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メイちゃん、キョウヘイくんと別れてあたしは1人PWTへと来ていた。PWTとは、まだほんの数ヶ月ほど前ホドモエに設立されたばかりの話題のバトル施設である。

自分自身、そして疾風にとっても参考になると思って観戦しに来たのだけど…


『うわー…凄い人だね』

〈熱気が辛いよ…疾風は平気なの?〉

〈う、うん、ボクは大丈夫。こんなにたくさんの人間がいる所初めてだから、ちょっと緊張してるけど…〉


本人たっての希望もあり、疾風をボールから出して隣りの席に座らせた。原型の方が神経が研ぎ澄まされて集中出来るという事で擬人化はしていないけれどね。

まぁ席は広いし、ビブラーバ姿の疾風が邪魔になる事はないだろう。それに他のお客さんも各々自分のポケモンをボールから出しているから、考える事は皆同じみたい。

キョロキョロ周囲を見渡して落ち着かない様子の疾風だったけれど、1試合目が始まるとすぐに視線をバトルフィールドに移して真剣に見つめ始めた。

あたしも疾風のトレーナーとしてしっかり勉強しなきゃいけない。開始の合図である審判の号令があまりにも大きな声で、瞬間飛び上がるほどビックリしたのは忘れたい。


〈ちょっとヒナタちゃん、僕が頭にいるんだから急な動作はやめてよね。それに恥ずかしい〉

『申し訳ございませんでした!!』


…本当に人の傷を抉るのが上手いピカチュウだ。









「いけユニラン!サイコショックだ!」

「あなをほるで避けろサンドパン!」


おぉ…!あなをほるってあんな風にも使えるんだ。疾風も持っている技だし参考になるなぁ…。


〈す、凄いねマスター!ボク、何だかワクワクしてきたよ…!〉

『うんうん、あたしもだよ!ここでしっかり学んで次のバトル勝とうね!』


目を輝かせて目の前のバトルに高揚している。闘争心…というのが疾風にあるのかは分からないけれど、目の前のバトルを見て自分もしたくなったのかな?

ちなみに闘争心と言えばウチの横暴キングはありまくりだろうね。弱いものを相手にする趣味はないっていつか言っていたけど、じゃあ何であたしをいたぶるのって感じだよね。


〈それはヒナタちゃんの反応が面白いからだよ。何かこう、S心を刺激すると言うか…〉

『聞きたくなかった!雷士からそんな言葉聞きたくなかった!そして何であたしの考えてる事分かるの!?』

〈だから顔に出てるんだって言ってるでしょ?〉

〈ま、マスター、ちょっと静かにした方が…〉


控え目な疾風の言葉にハッとする。チラリと目線だけを動かすと訝しげな顔をした人達があたしを見ていた。

しまった…ポケモンの言葉が分からない人の目にはあたしが1人で喋ってる様にしか見えないんだった。

ついそれを忘れちゃう事があるんだよね…あたしにとってはあまりにも普通の事だから。

でも恥ずかしくなって慌てて口をつぐみ下を向く。周りの人達も首を傾げつつ視線をフィールドへと戻した。


(要らない能力だなんて思わないけれど、堂々と披露する必要性もないしね…。これからはあんまりにも人の多い所では出来るだけ小声で会話しよう)


縮こまった体を元に戻して再びバトルを観戦する。気付けば準決勝が始まろうとしていた。






〈あ…ねぇヒナタちゃん、あの人って…〉


雷士に軽く髪を引っ張られて指差す方向を見ると、確かに見覚えのある女の子がいた。一際大きな歓声と共に入場してきた銀髪の女の子…あれは、


『ホミカちゃんだ…!』

そう、以前タチワキシティで一緒にライブステージへと上がったホミカちゃん。あたしはただフリをしていただけだけど…。

確かにこのPWTには各地のジムリーダーも参加すると聞いたけれど本当だったんだ!

相変わらずの勝ち気な表情に思わず口が緩んでしまう。人気も凄いし、やっぱりホミカちゃんは堂々としていてカッコいい。


『って…そういえばホミカちゃんのバトル見るの初めてじゃん!』


直接バトルするのもそうだけど、ジムリーダーのバトルを第3者の目線で見るのも貴重な機会だ。

疾風と一緒に前のめりになりながらホミカちゃんのバトルが始まるのを待った。



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