long | ナノ







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『よーし、張り切って行こう!』

〈僕眠いから寝るね〉

『はっや!!そしてテンション低っ!もうあたしを一人で喋らせる気なの君は!?』

〈だって寝たいし…それに僕と話してたってどのみちヒナタちゃんが一人で喋ってる様にしか見えないから大丈夫だよ〉

『さらりと痛い現実を叩き付けるね雷士くん』


とりあえず今日の目的地についたら起こしてと言い残し眠り始めてしまった。どうしよう早速出鼻挫かれた。

そもそも擬人化出来る癖に自分で歩くのが面倒臭いという理由で原型のままで過ごす彼は本当に物臭だと思う!

雷士の擬人化した姿は結構カッコいいと思うのに勿体無いなぁ…。


『…まぁ本人が嫌なら仕方ないけど…。とりあえず、目指すはサンギ牧場!』


そう、あたしの本日の目的地はサンギタウンのサンギ牧場。

色々なポケモンがいると聞いたから絶対行きたいと思っていたんだ。

ヒオウギシティを後にし草むらを抜けて歩を進める。野生のポケモンがバトルを仕掛けて来ないのは雷士があまりにも気持ち良さそうに寝ているからだろうか…。

サンギタウンまでは思っていたよりも近く、すぐに到着した。この調子ならじっくり牧場を見学して、暗くなる前にポケモンセンターで部屋を借りればバッチリだ。


『おぉ…!メリープがいっぱい!』


サンギ牧場はとても広く奥行きもあるみたい。メリープ可愛いなぁ…!みんな気持ち良さそうに日向ぼっこをしている。

でも雷士のせいでんきのせいで凄い寄って来るんですけど、やだちょっと多すぎて怖い。


『雷士!着いたよ起きて!そして助けて!』

〈んん…〉


のそりと顔を上げた雷士はキョロキョロと目線だけで周囲を見回して、最後に必死に訴えるあたしをチラリと一瞥した。


〈良かったねヒナタちゃん、モテモテだよ〉

『裏切り者ぉおおお!!』


身動きの取れないあたしを嘲笑うかの様に、頭上から華麗に着地した雷士に軽く殺意を覚えたのは仕方ない。

…あ、でもせいでんきに惹かれてメリープ達が雷士を追っていった。うん、結果オーライってヤツかな!ゴメンね雷士!


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