんまり深く考えないことにしました。
『えっと、ヒウンアイスは確かあっちだよね。じゃあ早速しゅっぱー…ん?』
手ぶらになってしまった右手の人差し指でヒウンアイスのお店の方向を指すと、丁度その指の先に重なる位置でキョロキョロと辺りを見回している女の子が目に入った。
どうしたんだろう、何だか困ってるっぽい…?ていうかあれ?あのサラサラ黒髪美少女どこかで…
『…あっ!!』
「え?」
あたしの出した声に反応したのか、女の子がくるりと振り返る。バチっと視線が交わった瞬間互いに目を丸くして同時に口を開いた。
『小鳥ちゃん!?』
「ヒナタちゃん!」
そう、その女の子は以前紅矢と2人で出かけた際にヒウンシティまで同行した小鳥ちゃんだった。
『わぁ久し振り…っていう程でもないかな?でもでも、また会えて嬉しいよー!相変わらず可愛い!』
「きゃっ…!」
あたしの悪い癖とも言える、可愛い女の子に抱き付いてしまう症候群が発症しました。だって小鳥ちゃん可愛いんだもん!
抱き付かれた瞬間は驚いていたけど、すぐにクスリと笑ってそっと抱き返してくれた。うわぁああ変な意味じゃないけど胸キュン…!
こんな所を鬼畜ピカチュウもとい雷士に目撃されていたら、まず間違いなく〈変態行為で訴えられるよ〉とか何とか言われているだろう。でも今はその雷士はいない、という訳でちょっとくらいいいよね!とばかりに小鳥ちゃんと戯れる。
そんなこんなで小鳥ちゃんの可愛さを堪能していたら、彼女のポケモンであろうハッサムがボールから出てきてあたしをジッと見つめてきた。
ハッサムなんて初めて見たなぁ、すごい綺麗な赤色…。んん?ていうかどうしてこんな穴が空きそうな程見つめられてるんだろう?
〈…小鳥様、こちらの女性は怪しい方ではないのでしょうか?〉
『あ、ゴメンなさい!確かにちょっと暴走しちゃったけど決して怪しい者では…!』
「ち、違うわ魁斗!ヒナタちゃんは友達よ」
『どうしよう蒼刃、嵐志。小鳥ちゃんが友達発言してくれたんですけど超嬉しいんですけど』
「姫さんマジでこの場にらいとんとかさめっちいなくて良かったな!多分今の発言でそっこーイジられてるぜ!」
「嵐志貴様ぁあああ!!ヒナタ様のお言葉に文句をつける気か!!」
〈…この方もポケモンの言葉が…?それになるほど、確かに悪い方達ではないようですね〉
「ふふ、楽しいでしょう?」
おぉう、ハッサムさん…ええと、魁斗さん?にどうやら警戒心を解いて頂けたようです。
小鳥ちゃんから視線を外した魁斗さんは擬人化をして、あたし達にニコリと微笑んだ。うわぁ美形さん…!何となく氷雨と雰囲気似てるかも?
「改めまして、わたしは魁斗と申します。ヒナタさん…でよろしいでしょうか?小鳥様のご友人とは存じ上げず不躾な事を申し上げ大変失礼致しました。願わくばこの哀れな男に何卒御慈悲を…、」
『えぇえええ頭下げないで下さい!!むしろ悪いのはあたしなので…!』
「ヒナタ様を尊ぶその態度…お前中々見所のある男だな。俺はルカリオの蒼刃、ヒナタ様をお守りする事に命をかけている者だ」
『ちょ、蒼刃くん何その自己紹介色々誤解されそうなんだけど!?』
「オレはゾロアークの嵐志!よろしく頼むぜ、魁くんにコトちゃん!」
「こ、コトちゃんって…私?」
『うん!嵐志はね、相手にあだ名をつけて呼ぶんだよ』
「そ!コトちゃんってかわいーだろ?」
『「!!」』
嵐志の言葉にあたしと、そして多分魁斗さんもハッとした。
そうだ、嵐志は仲間内では公認のチャラお兄さん(本人は否定してるけど)。そして今この場にいるのは可愛い小鳥ちゃん…
つまり、小鳥ちゃんが、危険(誑かされる的な意味で)
『…あ、安心して下さい魁斗さん!小鳥ちゃんはあたしが全力で守ります!!』
「これはこれは…頼もしいですねヒナタさん」
「そしてヒナタ様はこの俺がお守りします!!」
「何で3人してオレを睨んでんだよ!?つーかそーくんおかしくね!?」
「あ、あの…ここ道のド真ん中だしあんまり騒がない方がいいんじゃ…?」
今度は全員で小鳥ちゃんの言葉にハッとする。全くもってその通りだ、こんな人通りの多いヒウンシティの街中でギャーギャー騒いでいたら注目を浴びてしまうのは自明の理。
勿論その注目の中には蒼刃と嵐志、そして魁斗さんの美形3人衆をうっとりと見つめている黄色い視線も多々含まれてるんだけど…そこには敢えて触れない触れないことにした。
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