「…ね、ねぇ2人共、この人達悪い人じゃないんじゃないかなぁ?」
「まぁ…嫌な気はしないかもね」
「うん、そうだね!」
あ、もしかして少しは警戒といてくれた感じかな?最初の空気よりうんと柔らかくなった気がする。よし、ここはもう一押しだ!
『ねぇ君達、いきなり抱きついたりしてゴメンね?あたしはヒナタ、この子達のトレーナーだよ。皆良い子達だから心配しないで!』
そう言ってニッコリ笑えば、イーブイちゃんとポッチャマ君もそれはもう可愛く笑ってくれた。ちなみにピカチュウ君もほんの少しだけ口元を緩めてくれました。
「私は彩夢!よろしくねヒナタちゃん!」
「僕は藍だよ。良い人そうでよかった!」
「…空」
…短っ!!ピカチュウくんもとい空くんの自己紹介短っ!!やっぱり何となく雷士に似てるよ…。まぁ可愛いからいいけど。
『んーと、結局君達は何でここに倒れてたの?迷子?』
「迷子…と言えば迷子かなぁ。でも多分大丈夫だと思う!(念じれば神理に通じるだろうしね!)」
「彩夢がそう言うなら大丈夫だよねきっと。慌ててもしょうがないし!」
『っな、何て純粋なの藍君…!?どっかの暴君ガーディに見習わせたい!!』
〈テメェ噛み付かれてぇのか〉
キュルル…
「…あ、」
『ん?』
あたしが紅矢の牙から逃れて蒼刃の後ろに隠れた時、小さく控え目な音で藍君のお腹が鳴った。…あは、お腹空いてるんだね?
「そういえば何も食べてなかったね…」
「そうだね、とりあえずリンゴ食べようか!」
『ねぇねぇ、リンゴもいいけど…せっかくだし違うもの食べない?』
「え?」
ふっふっふ…ここはお姉さんに任せなさい!
−−−−−−−−−
「美味しい!!このケーキ凄く美味しいよ!」
「…悪くはないね」
『でしょでしょ?このお店結構有名らしいんだー』
澪姐さんが以前教えてくれた人気店のケーキは、プリティトリオのハートをがっつり掴んだようです。モクモク食べる3人がまた可愛い…!ちょうど近くにお店あってよかった!
「でも…お金、本当にいいの…?」
『いいよいいよ気にしないで!』
「元は僕達が稼いだお金なんだけどね」
「随分偉くなったもんだなぁヒナタ…?」
『ゴメンなさいいつもありがとうございます!!』
うぅ…ドSコンビめ!確かに皆がバトルして勝ち取った賞金だから文句は言えないけどね。
「で、でも…マスターがいるから僕達も戦える訳だし、マスターが自由に使うのは良いと思うけど…」
「疾風の言う通りだ。あくまで俺達はヒナタ様あっての存在だということを忘れるな」
『いや、うん…そこまで重く捉えなくてもいいと思うけど、ありがとうね2人共!』
うんうん、蒼刃と疾風は相変わらず良い子代表!
「い、イケメン…集団…!」
「…藍、コイツら全員潰すよ」
「…まぁ、彩夢に毒なのは許せないからね」
『あれ、何か今美少年コンビから黒いオーラ感じたような』
「き、気のせい!気のせいだよ!」
…彩夢ちゃんがそう言うならまぁいっか。やたら必死だけど気にしないでおこう。
(…それにしても、)
「ほら藍、私のケーキ一口あげるよ!」
「え!?で、でもそれって…(か、関節キス…!?)」
「…藍は僕の食べれば」
「むぐっ!?」
「おー!仲良しさんだね2人共!」
『…くっ…可愛い、何て可愛い三角関係…!』
「ババァかテメェは」
「自分の恋愛には鈍感な癖に人のヤツには敏感なんだよねムカつく」
「た…確かにマスターちょっと鈍いけど…そこもか、可愛い、よね?」
「当たり前だ!!ヒナタ様は全てがお可愛らしいに決まってるだろう!!」
『あーもうしつこいけど可愛い!藍君は真っ直ぐだけど照れ屋さんだし、空君はクールだけど独占欲強いし…!そして何より無邪気な彩夢ちゃんが天使!』
「…あ、あの、ヒナタさんの仲間達が何か盛り上がってるけど…いいの?」
『え?そうなの?』
雷士達が何を話していたかなんて、意気揚々と彩夢ちゃん達を分析していたあたしには全く聞こえていなかったのである。
それより今はどうしても話したいことがあるんだよ…! 主に彩夢ちゃんに!
『ねぇねぇ彩夢ちゃん!ちょっとこっち来て!』
「ん?何々?」
彩夢ちゃんの腕を引っ張って皆から離れた席に座り直す。彼女は当たり前だけどキョトンとしていて、でもそれがまた可愛かった。
「どうしたのヒナタちゃん?」
『うん、あのね…いきなりこんなこと聞いちゃ怒るかもしれないけど。彩夢ちゃんは…空くんと藍くん、どっちが好きなの?恋愛的な意味で!』
「…え、えぇええええ!?」
悲しいかな、女の子の友達がほぼ皆無だったあたしは所謂ガールズトークというものを1度はしてみたかった。そしてガールズトークと言えば恋バナ!…と、澪姐さんが言っていたこともあり、イーブイといえど立派な女の子である彩夢ちゃんにぶつけてみました!
「うぇ、えっと、す、好き…とか、そういうのは…!」
顔を真っ赤にして慌ただしく視線を泳がせる彩夢ちゃん。ダメだ、超可愛い。あたしにも少しくらいその可愛さ分けてくれないかな…。
『空くんも藍くんも素敵だよねー、美少年だし優しそうだし!まぁ空くんの方は微妙にウチの鬼畜ネズミに似ててちょっと恐ろしいけど』
「た、確かに2人共美形だけど…。でもね、正直恋愛かどうかって聞かれると分からないんだよね…」
『そっかそっか!まぁ恋愛したことないあたしは偉そうに言えないんだけど、きっと難しいんだろうねぇ』
「…あれ、ヒナタちゃんはあの中の誰かと付き合ってるとかじゃないの?」
『はい!?』
今度はあたしが狼狽える番だった。あからさまに紅潮したあたしの顔を見て、彩夢ちゃんがニヤリと笑う。
「ヒナタちゃん真っ赤!ねね、違うの?」
『ち、違うって!そりゃ憧れるけどさっきも言った通り恋愛とかしたことないし、皆のことは家族愛とか友愛?的な感じで…!』
「ふぅん?でもそこから始まる恋愛もあるよね!」
『そうなの!?』
う、恋愛初心者の自分が恥ずかしい…!
「…ふふ、でも何かこういう話楽しいね。女の子ってやっぱり癒されるー!」
『あは、あたしも!彩夢ちゃんと話せて嬉しいよ!』
お互い顔を赤らめたままどちらともなく笑い合う。そんなあたし達は、きっと立派な友達なんじゃないだろうか。
「…あの2人赤くなりながら何話してるんだろ?」
「さぁ」
…今更だけど彼女達に時間はどれくらいあるんだろうか。ついこうして引き止めてしまったけど…大丈夫かな?
ふとそう考えていると、彩夢ちゃんが不意にどこか遠い目をした。…何事?
(…!この感じ…神理?)
(あぁ、そうだ。お前達を迎えにきた)
(迎えって…、)
(どうやら何かの偶然で似通って異なる世界に飛ばされてしまったようだな。だが安心しろ、我が元の世界に戻してやる)
(おぉおおさすが創造神様!!)
『あ、彩夢ちゃん?大丈夫?』
「はっ!う、うん!平気平気!」
突然ボーッとし始めたからビックリしたよ…でも大丈夫そうでよかった!
…けど次の瞬間、彩夢ちゃんが酷く悲しそうな顔をした。
『彩夢ちゃん…?』
「…あのねヒナタちゃん、せっかく出会えたのに…私達ここでお別れしなきゃいけないみたい」
『え…、』
彼女の泣きそうな表情で冗談ではないと悟る。…そりゃそうか、この子達にはこの子達の帰る場所がある。
『…でも、永遠の別れじゃないと思うし。また会おう彩夢ちゃん、勿論空君と藍君も!今度はプクリン親分のことも聞かせてね!』
「…!うん、ありがとう!」
泣きそうだった彼女の手を握ってニッと笑うと、彩夢ちゃんも満面の笑みで握り返してくれた。うんうん、やっぱり笑顔が似合うよ!
(彩夢、もう良いか?)
(うん、大丈夫。お願いね神理!)
フワリと、3人の体が真っ白な光に包まれていく。雷士達もたくさんお喋り出来たのかな?驚いてはいたけど笑ってるし、きっと男の子は男の子で仲良くなれたんだろうね。
1つ瞬きをした直後、もう彼女達の姿はなくなっていた。…ていうか結局どこから来たんだろうあの子達?
「ヒナタちゃん、ひょっとしてアイツら違う世界の存在だったんじゃないの」
『…かもね。でもまぁ関係ないか、友達は友達だし!』
絶対また会おうね、3人共。
そして彩夢ちゃん!次会うときは…ひょっとしたらあたし達のどちらかに好きな人とか、出来てるかもね?
あたしは彼女達が消えた真っ青な空を見上げ、1人微笑んだ。
end
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