long | ナノ







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『ん〜っ!美味しいねこのクレープ!』

「まぁ悪かねぇな」


前回に引き続きあたし達はライモンシティの遊園地に来ていた。ちなみに只今休憩がてらベンチでクレープを食べている。甘い物大好きな紅矢も満足そうだ。


(…あ、紅矢が見られてる)


あたしの隣りで黙々とクレープを食べる紅矢を見て女性達が足を止める。頬を紅潮させ、ほう…と見つめる瞳には熱が籠もっていた。

確かに紅矢は外見はカッコいいと思う、あくまで外見は。睫毛長いし鼻高いし身長あるし…勿体無いなぁ、これで性格も優しかったら完璧だろうに。

そう思った矢先、2人の女性が紅矢に近寄り声をかけてきた。うわ、勇気あるなぁ…これがもしかして逆ナンってやつ!?


「ねぇお兄さん、暇だったらアタシ達と遊ぼうよ!」

「クレープ食べてるとか可愛い〜!」


「…あ"ぁ?」


あわわわ、紅矢皺!眉間の皺伸ばしなさい!ガンつけないの!

1人はクルンと巻かれた金髪に長いつけまつげ、もう1人は肩まで露出した服に際どい丈のスカートが印象的なお姉さんだ。如何にも大人って感じ…隣りにいるあたしの事なんて全然眼中にないみたいだし。いや全く問題はないんだけどもね!


「ウゼェな…散れ。俺に話しかけんな」


うわぁああああ!!ちょ、何て事言うの紅矢様!?ほらお姉さん達ポカンとしてるじゃん!もしかしたら殴られるかも…!


「…っいやーんクール!怒った顔もカッコ良い〜!」

「イケメンで硬派とか超ヤバくない!?」


…あれ、おかしいな。何か全く予想外の光景が広がってるんですけど。え、何で喜んでるのこの人達!?


「ちっ…面倒くせぇ。おら、行くぞヒナタ」

『うぇ!?』


盛大な舌打ちをかまし、あたしの腕を掴んで歩き出した。当然我に返ったお姉さん達が叫ぶ声も無視だ。


『こ、紅矢…良いの?』

「あ?何がだよ」
 
『あのお姉さん達美人だったのに…』

「テメェはアホか、あんな化粧塗りたくっただけの女のどこが良いっつうんだ。クソっ、気持ち悪ぃ臭いが染み付いてやがる」


クンクンと自分の服を嗅ぎ不快感を露わにしている。そっか、紅矢って鼻が良いんだよね。よくジュンサーさんのパートナーにガーディが選ばれているのは嗅覚が優れているっていうのも理由のようだし。


「せっかく甘いモン食って良い気分だったっつうのに…。ちっ、俺は戻って寝る」

『え!?』


一瞬で原型に戻ったかと思うと、すぐさま自分のボールを鼻で押して入ってしまった。…また1人ぼっちだよ!


『紅矢のバカ…』


一言呟きトボトボ歩く。うーん…あ!


『ゴメン、出てきて疾風!』


こうなったら申し訳ないけれど最後の希望に縋るしかない!蒼刃はまだダウンしているし…雷士も爆睡中。もはや頼れるのは疾風しかいなかった。


〈…ま、マスター…?またボクで、良いの?〉

『勿論!むしろ君が良いんだよー!』


そう告げると疾風の周りにパァッと花が舞った気がした。嬉しそうに擬人化すると、これまた可愛らしくニッコリ笑ってあたしの手を握る。


「えへへ…、必要とされるのって、嬉しいな。ボク、どこでもついていくよ!」

『…くはぁっ!!』

「ま、マスター!?」


あぁ…何て天使なんだろう疾風。蒼刃とはまた違った感じであたしをキュンとさせてくれるね…!良く出来た息子が2人もいてお母さん嬉しいよ!


『よーし!それじゃサクサク次行きますか!』


疾風の綺麗だけど男の子らしく骨ばった少し大きな手を握り、遊園地の奥へと進む。

観覧車は最後に乗ろうかなぁ…どうもここの名物みたいだし。あと面白そうなのは…


『あ、水の上を走るスワンナボートだって!どうどう?』

「う、うん!行こうマスター」


きゃっほー!とハシャぎつつボート乗り場へ向かう途中、何やら大勢の人だかりが目に入った。


『…?何だろうあれ…ちょっと覗いてみよっか』


野次馬根性はそんなに強くない筈だけど、人々の熱気に釣られてつい足を運ぶ事に。近くへ行って分かったけど、どうやら皆大きなステージの前で何かを待っているみたいだった。


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