long | ナノ







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Nさんと嵐志が感動の再会を果たしあたし達も和やかな空気に包まれた頃、ずっと気になっていたことをNさんに聞いてみた。


『そう言えばNさん、Nさんはどうしてリュウラセンの塔にいたんですか?』

「…あの場所は、レシラム達にとってのパワースポットだからね。たまに寄り道しているんだよ」


パワースポット…なるほど、確かにリュウラセンの塔はレシラムとゼクロムに縁のある場所だもんね。

あたしがうんうん納得したら、そんな姿を見ていたNさんが何となくバツの悪そうな顔をする。どうしてそんな顔をするのだろうかとあたしが首を傾げると、彼は小さく笑った。


「…ヒナタ、ボクはキミに話さなければならないことがある」

『へ?』

「ずっと隠していた…キミを信じていないワケではなかったけれど、やはり簡単にヒトには話せないことだから。でもキミになら安心して打ち明けられるよ」

『は、はぁ…』


一体何のことだろう…?けれどあたしになら、ということはあたしを信じて話してくれることなのだと思う。

どことなく緊張した様子のNさんは今一度あたしに向き直し、ゆっくりと口を開いた。


「…初めて会った時…キミはレシラム達に興味があると言っていただろう?そういったヒトの中にはそれこそプラズマ団のように邪な気持ちを抱いている者達もいる。だからこそ正直な所初めは疑ってかかったのだけれど…ヒナタ、キミは全くそんなヒトではなかった」


そっか、そりゃそうだよね。いきなりレシラム達に興味があるなんて言ったら元プラズマ団の王様であるNさんに邪心があると思われても仕方がない。

それでも今言われた通り、Nさんにとってあたしという人間がプラズマ団とは違うと認めてもらえたのは素直に嬉しい。じゃあ、Nさんがあたしに話そうとしていることは何なのだろう?


「ヒナタ、出来るなら驚かないでほしい。今からキミに話すこと、見せるものは…キミにとって非現実的なことかもしれないけれど」


ず、随分もったいぶるなぁNさん…何か余計に緊張してきてしまうのだけど。でもNさんも真剣だしあたしはジッと待つしか…


「全く…お前は本当に話が長いな、N」

『…ん?』


今、聞き覚えのない声がした。凛としていて、とてつもない威圧感を持った低い声。多分Nさんの背後から…だけど、一体誰?


「さっさと話してしまえばよいものを。見ろ、この娘も焦れているではないか」


ゆっくりと木の影から現れたのは神秘的なオーラを纏った、多分男の人。フワリと揺れる長い純白の髪を筆頭に全身真っ白な服で身を包んでいるからか、海の色をした青い瞳がより際立って見える。

何だろう、この感じ…目が合っただけなのに息が詰まるような圧倒的な存在感。あたしの足元にいる雷士からは微量の電気が漏れ出し、隣りに立つ嵐志からも小さく息を呑む音が聞こえた。

警戒心を持つ2人と同じように思わずあたしも後ずさりした瞬間、他の仲間達が一斉にあたしを囲むように前に乗り出した。え、何事!?

たじろぐあたしを守るかのように、いち早く前に出て目の前の不思議な男の人を睨み付けたのは蒼刃。かつてない程鋭い眼光はまるで紅矢のようだった。


〈…何者だ貴様、ポケモンのようだが圧倒的に格が違う。例えるならば…コバルオンに似たものがあるな〉

『え…コバルオン?』

〈動いてはいけませんよヒナタ君、彼はただ者ではありません〉

〈い、いざとなったら、ボクがマスター乗せて飛んで逃げるから!〉

〈はっ…向かってくるなら返り討ちにしてやるだけだ。ヒナタ、死にたくなかったら俺の後ろに隠れてやがれ〉


な、何なのこの臨戦態勢な皆は!?全員揃って警戒するなんて…そんなにこの男の人は危険なのだろうか。あ、でも今蒼刃がポケモンだって言ったよね。コバルオンに似た雰囲気ってことは…ひょっとして、伝説級のポケモンなの?


「ほう…揃いも揃って中々良い反応をする。だが…この私に牙を向けるとは頂けんな。何より、コバルオンと同等と断じるとは気に入らん」

『…!』


ぞくりと体が震えた。立っているのが辛く感じる程の殺気…やっぱりこの人、ただのポケモンじゃない…!



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