long | ナノ







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Nさんと再会しレシラムさんに遭遇した後、彼らから非常に重大な任務を賜ったあたしは身の引き締まる思いでいた。

レシラムさんに聞くところによると、どうやらゼクロムさんとその相棒のトレーナーさんは現在セイガイハシティ付近にいるとのこと。

セイガイハかぁ…マップの説明ではサザナミみたいに海が近くて綺麗な街らしいから、ゼクロムさん達のことを抜きにしても是非行ってみたいと思う。


「良いなミカン娘。お前の役目はゼクロムと接触し、理想の英雄と共に奴を来るべきその時の為に備えさせることだ。決して1人でプラズマ団を壊滅させようなどと考えてはならんぞ。」

『そ、そんなことしませんよ…。大丈夫です、果たしてみせます!』

「じゃあヒナタ、ボク達はもう行くけれど…くれぐれも無理は禁物だからね。」

『はい、ありがとうございましたNさん!レシラムさん!』

「うむ、中々愛い娘だ。」

「ふふ、またねヒナタ。」

『わ…!』


レシラムさんは少し乱暴に、そしてNさんはふわりと柔らかくあたしの頭を撫でる。まるで正反対の撫で方なのにどちらも大きく暖かい手のひらだったから、2人共優しいんだなぁと笑みを零した。


「嵐志、ヒナタを頼んだよ。この子はボクにとっても大切な存在だから。」

「おー、任せとけって!」

「…それと、またキミに会えて嬉しかった。もう会えないと思っていたから…だから、次はもっと色々なことを話そう。ボクはキミに話したいことがたくさんあるんだ!」

「…ぶはっ、当然!何だって聞いてやるよ、何せダチだからな!」


嵐志らしい快活な笑顔とVサインを見たNさんはとても嬉しそうに笑い、レシラムさんに跨がって飛び去っていった。

…あぁ、いいなぁ今の2人の表情。ポケモンとか人間とか関係なく、友達ってやっぱりすごく良いものだ。


『よっし、それじゃあたし達も準備して出発しよっか!気を引き締めて行くよー!』

〈はいはい。〉


目指すはセイガイハシティ。プラズマ団を止める為、Nさんやレシラムさんの手助けをする為にも頑張らないと!




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『うっわぁあああちょっと見た雷士!?今ホエルオー通ったよね!?超大きかったよね!?』

〈うん分かった、分かったから少し黙ろうかヒナタちゃん10まんボルトするよ。〉

『え、怖っ!そこまでの罪!?』

「馬鹿を言うな雷士!無邪気にはしゃいでいらっしゃるヒナタ様のお可愛らしさがお前には分からないのか!!」

〈もういいから2人まとめて黙りなよ。〉


何々雷士ってばノリ悪いよ!と抗議すると〈気を引き締めて行くよって言ったのどこの誰だっけね。〉と言ってお得意の尻尾ビンタをされました。

うぅ、相変わらず地味に痛い…!でもその様子を見た蒼刃が顔面蒼白になったかと思えば怒りで顔を真っ赤にして雷士に掴みかかろうとして、それを止めるのに必死でいつの間にか痛みは忘れてしまった。ていうか蒼刃君、擬人化時のイケメン青年の姿で小さなピカチュウにキレてる様子は中々辛いものがあったよ。


『でもさ、雷士も綺麗だって思うでしょ?まるで海の中にいるみたいだし!』

〈まぁ…それなりにね。〉


あたし達が今いるのはサザナミとセイガイハを繋ぐマリンチューブ。セイガイハシティに行くにはここを通るのが安全だと聞き、セッカシティから疾風に飛んでもらった。

入って早々プルリルやバスラオ達が自由に泳ぐ様子を、陸とは違った目線で眺めることが出来るここがあたしは早速気に入った訳で…。

マリンチューブの中はポケモン達を人工的な光であまり刺激しないようにと薄暗くなっている為、あたしの足元が不注意になるのを危惧した蒼刃も一緒に歩いてくれている。確かに転びやすいかもしれないけど…全く蒼刃ってばちょっと心配性だよね!


〈そもそもヒナタちゃんの運動神経の悪さが問題なんだけどね。〉

『うわ事実だけどグッサリ言うね雷士くん!ていうかまた心読んだ!』

「ご安心下さいヒナタ様!たとえ貴女がどんな場所で足を取られようとも俺が必ずお守りします!!」

『うんありがとう蒼刃くん!でも超近いからもう少し離れようか!!』


あたしの両手をがっしり握り、かなりの近距離で力強く言う蒼刃に少しだけたじろぐ。それでも彼はいつも本気で言ってくれてるし、その後素直にお礼を言ったら蒼刃は嬉しそうに目を細めた。…う、うん、あたし蒼刃のこういう顔にも弱いかもしれない。



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