『っしゃぁあああ行くぜ野郎共ぉおおお!!』
〈恥ずかしいから大声出すのやめてよヒナタちゃん〉
「まーヤロー共って言ってもオレとらいとんしかいねーけどな!」
ここはあたしにとっての聖地、ライモンシティ。なぜ聖地かって?カミツレさんがいるからに決まってる!
前限定物のアイテムを買いに来た時は諸事情で結局買えなくて…いや後悔はしてないけどね、可愛い子助けられたんだし。
えっと、それで今度はカミツレさんプロデュースの限定マニキュアが販売されるのです!何とカミツレさんも使ってるヤツだよ!お揃いだよお揃い!
〈あの人と同じ物使ってる人なんてたくさんいると思うけどね〉
『あぁあああ聞こえない聞こえない!!』
「周囲の視線が痛ーし行こーぜ姫さん!」
何てことだ…嵐志に諭されてしまった。全く雷士ってば本当に乙女心クラッシャーなんだから!
あ、ちなみに雷士と嵐志以外の皆はポケモンセンターでお留守番です。師弟コンビは別として…ドSトリオの内2人(代表者)の声がこちら→「マニキュア買う為だけにライモンまで戻るなんて気が知れません勝手に行って下さい。」
…あんの鬼畜ラプラスめ…!無駄に素敵な笑顔しちゃってもぉおおお!!
「ひーめさん、眉間にシワ寄ってるぜ!」
『わ…っ』
ビックリした、嵐志に指でグリグリとシワを伸ばされた。あたしが驚いたのを見てケラケラと笑う嵐志にあたしも口元が緩む。優しい嵐志は勿論、何やかんや付き合ってくれた雷士に免じてドS組も許してあげよう!
仕方ないから帰りお土産でも買ってあげようかな。甘味大好き横暴キングもいることだしね…。
「お、あそこじゃねー?」
『!』
あたしの手を引いていた嵐志が指差した先に見えるのはライモンシティらしい煌びやかな装飾を施されたお洒落なショップ。うん、間違いなくあそこだ。
『よーし早速並ぶよ!待っててカミツレさ「アークくーん!!どこですかー!?」…ん?』
今聞き覚えのある声がしたような…気のせい?
「あり?なー姫さん、あの子確か…」
『おぉう気のせいじゃなかった』
やっぱり今の女の子の声は…!
『ライナちゃん!?』
「!ヒナタさん…!?」
以前このライモンシティで出会った女の子、ライナちゃんだ。でも何か様子がおかしい…?今にも泣きそうな顔で如何にも困ってるって感じ。
『ライナちゃん、どうかしたの?何かあった?』
「は、はい…実は…アークくんとはぐれてしまったんです。お買い物をしていたらいつの間にか…!」
『うわわ、大丈夫だから泣かないでライナちゃん!』
ていうかこんな可愛い子ほったらかしてはぐれたアーク君は何してんの全く!まぁでも…多分アーク君の方も今頃ライナちゃんを探してるよね。ライナちゃんって何か放っとけないし、うん。
『よっし、あたし達もアークくん探すの手伝うよ!1人より効率いいでしょ?』
「え…!?ほ、本当ですか!?」
『勿論!ライナちゃんとアークくんはあたし達の友達だし、ね?』
「あ…ありがとうございますヒナタさん!いいえ、救いの勇者様…!」
『それ前も聞いた!でもいいよライナちゃん可愛いしオッケー!』
〈調子乗ると碌なことにならないよヒナタちゃん〉
お黙り雷士!いいじゃんちょっとくらい正義の味方気取ったってさ!
…っと、ここで雷士と喧嘩してる場合じゃないね。ライナちゃんの為にも早くアーク君を見つけないと…
「なー姫さん、アッくん探すのはいーけど…マニキュアどーすんだ?」
『ふっふっふ、心配無用だよ!ねー雷士くん?』
〈何で僕に言うの〉
あーよかった、今回は雷士がいてくれて!そう言って笑うとあたしの意図を察したのか雷士が至極面倒くさそうな顔をした。こら雷士、仮にもピカチュウなんだからもっと可愛い顔しなさい!
〈…言っとくけどヒナタちゃん、僕は絶対に嫌だからね〉
『そこを何とか!後で何でも買ってあげる!』
「あ、あの…ヒナタさんはピカチュウさんに何をお願いしているんですか?」
「あー…多分ピカチュウ、えっと名前は雷士って言うんだけど。雷士にオレらが戻るまで代わりに店に並んどけってことじゃねーかな」
『さすが嵐志ご名答!!』
さすがゾロアーク!鋭いね!
そう、あたし達がアーク君を探しに行っている間雷士に店にいて貰おうって魂胆です。間に合わなかった時の為にお金も渡しとくからその時は買っといてね!
その後数分必死にお願いして、メチャクチャ不服そうだったけど何とか雷士に了解を得たあたしはようやくアーク君探しに出発出来た。
『ありがとう雷士ー!お願いねー!』
「約束忘れないでよヒナタちゃん」
「なー姫さん、らいとんの約束って何だ?」
『よく分かんないけどお昼寝の時に膝枕しろって言われた!』
(らいとん…!)
それにしても…アーク君どこに行っちゃったのかな?ライモンから出てはいないと思うからすぐ見つかるといいんだけど…。
「姫さん、二手に別れよーぜ!オレは向こうから探すから姫さんとなっちゃんはあっちから頼む!」
『イエッサー!』
「な、なっちゃん…?」
『ライナちゃんのことだよ!』
ライナちゃんの手を握りアークくんを探す。以前会った時の彼はクールな感じで遊園地で遊んでるようなイメージじゃないし…むしろ人の少ないとこにいたりして?
「…っアークくん…一体どこにいるんでしょうか…もしアークくんがプラズマ団に襲われていたりしたら…!」
『だ、大丈夫大丈夫!仮にそうだとしてもアークくん強いし心配ないよ!そうなる前にあたし達が見つければいいんだし!』
そう言うとライナちゃんはそうですね、とパッと笑ってくれた。うんうん、ポジティブにいこうね!
「あの、ヒナタさんと嵐志くんはとても仲が良いんですね!少し羨ましいです…」
『あは、そうかな?でもライナちゃんとアークくんも仲良しだと思うよ!少なくともあたしと紅矢よりは…』
「えぇ!?わ、私とアークくん仲良しに見えますか!?うっ嬉しいです…!」
『うわぁあああライナちゃん可愛いぃいいい!!』
「ひゃあ!?」
嬉しそうに笑うライナちゃんが可愛くてあたしはたまらず抱き締めてしまったよ。よかった雷士がいなくて!確実に〈通報されるよヒナタちゃん〉って冷たい目で言われるところだった!
「おい、お前達」
『へ?』
「…!ヒナタさん、この人達…!」
ライナちゃんの驚きと恐怖の混じった声の理由はすぐに分かった。あたしの背後から聞こえた声の正体…それは、
「やはり先日のガキ共か…!俺達の顔を忘れたとは言わせないぞ!」
あたしが最も会いたくない人達、プラズマ団だった。
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