long | ナノ







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「へぇ…これが古代の城の砂かぁ」

『うん!城の壁から取れた砂だよ。役に立ちそう?』

「勿論、とっても貴重なサンプルだ。ありがとうヒナタ!」


嬉しそうに笑うハル兄ちゃんに頭を撫でられ、照れくさくてあたしは笑う。良かった…無駄な物だったらどうしようかと思った。


「偉いぞヒナタ、特別に今日の夕飯はお前の好きなハンバーグを作ってやろう」

『本当!?ありがとう斉!』


斉のハンバーグは本当に美味しい。お手製デミグラスソースも大好きなんだ!斉はあたしの料理の先生でもあるのだけど…まだまだその腕前には勝てそうにもない。


「なぁなぁお嬢!旅先で変な男に誑かされたりしてへんやろな!?ワイはそれが心配で心配でたまらんかってん…!」

『た、たぶらかされ…?樹が心配するような事は何もないと思うけど…』

「ホンマか!?お嬢はメッチャ可愛いねんから気ぃつけなアカンで!?」

『だ、だっ大丈夫だってば!ていうかそんな事言うなら澪姐さんの方がよっぽどあたしより美人…!』


うぇ、苦しい…!ガクガク揺さぶられ再びリバースの危機に陥るあたしを誰か助けてぇええ!


「澪は何も心配要らん!何故なら自分で対処出来るからや!」

「そういえば以前声をかけてきた男を完膚なきまでにボコボコにしてたな」

「あぁ…激しく相手の男に同情したぜ」

「だってしつこかったんだものあの男。大丈夫よ急所は外しておいたから!」

『怖っ!初耳だよ澪姐さん!』


ニコリと何とも美麗に微笑む彼女は女神のようだけど、やっている事はかなり恐ろしい。昔からあたしには優しかったけれど…あんまり男の人は好きじゃないみたい。


〈…樹、誑かされてはいないけど…誑かした男なら何人かいるよ〉

「…は?」

『え、ちょ、何適当な事言ってるの雷士くん。誤解招くからやめてよ』

「そ、そうよ…。逆はあってもヒナタちゃんに限ってそんな事…!」

〈勿論ヒナタちゃん本人は無自覚だけどね。まぁとりあえず皆を紹介したら?〉


唐突におかしな事を言い出す雷士に?マークがいっぱい出たけれど、続いて言われたセリフにそうだそうだと思い出す。つい皆との会話が楽しくて忘れてしまっていた…ゴメンね皆!


「皆って…」

『うん!あたしリゾートデザートまで行く中で仲間が増えたんだよ!』


ソファから立ち上がり腰のボールを開口する。ていうかビブラーバくんの事お願いしなきゃならないのにあたしのバカ!

パカッと軽快な音を立てボールが開き、中から出てきたのは蒼刃、紅矢、ビブラーバくん。


『ルカリオが蒼刃で、ガーディが紅矢。ビブラーバくんは…諸事情で一緒に来てもらったんだ』


紅矢は興味がなさそうにあたしの隣に腰を下ろしてしまい、ビブラーバくんは人見知りしているのか足元に隠れてしまう。そしてキョロキョロと皆を見回したあと蒼刃はジッとハル兄ちゃんを見つめ、次いであたしに駆け寄り膝をつく。


〈ヒナタ様、ハルマさんはポケモンの言葉は分かるのですか?〉


おぉ…!蒼刃がハルマさんって呼んだ…一応敬ってくれるんだ。


『えっとね、ハル兄ちゃんは原型のポケモンとは話せないの。擬人化状態だったら勿論大丈夫なんだけど』

〈そうですか…分かりました〉


何が、と思ったら蒼刃は一瞬で姿を変えた。擬人化してハル兄ちゃんと話したい事でもあるのかな?


「あら、結構良い男じゃない。樹と違ってだいぶ誠実そうだし、昴より落ち着きもあって」

「何やとぉ!?あんな優男のどこがえぇねん!」
 
(た…確かに、カッコ良い…。チクショー…ヒナタはこういうヤツがいいのか!?)

「えぇと…蒼刃、だね?初めまして。僕がハル「ヒナタ様はこの俺が命にかえてもお守りします!」え、」


うわぁあああ何て綺麗な三つ指ぃいいい!!もはや土下座だよ!!どうしたの蒼刃!?


「聞けば貴方はヒナタ様の育ての親…ならばきちんとご挨拶しなければ失礼に値します。改めまして俺はルカリオの蒼刃、名前はヒナタ様に頂きました」


三つ指はやめてくれたけれど今度はピンと背筋を伸ばし正座になった。何て美しい姿勢…紅矢にも見習わせたいね、うん。



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